36話 其々の準備 エミリア=マキナウス編 後編
リョウ達とのやりとりで少し訓練時間は減ってしまったけど、まだ日は真上まで来ていない。
夏の始めのまだ頼りない太陽が掲げたレンゼリア様の刀身に反射して聖剣の輝きを増していた。
…それにしても、ちゃんと構えると重い。最近剣術訓練の時に使ってる剣ではこんなに重さを感じなかったけど。
まだ旅の疲れが抜けていないのかな、案山子に向かって持ち上げているこの剣を自在に振るうイメージが全く湧いてこない。
改めて自分が握っている聖剣レンゼリアを眺めてみる、私がいつも練習用に使っているショートソードとは段違いの長さに重さ、素材は…何だろう、透き通る様な光沢を持つ銀色。吸い込まれそうな程に曇り一つない白銀の刃に翼を広げた様な羽の意匠のガード、その中央には青い宝石…なんて綺麗な剣なんだろう…。
でも…綺麗なんだけど…改めてその銀色の刀身を見ていると、…何故か分からないけど怖さ…みたいなものも感じる。伝説の魔具ってどれもこんな感じなのかな…ゼーリカのグレイプニールは触れた事が無いし…リョウは何とも無かったんだけど…。
(エミリア、エミリア!)
「うわっ、は、はい!レンゼリア様!」
いけない、ぼうっとしてた。
レンゼリア様に剣先を上下に振られて、呼ばれていた事に気付いた。
「お嬢様、気を抜かれないように。先程壁を切りつけた際のあのキズの深さをご覧下さい。アレの修理にいくらかかるか。油断すればお嬢様の腕や指など簡単に落ち(執事殿!アレはすまなかった!今後は細心の注意を払おう!)…との仰せですので、お嬢様も今はレンゼリア様にご集中下さいませ。」
「ふふ。そうだね、ごめんなさい。レンゼリア様も申し訳ありません。訓練、宜しくお願いします。」
(…よし!ならば始めよう!エミリア、まずはお前が思う様にこの案山子に切りつけてみよ!)
用意された訓練用の案山子はそれ自体は木製だけど、簡単な鉄製の鎧を着せてある。いつもはその鎧を避ける様に剣筋を向けるんだけど、レンゼリア様の切れ味なら…。
特に何も考えずに振り上げて、その重みを利用して踏み込みと同時に打ち込む、狙いは案山子の左肩!
ガキィン!
あれ?!弾かれた?
案山子を袈裟に切り抜けるつもりで振るった剣は、思い切り叩きつけた力をそのまま私の手と腕に返してきた。衝撃に剣を握る手が痺れる。
(エミリア!武器に頼らずお前の剣術を見せてみよ!今お前が握るのは只のなまくらと思え!)
弾かれた反動と剣の重みで少し後ろにたたらを踏む、なら何時もの訓練の様に。体を軽く前傾に小さく構える、大振りせず鎧の隙間を狙う。
先程より浅く、腕の関節部分を掠める様に切りつける、剣先に木の硬質な手応えは感じるが、金属に弾かれてはいない。でも剣の重量に振られて思いの外体が流れる。
続けて胴体よりも下、太腿や腰の辺りに切り返す。案山子に切れ込みを残しながら、踏み込んだ勢いのまま少し距離を取り体勢を立て直す。また剣が流れてしまい少し体が不安定になる。
やっぱり重い、数回振っただけなのにもう腕に負担を感じ始めた、何時もの訓練剣ならまだまだそんな事ないのに。
大きく深呼吸して息を整える、次は(そこまで。)
腕に掛かっていた重さがスッと消える、レンゼリア様が手からすり抜けて最初に開始した辺りまで浮かんで行った。ふぅ…。
(ふむ、大したものだ。執事殿、エミリアの剣の師は貴方が?)
「僭越ながら。」
(正直少し驚いている。実戦的な良い剣筋だ、そこらの10歳の娘には中々出来ん程にな。それに案山子ではなくちゃんと相手が見えている。これなら直ぐにでも同調して良かろう。)
…同調?
