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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
24/45

24話 俺とお前のアレの違い





 さてと、この聖なるワンコは置いておいて俺の本題に入ろう。聖斧本体と距離が離れるとどうなるのかはわからんが、とりあえず今の内は問題あるまい。


「レン、まずは鑑定について聞きたい。王城で話した俺が身に付けた鑑定とレンが備えてる鑑定に差が無いか確認したい。」


「不思議な事を言うね、リョウ。鑑定なんてスキルは皆同じだと思うけど…。」


「いや、そこが盲点だと思う。俺とレンは元々別の世界のにんげ…モノだ。例えば俺が見ている赤って色と、レンが見ている赤は本当は別の色かもしれない、お互いが赤だと認識しているから【赤】が違う事に気付かないだけかもしれない。そんなふうに【鑑定】も、もしかしたら別物の可能性があるのさ。」


 レンが考え込む素振りをみせる。


「んん…私のは…名前と性能の数値化とそのもの自体の情報が分かるな。」


 そこは同じか…。なら、


「その情報をさらに【鑑定】出来るか?俺はその物自体の情報が表になって頭に浮かぶんだが…説明文の一部に個別に鑑定する事が出来る。」


「ん?なにそれ、そんな事は出来ない…と思う。そんな発想無かったし… 」


 レンがバスケットを持ち上げて見つめる、鑑定しているんだろう。


「無理ね…。」


「情報の【鑑定】は女の声で説明を読み上げる様に頭に声が響くんだ、そんな事は無いか?」


 レンの目がカッと見開く。ちょ、なんで怒った感じになるんだよ。


「女の声とはどういう事?返答次第じゃ…」


「いやいや、声だけだっての!無機質な女の声で伝えて来るんだよ。」


「リョウが鑑定した内容を?ならその声の主は何処にいるって言うのよ?念話じゃあるまいし…」


 そうだな、そこが大きな疑問点。システムの声、通称シス子。


「うん、わかった。俺とレンの鑑定が少し違うのは理解出来たよ、じゃぁ次…に行く前に屋敷に戻ろうか、ハムも無くなったみたいだしな。グレイプニール、屋敷に来るか?」


 ワンコは皿の横で丸まって欠伸で返事をした、此処で良いみたいだな。


「あぁ、ニールは外が良いらしいんだ、ずっとこの辺で遊んでるぞ。この前リョウが来た時もな。」


 …それってアレをナニした事、気付かれてないよな。まぁ…ワンコだし、気にしなくてもいいか。

 よし、皿を回収して帰ろう。


「んで、次の質問な。俺が此処に来る時ってレンの許可が要るよな?俺が自由に出入り出来たりは無理か?」


 屋敷への短い散歩はいい天気と涼し気な風でとても心地良い。スッとレンが腕を組みながら上目に俺を見る。


「それは無理よ、出入りは完全に私の意思によるもの、呼ぶのも出すのも私の許可が要るの。勝手に何かに入られると魔力を削る事になっちゃうし。」


 出入りはレンの許可制ね、ならグレイプニールも出そうと思えば出せるのか。


「じゃ、いざとなったらあのワンコロを強制的に斧に放り投げたりは出来るんだな?」


「む…出来るけど…わかった、後でニールに伝えとく。」


 屋敷の玄関をくぐり、キッチンから果物を拝借してレンの部屋に戻る、今俺が持ってるリンゴに似た果物も、ある程度時間が経つと有った場所にまた出て来ているらしい。


 レンの部屋に戻った俺達は、紅茶を用意して、いつものテーブルに腰掛けた。果物を齧る。うん、美味い。


 部屋の窓を開けると丁度いい風がカーテンを揺らす。


「質問は後二つな、レン自身の能力の中じゃ、この空間に関するものはあるか?」


「質問の意味がわからないよリョウ。ここは女神様に頂いたもの、能力とは違うよ?」


 あー、これってもしかして…


「じゃあ質問を変えるぞ?レンは自分のステータスって見た事あるか?自分への鑑定は?」


「いや、自分自身の力は理解している。ステータスと言う言葉に聞き覚えは無いが、出来る事は全て把握しているよ。」


 やっぱりか…


「じゃあレン、外に出たらお前自身を鑑定して見てもいいか?」


 見る間に真っ赤になったレンが目を伏せた。おずおずと上目で此方を伺う。


「……は…恥ずかしいけど…リョウに私の全部…見せるのは今更だし…、いい、よ?」


 ちょっと待て、なんかおかしいな。インテリジェンス系のアイテムにとって鑑定ってそんな感じなのか?グレイプニールは…ワンコだから気にしてないか…


「お、おぉ。…じゃ、じゃぁ出たらな。あ、ちゃんと断ってからするから…な?」


 くそう、俺もなんか恥ずかしくなったじゃねぇか。


 温くなり始めた紅茶を一息に飲み干して、最後に今日最も確認しなけりゃならん事を口に出す。


「レン、創造の女神イーリスって名前に心当たりは…」


 ズダン!と窓から白い塊が飛び込んできた、いや、外からの光をはらんでその塊は銀色に反射している。


 飛び込んで来たそれは床を跳躍し、俺とレンの座るテーブルの前で前傾の姿勢を取る。

 …威嚇されている。

 馬車でエナを襲った狼など比べ物にならない迫力、白銀の巨躯が俺に今にも噛み付かんばかりの剣幕で唸りを上げている。


「ニール⁈」


「ちょ、なんだ⁈グレイプニ「何故その名を知っている!」」


 驚く俺達に向けた咆哮は、人の言葉になって聞こえた。 お前喋れんのかよ⁈


「答えよ!遠野亮司!なぜお前が我が女神の名を知っている!答えよ!」


 グレイプニールが一歩踏み出す、凄まじい威圧を感じて汗が噴き出し、俺の足が無意識に後ろに下がる、だがその目の前にレンが立ち塞がった。


 紫電がその体から発生し、バチンと床に焦げ目が付く、うお!あっぶね!

 目前の狼以上の威圧感を纏ってレンの体が浮き上がり、激しい雷光に包まれる。

 ビリビリと部屋の空気を揺らしながらレンが叫んだ。


「聖斧グレイプニールよ!我が想い人への狼藉は許さんぞ!かつての戦友とて一切の容赦はせぬ!今此処でその魂滅する覚悟があるならば掛かって参れ!」


 グレイプニールが低い唸り声を漏らしながら気圧された様に後ずさりする、いや、想い人とかすげー嬉しいんだけど、その煽り方だとお約束的にやりあう事になっちゃうから!


「お前ら二人とも落ち着け!皆仲間だろうが、それにこんな狭いところで戦われたら俺消し飛ぶから!グレイプニールもちゃんと話すから落ち着いてくれ!」


 グレイプニールがしばらくの睨み合いの後、前傾の姿勢を解いた。押し潰されそうな威圧感がフッと消え、レンが床に降りた。が、雷光は消えていない。後ろ姿しか見えないけど、滅茶苦茶怒ってるのは確実に分かる。


「ニール…選べ。この場で貴様の精神体を消し飛ばすか…リョウに謝るかだ。我が館でお前の力が十全に発揮出来るなどと、妙な考えは起こすなよ?」


 床や調度品を跳ね回る雷光で焦がしながら一歩二歩と白銀の狼に向かう。うわぁ…部屋が見る影も無いな。


 ジリジリと壁際まで追い詰められた狼は…その巨躯を横たえ、腹を見せて渋い声でこう告げた。



「ご…ごめんなさい。」

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