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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
25/45

25話 ワンコ取り調べ





 服従ポーズの聖なるワンコを引きずって、一階にあるファミリールームへと降りてきた。ついでにキッチンから飲み食い出来る物を確保して皆で机を囲む。


 Lの字型ソファ、暖炉と毛足の長い絨毯、低めのテーブルと派手ではない程度の内装、まさに家族が集まっての団欒には丁度良い部屋は…現在尋問室として使われる予定です。


 グレイプニールはレンに対して完全に萎縮していて、おすわりから微動だにしない。

 俺とレンがグレイプニールの正面ソファに座り、俺は机に食べ物を並べていく。うん、美味そうです。


「さて、ニールよ。お前のおかげで私の部屋は滅茶苦茶だ。どうしてくれる?」


 ビクンとグレイプニールが震える、よっぽどさっきのレンが怖かったんだな。

 腕と足を組み、レンゼリア尋問官が口火を切る。

 モグモグ。うん、このイチゴみたいなの美味いな。


「レン、主にお前のせいだろうが、グレイプニールは窓から入っては来たが何も壊してねぇ。しかも暫くしたら元通りだろうが。」


 くっ…

 此方をチラ見して尋問官が続ける。

 グレイプニールは俺の方に視線を向けている。

 あー、やっぱりこのリンゴっぽいのが一番好きかもしれんな。


「…続ける。ニールよ、リョウを威嚇したのはどういう了見だ?お前、私が居なければ襲い掛かってもおかしくない剣幕だったじゃないか。」


「レン、その原因は俺にあると思う。多分自分しか知らない神の名前が聞こえたから動転したんだろう。焦って大声が出た、それだけだよ。」


 ぐぬぅ…

 呻きながら俺を睨むな。

 グレイプニールも尻尾を振るな、怒られるぞ。

 酸っぱ、このブドウみたいなの思ったより酸味キツいな、でも美味い。


「しゃ、喋れる事を隠していたのはどういうことだ⁈あの戦いの時にお前は一度も言葉を発してはいなかっただろうが!会話が出来ると分かっていれば…」


「レン、この空間だからじゃないか?グレイプニールも意思はあったんだろうが、狼や獣の身体じゃ会話も出きない、あの時装者がグレイプニールからの念話を受けた事は無かったハズだから「リョウはどっちの味方だぁ!」」


 半泣きで胸元を掴まれる、締まってるから!苦しい…


「お前を!助けたのに!私が!悪いみたいじゃないか!」


 掴んだまま揺さぶられる、おぉ、気持ち悪い…止めろ…おぉぉ…

 

 俺を振り回すレンの手に、さらに小さな手が制止をかけた。


「聖剣よ、遠野が苦しがっている、止めてくれ。」


 レンが手を掴んだ少女に半泣きの顔を向けた。


「だって、リョウが私より…え?」


「遠野の言う通り我が女神の名を耳にしたのが…この世界に来て初めてだったのだ、取り乱した事は謝ろう、すまなかった。聖剣よ。」


 レンゼリアを止めたのは…ケモミミ美少女であった。それも犬耳だ。

 美しい銀の尻尾が力なく項垂れている、さっきまでおすわりで此方を伺っていたワンコは居ない。と、言う事は。


「グレイプニール…お前メスだったのか。」


「リョウ!そこじゃないだろう⁈」







 落ち着いた所でグレイプニールがソファに腰掛ける。見た目は犬耳がある女の子だが、物腰はかなり落ち着いていた。


「あのグレイプニールがこんなに幼かったとはな。」


「私も驚いた。外では鳥や熊での顕現は見たことがあったが、まさか人型にもなれたとは。」


「幼い…か、この外見はあくまで仮のものだ、そもそも外界では人型での顕現はできぬ。お主らとは人の言葉を交わすのだ、この方が違和感が無くて良かろう?遠野とてそうではないのか?」


 人形が初めてとは思えないほど器用に果物を摘んで口へ運ぶ。


「少なくとも俺とレンの外見は固定…って言うのも変だがな。」


「ここでは人の言葉を発する事が出来て便利だ、外界では顕現した獣のそれになるからな。身体も魔力を使う事なく想ったように変えることが出来る。…此処は私の中と同じ様な場所だが…彼方ではずっと独りでな、殊更に居心地が良くて、つい長居をしてしまった。」


 そりゃ50年も居ればな。

 とにかくグレイプニール本人に確認したい事は一つだ。

 リンゴもどきをひと齧りして本題を切り出す。


「グレイプニール、ついでにレンも「ついでとはなんだ」…ゴホン。二人の創造主…女神について話してくれ、俺も不本意ながら自分をこの世界に呼んだ奴について伝えておこうと思う。」


 俺はレンに話したあのクソ女神について、もう一度最初から説明した、カクシカというやつだな。

 レンの怒りに再点火したのは置いておいて、グレイプニールは目を閉じて最後まで言葉を発しなかった。

 俺が知っているのはここまでだ、とイチゴもどきを手に取ると、暫くの沈黙が三人を包んだ。




「…我が女神、創造神イーリス様はその様な外道ではない、穏やかな彼の方、その御姿は…見るものによって変ずると仰っていた、我が知っているのは真っ赤な御髪の美しい女性だ。」


「リョウ、私の女神様の御名は創造の神ユスティティ様、御名を呼ぶなど恐れ多いので、女神様とお呼びしている。御優しいお方だ。」


 ふむ、と考え込む。イーリスとユスティティか…もう少し詳しく聞きたいが、俺とレンとワンコの女神は全員別物だとする、そしてレンとワンコの女神は創造を司る、という点は共通だ。なんとなく見えてきた俺達の類似点。

 奴は神様としか自称して無かったからな、あの様子なら創造どころか混沌の神でもおかしくねぇ。


 兎に角、他の異世界武器を鑑定してみなけりゃならんのは確定だな。


「欲しかった情報は確保できた、手間をかけさせてすまなかったな。レン、グレイプニール。俺の成長度の件は家に戻ってから相談したいんだが…いいか?」


「私はいつでもいいよ、リョウ。」

「私もだ、遠野よ。」


 それじゃ、レンの精神世界が出ようとなった時、グレイプニールにシャツの袖を引かれた。

 言い忘れていたが、俺は何故かここに来るとワイシャツとスラックス姿になっている。

 本当はもっと落ち着ける格好がいいんだがな、スウェットとか。


「遠野、さっきは庇ってくれて…その…ありがとう、迷惑を掛けてすまなかったな。あと唸って…ごめん。」


 なにこれかわいい。


「遠野、私の事は…ニールと呼んでくれても構わない、あ、いや、遠野が良ければなんだが。」


 なんで赤面してるのかはわからんが、尋問中の吊り橋効果かな?変に好感度を稼いだつもりもないんだが。


 ニールの犬耳ヘッドをクシャリと撫でて微笑む。


「うん、気にすんなニール。頼りにしてるぞ。」


「き、気安く撫でるでない!…あ、いや、断ってからなら撫でても…よい。…外で何かあれば直ぐにでも顕現しよう。で…私はもう少しここに居てもいいか…?」


 手を軽く払われながら、真っ赤なのは可愛いなと妙な親心を覚えつつ。気にするなと伝えておいた。


「リョウ…お前やはりロリ「よし!帰るぞレン!マキナウス領に戻ったら忙しくなるぞ!」」




 半眼のレンに余計な事を問い詰められる前に、俺達はエミリアの休む部屋へ意識を戻した。

一部加筆修正しました。

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