(さて、エミリア。我を振ってみてどうだ?どう感じた?)
柄を上に浮いているレンゼリア様がフヨフヨと私に近づいてくる。
「いえ、あの…少し重いです。昨日までの疲れかはわかりませんが今日は特に体が重く感じます。間合いは…何とか狙った所に当てる事は出来たと思います。」
(ふむ、執事殿は?)
レッセンが考え込む様に顎に手を当てながら、そうですな、と前置きしてから腰に挿していた訓練用のショートソードを抜いた。
「これが普段のお嬢様が訓練用に使用している剣でございます。私も同じ物でお相手しますが、こちらに比べると確かにレンゼリア様は嵩ば…ゴホン、幾分か重さがございます故。先程ですと、お嬢様は体の運びが思い通りにいかないご様子でしたな。」
(そうか、それでも一端の騎士見習い程度には動けておるな。一つ聞くが普段はリョウを付けたまま訓練するのか?訓練中は外すのか?)
ふと右手に視線を落とす、そういえばリョウが他の人と話せる様になってから外す機会が増えた。装者は私だけなのにな。
「いつも肌身離さず身につけておいでですが…今日に限ってはロクサル殿と所用とか。…あぁ、なるほど。お嬢様、今日は普段より疲れが早くありませんかな?」
「えっ?…うん。でもそれはレンゼリア様が何時もの剣と違うから…。」
(いや、それもあるがリョウの能力が無いからだろう。「リョウの能力?」忘れたか?アイツは装者の筋力強化能力を持っている。地味な能力だが、こういった時に違いとなって出てくるものだ。地味だがな。)
そんなに地味地味言わなくても。我が家の家宝だし、私がリョウの装者なのに…。
(執事殿、ちょっと良いか?)
「はい、どうなさいましたか?」
そこまで聞こえた所でレンゼリア様の声が途切れた。レッセンだけが独り言みたいに話し始める。…私への念話を切ってるみたいだけど、二人で何の相談だろう。
誕生日以来、度々付けたり外したりしながらも、殆どの時間をリョウを指にして過ごしていたから、筋力増加なんて全く気付いてなかった。
…ふふ、それくらいリョウの装者として馴染んでるのかなって思うと少しだけ嬉しく思う。
「お嬢様、少し手を見せて頂いても宜しいでしょうか。」
「ふぇ?え、手?どうかしたの?」
レッセンが私の目の前に跪く、レッセンの目の前に差し出した右手を下から支えられた。
「少しの間目を瞑って頂けますか。」
言われるままに目を瞑る。
「どうしたの?別に怪我とかしてないし、まだ重さに慣れないけど、少し練習すれば…痛たっ!?」
不意に走った親指の痛みに身を引く、とっさに痛みに目を向けると、親指の腹の部分から小さな赤い珠が滲み出てきた。レッセンがさっきまで私の手を支えていたその上には、レンゼリア様が浮かんでいた。
(すまぬ、見えてると怖いかと思って目を瞑ってもらったのだが…驚かせたか。あぁ、血を拭うのは少し待ってくれ、それが必要なのだ。)
とっさに親指を咥えようとして止められる。
「申し訳ありません、お嬢様。レンゼリア様がどうしても必要だと仰られるので。」
「…もう、二人だけで進めないで下さい
!何なんですかいきなり…。」
レッセンの上からスイッと私の方へレンゼリア様が近づいてくる。途中で剣先を上に向けて、羽のガードが目の前に来るまでゆっくりと浮き上がってきた。
(真の意味でエミリアを私の装者としようと思う。先程言った同調を行いたいと思うのだが…。)
「あの…、そういうのは先に良いか悪いか断ってから指を切るっていうのはダメだったんでしょうか?あと同調について私は全く説明を受けていないんですが?」
まだ少しジンジンとする親指から雫が溢れない様に、レンゼリア様の前に見せつける様に持ち上げる。これで私が断ったらどうするんだろうか。
(すまぬ、だが同調した後なら、コレが絶対に必要だったと確信するであろうからな。)
