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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
23/45

23話 レンゼリアの告白





 王都の南、馬車の足で約半日の距離にあるこの町は、南下する商隊や旅人の多くが利用する。


 初日の旅程は滞りなく、予定していた宿町でそれなりの宿を確保出来ていた。建国祭が終わって旅行者も多かったが、行きよりも人数が増えていたし、国王から旅費の援助が出た為、貴族向けの少し良い宿を使っている。


 エミリアに当てがわれた部屋の外にはディクスとゼーリカが交代で護衛に立つらしい。

 家に帰った後もやる気なんだろうか。


(さてレンゼリア、エミリアも寝た事だし漸く話が出来るぞ?今日言ってた皆に聞かれたく無いって話は何なんだ?)


 魔力光の消えた真っ暗な部屋の中で、エミリアの右手に嵌った俺、布に包まれたままテーブルに置かれた聖剣。…改まって話があると言われると、結構身構えるもんだな。


(あー、いや。そんなに大した話しじゃないんだが、ちょっと見て貰わないといけないものがあると言うか。とりあえず私の中に来てくれるか?)


(…分かった、それじゃ頼む。)




 光に包まれてレンゼリアの部屋。いつも目が慣れるまで眩しいのが欠点っちゃ欠点か。

 レンゼリアの精神世界、俺はそう呼んでいるが、彼女は私の中とか我が館と呼ぶ。


「ふぅ、どうしたんだ?レン、珍しく大人しいじゃないか。」


「め、珍しいとはなんだ。とりあえず飲み物を用意するからちょっと待ってろ。…何か食べたいなら用意してくるが?」


「それも珍しいな、いつもは自分から料理しようとはしないのに。ありがとう、飲み物だけで十分だよ。」


 今日のレンはやけに落ち着かないな。


 彼女の精神世界には、ひと棟の屋敷と大きな芝生の庭が存在した、建物は二階建、レンゼリアの部屋は二階に位置している。

 客室があり、書庫、ラウンジ、一階には食堂、キッチン、風呂、使用人用の部屋まである。何処かの屋敷をモデルにした様な広々とした建物だ。


 庭も広い、一面芝生でマキナウス家の庭より整備されている。どれぐらいあるんだろうか…庭には1本の大木が生えていて、良い感じの木陰がある。昔はそこで食事をしたり、まったりした時間を過ごしたもんだ。

 天候まであるんだから驚きだ、正直この中で暮らしても何不自由無い生活が出来てしまいそうだが、レンゼリア以外がここに存在すると彼女の内在魔力を消費してしまう。この中の時間で三日、それが限界らしい。


「いつも思うが便利な能力だな、俺にもこんな空間があればな。」


「一人だと少し持て余すがな、前はリョウが来てくれてたから…まずはお茶でも飲もう。」


 部屋のテーブルにティーセットが用意された、レンの部屋に来た時はいつも紅茶だ。

 二人で腰を下ろしてお互いに一口、あぁ美味いな。俺も精神体なんだろうが、ここでは食事も睡眠もとれる、他にも色々と出来る。


 お互いカップを置いたところで目が合った。


「俺からも新しく相談したい事が出来たからちょうど良かった。まずはレンの方から聞こう。どうした?」


「…窓の外を見てくれ、ほら、あの大木のところだ、根元。」


 ん?外か?俺はテーブルを離れて窓から外を眺める、良い天気だな、あの太陽はどうなってるのか疑問だ、雨が降った時は水は何処に行っているのか。…深く考えると負けだな、レンゼリア本人も分かってないんだから。

 相変わらず誰も何にもしてないのに整った庭だ、遠くに柵が見えてその向こうは霧がかかった様に白くなっている、それより向こうには何もない、柵から出る事は出来ない。ゲームの世界の端にある見えない壁が一番イメージが近いかな。


「大木って、前に飯食って昼寝したところか?何が…」


 あれ?……小さい何かが居る。真っ白い塊が大木の下に…居る。距離があるから分かりにくいが…犬?。


「レン、何か居るぞ。」


「……グレイプニールだ。」


 レンに向き直る、バツの悪そうな顔で目を逸らして続ける。


「あの子はもう50年近くここに居る、だから斧から出てこないのは…そう言う事なんだ…」


 いや、50年て。


「…オーケー、オーケー。一つづつ確認していこう。まず時間制限の件は?レン以外が居ると三日しか持たないハズだよな?」


「わからん、魔力消費が無いんだ、私も最初は暇そうにしてたから呼んだんだが、魔力を消費しないから何時迄も滞在出来ている。推測だがグレイプニールも私の様な空間を持っていて、それで私の館でも異物扱いされて無いのかもしれない。」


 ちょっと羨ましいな。 だが別の世界から来たもの同士だろう、互換性とかあるもんなのか?


