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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
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2話 召喚したものされたもの



王国歴257年 秋の月45日

 最近は宮廷魔術師の上級術士すらも前線に駆り出される事も多くなってきた。結界維持に必要な魔術師は減少の一途である。

 魔術による前線への援護は絶大な威力を発揮するが、相手も阿呆ではない、対策はされるし同じく魔術による攻撃により我々宮廷魔術師にも少なからず被害は出てしまう。騎士団の運用方法を見直し、魔術師に頼らぬ前線構築をするべきなのだ。

 騎士団長達には悪いが戦場に魔術師の人数は有限だ、このままではジリ貧になる事は目に見えている。




王国歴259年 春の月27日

 長年魔族の進軍を食い止めていた前線の砦が落ちた。騎士団に多大な被害が出たが、残存数の少ない魔術師の部隊の損害が激しい。この失陥は防衛戦における魔術師の不足が要因と言われるが…現在動員出来る人数には限界があると言っただろうが。

騎士団の阿呆共め、私が運用を見直せと言い続けたのに、阿呆共め。

 私が魔術士の援護頼みによる前線維持をやめ、騎士団編成と防衛線の見直しを…と、まぁ今更言っても仕方ない。

 魔力が不足し結界の綻びは確実に増えている、このままでは王国深くへの侵攻を許してしまうだろう。

 状況を打開する方法を考えねば、次の砦が落ちるのも時間の問題なのだから。

 結界の再構築の問題に頭が痛い。




王国歴266年 冬の月81日

 もはや一刻の猶予も無い、魔族の侵攻はもはや眼前まで迫っている。隣国フォステレスとアーベルヘイムも押し込まれ、我が国が落ちれば瞬く間に制圧されてしまうだろう。

 師と長らく研究していた召喚術にようやく目処がついた。異界から勇者を召喚する古代の秘術の復活は形となった。

 これで我が国にも光が見えるはずだ。




王国歴266年 春の月1日

 失敗だ…勇者どころか生き物の召喚が出来ない。初の召喚術で期待されたモノは召喚されなかった。

 魔法陣に現れたのは妙に魔力を秘めた金属の塊の様な物が多数、唯一形のあったものは棍棒の様な握りがついた金属塊であった。

 …これは武器なのか?鑑定によると魔力は異常な程に高かった、我が国の一流の鍛治職人が最高の魔鉄を使って、魂を込めた一品よりも高い魔力を有していたのだ。

 しかし、塊からの加工が出来ない為に実用には足らぬものだった。ふむ…


(魔術構成についての走り書きが長々とつづく)


 方向性を考えれば有用足り得るかもしれんな。王と師へ進言してみよう。

とにかく時間が無いのだ。今から全てを見直す事など出来はしないのだから。




王国歴266年 春の月57日


 成功した。私達は成功した。

 構築術式と引き寄せる要素の固定化、ゲートサイズの縮小による力場の圧縮安定、全ては完璧に実行された。

 8つの武器を引き寄せる事に成功したのだ。

 武器以外の物も以前の金属塊では無く形になった物が多い、全ての鑑定が終了後に実験を経て王へ見ていただく事にする。

 特にあの剣は素晴らしい、あの様な剣は古代の伝説にも見当たらぬ程に強大な力を秘めている。

 魔術師の数は減ったがまだそれらを扱う騎士は残っているはずだ、これで状況を打開出来るに違いない。

 明日の王への報告が楽しみだ。

 願わくばこの一手が人類の光とならん事を。




エスティリマ王国 宮廷魔術師

シディルス=エゼンセン 手記より

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