「申し訳ありませんお嬢様、ですが先程のお嬢様の様子と、レンゼリア様に同調について伺いましたところ、私も行った方が良いと判断しまして…。」
(同調すれば分かる。それにその傷はリョウに治して貰えば良かろう。私もリョウが使える様になったと言う回復の魔術に少々興味がある事だし、そもそも切れ味をできる限り上げて刺したからな。鋭い傷ほど直ぐに塞がるものだ。)
…それでも痛いものは痛い。釈然としない気持ちではいたが、この二人の中では同調する…とか言うのは決定事項なんだろう。
はぁ…。
「……わかりました、それでどうすれば宜しいですか?」
(そう怒るなエミリア、やってみれば我と同調して良かったと思えるだろう。ガードの中央に青い宝玉が見えるだろう?そこにその親指を押し付けるだけでよい。)
翼のガードは既に目の前まで浮かんできていたので、先程から視界の中央にはその青い宝玉があった。…凄く綺麗…でも血が…着いちゃうけど…(さぁ早く、エミリア。)恐る恐る親指をレンゼリア様に向ける、零れ落ちそうに膨らんでいた血の雫が、深い青色をした宝石に音もなく触れる。
そのまま指を押し付けた、宝石と私の指に挟まれた雫が溢れ出し、宝石から刀身へ紅い線が一筋刻まれる。あぁ、剣が汚れちゃう…そう思った瞬間、
ドクン。
視界が真っ暗になり、物凄い寒気が体を包んだ、動悸が早くなり胸が痛い。
ドクン。
…なに!?…怖い、…怖い!指を離したいけど体が動かない!声を出したいのに体が震える事しか許してくれない!なに、これ、息が、出来な…。
(よし!もう良いぞエミリア。これで同調は成った、お主は今真の意味で聖剣レンゼリアの装者となったのだ!)
「…っはぁっ!…はぁ…はぁ…。」
「お嬢様!?」
レンゼリア様から指が離れた途端に全身から力が抜けて、立って居られなくなった。息が上がって動悸が止まらない、胸が痛い。
足に力が入らなくて倒れそうになるところをレッセンに支えられた。
「レンゼリア様!何も危険は無いと先程仰ったでしょう!これは一体!」
レッセンがレンゼリア様に向けて怒声を上げる。
やっと、少し…収まって…震えが小さくなり、荒くなっていた息が少しづつ整ってくる。
浮いていたレンゼリア様がストンと地面に突き刺さる。
(騒がなくとも良い執事殿。心配せずとも命の危険は無い。我とエミリアに精神の道が繋がった際、多少の負荷が掛かっただけの事。直ぐに落ち着く。)
「…レンゼリア様…今のは?」
どれくらい経ったか分からないけど、体の震えが漸く止まり、レッセンの腕の中からヨロヨロと抜け出しながらレンゼリア様に問いかける。
…指を押し当てるだけって言ってたのに…。
(同調、我とエミリアの精神に橋を渡した。今までの装者は全て今の儀式を行っておる。勿論ランデウス…いや、そなたらの言う勇者王も、かつて居た異世界の装者達も全員な。我が真に装者と認めず、ただ魔力を通し、振るうだけでは我が力を十全に扱う事は出来ぬ。同調するとせぬとでは天と地ほどの差がある、エミリアにも直ぐに分かる。さぁ、もう一度この身を手に取ってみよ。)
「…っ!お嬢様のご様子が分かりませんか?レンゼリア様。本日の訓練はここまでといたしましょう!」
「レンゼリア様、レッセンの言う通り今日は終わりにしましょう。まだ少しフラつきますし…」
後でリョウに言いつけてやろう、私から何を言っても聞いて貰えないだろうけどリョウなら…。
地面に刺さるレンゼリア様を持ち帰ろうと両手で柄を持ち上げる、あれ?
ほんの少し前に振り回された剣の重量を今は全く感じない、なんの抵抗も無く地面からスッと聖剣を引き抜く事が出来た…。
片手を離して腕を振ってみる、訓練用のショートソードどころか、食事用のナイフ程にも手に掛かる重みが無い。それにこの感覚…
(ふふ、エミリアよ。解ってきたか?)
