表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
26/45

26話 帰宅中の一幕



王国歴476年 夏の月7日


 マキナウス一行はようやく自領の本拠地、フィナレに入った。


 マキナウス領はエスティリマ王国南西部に位置する。王都から然程遠くない距離にあるが、元々王国の南部は大森林に面した開拓地である。

 この国の王都が何故こんな不便な位置にあるのかは建国者に聞いてみたいもんだ。


 マキナウス領として未開拓の土地込みを切り取り次第で貰ったは良いが、大きく開いたのは初代領主の時代、俺が内政チートをブッ込んだ頃だったからな。



 初代領主のデクスは森を必死で切り開いて土地を少しづつ広げていった。斧やノコギリの改良させたり、魔術師を引っ張って来ての魔術による作業、真空刃の魔術を覚えさせてからは伐採が進んだ進んだ。


 ある程度進んでからは森林資源の保全を行いつつ、資源を確保。動物やら魔物やらの被害を抑えつつ工業や商業に少しづつ力を入れ、経済の基盤を固めていった。


 森に隣接した土地は税を安くしたのも民のやる気を引き出したと思う。まぁそこは多くの失敗もしたが急速に使える土地は広がったな。


 所詮はただのサラリーマンだ、政治に関する知識なんぞ無かったし、聞き齧りの知識をデクスに吹き込んで、使える使えないは周りに任せた。せめて異世界の知識を自由に引き出せるようなチートでもあればなと、何度思った事か。


 マキナウス領の中心地、フィナレ。名付けは俺とデクスだ。由来はデクスにしか伝えてないが気に入ってくれたので良しとする。

 北は商業地や工業地、東西は住宅が多く、南は農地や森からの襲撃に備えている詰所が点在する。


 中央通りを進む馬車からエミリアに抱かれて外の様子を伺うレンゼリアが、街の様子についてアレコレとうるさいく喚いていた。


「ほほう、リョウが作った街と聞いていたがまぁまぁの栄え具合ではないか。だがもう少し華やかな装いがあっても良いと思うがな。」


「田舎街に何を求めてんだよ。俺は口を出してただけだし、作ったのはこの街の先達達だよ。」


 懐かしい思い出だがもう共有出来る奴は…まぁ…もう居ないとしておこう。俺に残っている数少ない守りたいモノの一つ。


「最初はほんの小さな開拓村だったそうですね、勇者王様から「お前の領地は森を好きなだけ切り開いて使え」と言われて、王の間で笑い者になったと…リョウ、それって」


「そ、あらかじめ決めておいたやり取りだよ。人材と資金援助は貰える事になってたし、仲間も居たしな。自分達の手で最初から作ろうって逆に盛り上がったもんだよ。」


 区画整理された大通りを馬車で通りながら昔を思い出す、城から穏便に逃げ出す為に笑い者の一芝居、仲間と荷馬車数台でここに着いた時のデクスの清々しい顔ときたら…


「あの時の事は覚えてるぞリョウ…私には殆ど相談も無しに城から出て行ったな…1人になった部屋で私がどんな思いをしたか…」


「レンゼリア様?えっと…あの時?って、200年前の事ですか?」


(声に出てるぞレン、独り言は念話でしろ、念話で。)


(煩いぞリョウ、思い出したらイライラしてきたんだが。)


 不意にエミリアが目の前まで俺を持ち上げて不機嫌そうな声で呟いた。


「……急に念話に切り替えないで下さい、気になるじゃないですか。リョウも、レンゼリア様が一緒になってから2人だけの念話が増えてない?ちょっと寂しいんだけど…」


(あぁ、ごめんなエミリア。長く離れてたもんでな、積もる話もあったものさ。)


(長過ぎるだろうに、一度や二度は会いに来てくれても良かったと思うぞ?)


「それに、レンゼリア様の装者になれるのって王家の血を引いてないとダメなんでしょ?なのに私なんかが…色々と不安だよ…」


 両手の平を見つめて表情を浮かべるエミリアは、俺とデラクの抱える包みを交互に見やって肩を落とした。


(なんだその設定は、誰から聞いた?初耳だぞ。レンゼリア、お前そんな縛りつけたの?)


(いや?エミリア、断っておくが私の装者になるのに血統なぞ関係ないぞ?それは王家の者が勝手に言っておるだけだ。)


「えぇっ⁈だって王家に伝わる伝説の聖剣でしょ⁈」


 素っ頓狂な声を出すエミリアに驚くデラクを無視しつつ、レンゼリアが続ける。デラクには聞こえて無い…よな?


(秘密らしいんだがな、まぁ構わんだろう。その辺は捏造された伝説だな。そもそも元いた世界では私を振るった者は王でもなんでもない、唯の元農民だぞ。血統で使える剣もない訳では無いと思うが、私は見た事はない。だから安心し「そんな重要な秘密を気楽にバラさないで下さい!」)


 さっきとは別の意味で肩をガックリ落としたエミリアは俯いて口を尖らせた。


(その辺は適当に誤魔化せばいいさ、王家の者じゃなけりゃ真の力を引き出す事は出来ない、とか言ってれば良いし、レンゼリアがここにある事自体が秘密な訳だしな。そろそろ家に着くから、落ち着いてから色々と進めていけばいいさ、ゆっくりとな。)


 馬車は緩々と家に向かって進む、賑わう街を眺めながら今後について考えを巡らせる。

 神の事、俺の能力の事、『次に起こる何か』、ついでにレンゼリアとグレイプニールの事。


 当面何が起こるかは置いておいて、エミリアを危険に晒す事が無ければそれでいい。魔力が増えれば、魔術が使える。最初だけ、そう最初だけエミリアに負担をかける事になってしまうかもしれないが、その後は…独力で何とかしていこう。


 今考えている事が上手くいけばエミリアが辛い思いをする事もないだろう。俺をここに呼びつけたあの邪神が起こそうとしてる事があるなら1人で。そう、俺1人でいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