「強制排出は?出来ないのか?」


「あ、いや、出来るは出来るんだが…ちょっとな。グレイプニールに会えばわかる。」


「グレイプニールの装者を同行させたのはあまり遠くに離せなかったからか?」


 めっちゃ汗かいてるな。


「分かった、とにかくあいつに会いに行こう。まさか聖斧が機能してない原因がレンにあったとは…。」


「あ、待っててくれ、キッチンからハムを取ってくる。」


 エサやりか。




 玄関から二人で外に出る、俺の手にはハム入りのバスケット。


「なんでまたグレイプニールがここに居るんだ?」


 庭を歩きながらハムを口に放り込む、美味い。


「歩きながら食べるな、行儀の悪い。いや、ずっと暇で…グレイプニールも暇して無いかなと思って駄目元で呼んでみたら…入ってこれた。それからずっとだ、居心地がいいらしく…」


「いやまぁ、緊急事態が無かったなら良いんだが。」


 大木の下の白い影が此方に気づいたのか動き出した、こっちに向けて走って…あれ?

 …グレイプニールってあんなに小さかったか?


 凄い勢いで走って来た白い子犬、飛びかかられて俺は尻餅をついた。


「ちょ!お前グレイプニールか⁈やめ、顔、舐めんな!止めろっての!」


 尻尾をブンブンと振り回して戯れるワンコに顔面を蹂躙される。


「おー、ニール。楽しそうだなぁ、リョウに会えたのがそんなに嬉しいか?」


「レン!止めろ!こいつを引き離してくれ!」


 苦笑するレンがヒョイとグレイプニールを抱き上げた、少しバタついていた子犬だったが、顎の下をモフモフされてクフゥ、とだらしない顔になっている。


 白銀の聖獣と呼ばれて敵味方から恐れられていたグレイプニールが…ワンコかよ。



「はぁ、顔がベトベトだ…とにかく座ろう。ほれ、グレイプニール、ハム持って来てやったぞ。」


 大木の下に腰掛けてバスケットからハムを取り出す。一緒に入れて来た皿に盛り付けて置いてやると、レンの手から降りてガッつき始めた。

 レンが隣に座る。


「グレイプニール、お前こんなに小さくなれたのか?いっつも凶悪な外見ばっかりだったじゃん。」


 前線に出なかった俺が知っていたのはワゴン車ぐらいある銀色の狼だ、聞いた限りだとかなりのバリエーションがあるらしい。


 ワン!一瞥してまた皿に鼻を突っ込んだ、嬉しそうに尻尾が振れている。

 完全に犬じゃねぇか。


「んで?斧に戻す事はできるんだろ?レン。」


「あ、あぁ。勿論出来る。出来るんだが…」


 ビクッとしたグレイプニールが食べるのを止めて俺とレンの前にてててっと歩いてきた、一瞬俺たちを見て…


 コロリと腹を見せてクウンと潤んだ瞳で此方を見た。


「これでお前は50年も誤魔化されてたのか。」


 無表情で眺める俺にクウンクウンとアピールするグレイプニール。甘いぞ、お前は血に飢えた獣だろうが。多少サイズダウンして愛玩した程度で騙されるか。


「ちょ、ちょっと待ってリョウ、ニールは何かあればちゃんと斧に戻って戦う!そうだな?ニール⁈」


 ワンコを抱え上げて一人と一匹で潤んだ瞳を向けるレンとグレイプニール。


「レン、お前まさか…本気で暇だったから今までグレイプニールを…」


 二人同時に目を逸らすんじゃねぇ。


「…まぁいい、グレイプニール、何かあったら、ちゃんと助けてくれるか?俺の装者の命も関わってくる大事な事なんだ。」


 くしゃりとワンコの頭を撫でて情けない頼み事を口にする。今はまだ彼女達に頼らないと俺は無力だ、今はまだな。


 一人と一匹が嬉しそうに俺を見る。


「出来れば一度外に出て皆を安心させて欲しいもんだがな。」


 ワフッと鼻を鳴らしてから、レンの手からスッと降りてハムに向かう、はぁ… そのつもりは無いのな…まぁいいか。


「グレイプニールの件は分かった。今度は俺の方だな、新しい情報についてだ。」



 俺とレンは木陰に腰掛けた、隣ではグレイプニールが美味そうにハムを頬張っている。

アップをミスしている事に今気づく( •᷄ὤ•᷅)

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