「レンゼリア様、あの、軽くなられたのですか?その、さっきまでとは全く重さが
…それとレンゼリア様の魔力が…。」
「お嬢様?」
(執事殿、その訓練用の剣を抜くがよい。何時もの訓練の様にエミリアと打ち合ってみてはくれぬか?)
手首を捻る動きだけで聖剣が風切り音を起こして目の前を行き来する、変な感じ…音だけ聞くと重量のある物を凄い勢いで振ってる様に聞こえるのに、私の手首には何の負荷も伝わって来ない。
「お嬢様、宜しいのですか?先程は足取りも覚束ない様でしたが。」
「うん…大丈夫そう。落ち着いたし…凄い…何これ…」
(なに、数合打ち合うだけよ。執事殿、先に言っておくが本気で受けねば怪我をするぞ?装者が魔力を通さずとも、我らは同調によって一つになっておるのだからな。さて、行けエミリア!)
怪訝そうな表情を浮かべながらレッセンがショートソードを構えた。
違和感。
お嬢様は今殆ど力を込めずにあの聖剣を振っている様に見える。私が実戦用に所有している長剣よりも更に重いあの剣を、お嬢様が片手で、しかも目にも留まらぬ速さで振り回し始めた。
訓練剣を握る手に力が篭る。お嬢様が聖剣を片手に駆け出す、その足取りは軽くあっという間に間合いが詰まり、お嬢様が小さく踏み込んだ。
左から横薙ぎに迫ってきた聖剣を打ち払うべく、下段から掬い上げる様に刃を合わせていく。普段のお嬢様の打ち込みを捌くよりも強く、剣を弾き飛ばすつもりで打ち合わせた。
「ぬぅっ⁈」
ギィンと甲高い金属音を響かせて打ち合わせた刃が止まる、重い、お嬢様の普段の剣筋からは考えられないほど重い打ち込みに戸惑う。
剣の訓練と言っても10歳の娘、成人の男と剣を交えるには全く膂力が足らない。
エミリアには本来、護身として剣を持った相手との立ち回りを学ぶ為、そして貴族としての最低限の嗜みと基礎体力作りを目的として剣術を行なっていただけだった。
引退した身とはいえ騎士時代、冒険者時代から続く毎日の鍛錬は欠かさず行っており、実際以前までの試合形式の訓練ではエミリアの打ち込みは全て片手でいなされていた。
押し込まれはしないものの、10歳の、しかも片手から繰り出される筈の無い圧力に考えが追い付かずにいると、それまで剣に掛かっていた重みが消える。
長剣を扱っている筈のスピードとは桁違いの勢いで、回転しながら逆向きからの剣戟が飛んでくる。その軽やかな動きからは想像も付かない衝撃が防御する剣を軋ませた。
違和感。
まるでレイピアやエストックを扱うかの様な身の軽さと剣筋の速さ、しかし剣を打ち合わせると戦斧、長刀身の両手剣を受けている様な重量を叩き込まれる。
同じ違和感をお嬢様も感じていたのだろう、最初の数合は困惑と驚嘆の混ざった表情を浮かべていたが、打ち合う間にそれにも慣れてきたのか剣筋に迷いが無くなっていく。
防御の度に軋みを上げるショートソードから伝わってくる手応えが、徐々に両腕を痺れさせていった。
動きの基礎は普段のお嬢様の剣術、だがその速度が段違いに疾い。凄まじい手数に加えて、その一撃一撃が致命打になりかねない威力を備えていた。
縦横無尽に繰り出されてくる攻撃を何とか捌いていたが、上段からの打ち込みを防ごうと剣を合わせようとした瞬間、待っていた衝撃は来なかった。
あり得ない事に長剣を振り下ろした勢いを片手のみで完全に殺し、剣を引いたのだ。
完全に虚を突かれ、お嬢様の次の打ち込みへの対応が遅れた。
沈み込む様に踏み込まれる。お嬢様が得意とする、すれ違いざまに大腿を狙う相手の動きを制する一手。剣による防御が間に合わず強引に体を捻って刃の届く範囲から外れる。
流れた体を立て直す間も無く、お嬢様の切り返した剣が腹部に迫る、これはいけない。切れなくとも骨の一本や二本は覚悟しなければ…
腹筋に力を込める、先程までの威力なら運が悪ければ致命打になるかもしれない。
凶悪な速度で打ち込まれる銀色の金属塊に歯を食いしばって耐え………る必要は幸運にも訪れなかった。
聖剣レンゼリアは訓練服一枚に触れた処でピタリと静止していた。まるで空間に固定されたかの様に動かないその銀塊から顔をあげると、息を切らせたお嬢様が目を見開いていた。
切り揃えられた金髪が汗で頬に張り付いているが、その表情は見る間に笑顔に変わっていく。
「や、やった!初めてレッセンから一本取れた!あっ…⁈」
聖剣を地面に突き立て、それにもたれかかる様に膝をつくお嬢様。その肩は呼吸の度に大きく上下し、数滴の汗が地面に吸い込まれた。
「お、お見事でございました。お嬢様。」
(どうだ執事殿、驚いただろう!?)
体から力が抜け、珍しく地面に座り込んだ。途端に息が上がってくる。
「ふぅ……。何が起こっているのか全く分かりませんでしたな、羽の様に軽い動きなのに斧を打ち込まれるかの様な衝撃。あれは一体?」
(ふはは!執事殿もその様な顔をするのだな。何、タネを明かしてしまえば単純な事よ。先程エミリアと同調したであろう?あれは我とエミリアの精神を繋いだのだ、エミリアの考えを読み取り、我がその動きに合わせる様に動いたのだ。)
「なんと…かなり自由に動けるのは承知しておりましたが、その様な事が可能とは…。」
「はぁ…はぁ……。…凄いのよレッセン、手にかかる重みが殆ど無いの、なのに打ち合わせたレッセンがかなりの力を込めていたのが不思議だったわ」
(この戦い方は普段はせぬ。魔力消費が大きすぎて長期戦には向かぬからの。まぁ、幼い者や女子が装者であった時は良く使ったものだがな。)
「……?レンゼリア様、それは(さて!今日はここまでにして、明日からはいよいよ我に魔力を通す訓練に入るとしよう!勝手に進めすぎるとリョウが怒りそうだからな!エミリア、執事殿、良い戦いであった!)……恐縮でございます。」
「あの…レンゼリア様?魔力を通さなくてもここまで出来るなら…魔力を通す訓練は必要無いのでは?」
(エミリア、同調したお主にはもう分かるであろう?我が今の立ち合いだけでかなりの魔力を使っておる事に。装者から魔力が供されなければ直ぐに我は力を失う。同調は我がお主と共に戦い、かつ我の状態を知って貰う為のものだと心得よ。)
レッセンが先に立ち上がり、まだ膝をついていた私を支え上げてくれた。
レンゼリア様は魔力消費を抑えたいと仰って、疲れた私を気遣ったレッセンに抱えられていた。
なんであんなに真剣に打ち合ったんだろう、最初は何度か打ち込んだら止めるつもりだったのにな。
…まぁいいや。初めてレッセンから一本取れたし、今日はここまでにするみたいだし。明日からリョウが一緒に居てくれたら、レンゼリア様も無茶しないだろうし。
レッセンと屋敷に戻りながらその腕に揺られるレンゼリア様を見つめる。凄い剣…だと思うけど、何かが胸に引っかかる。本当に私が扱って良いんだろうか。
…リョウと良く相談しなきゃな。だって私は本来リョウの装者なんだもん。
ちょうどお昼を伝えにパタパタと走ってきた来たベルと鉢合わせた、いつも以上に疲れてしまった、午後からの座学は寝てしまわなければ良いんだけど。
空腹と屋敷から漂ってくる昼食の香りを感じて、私の胸に引っかかる思いは何時の間にか何処かに消えてしまっていた。
前後編の配分を間違えました…。




