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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
18/45

18話 再会はあの時のままに




(普通、武器ってのは保管されてるもんじゃないのか?)


(なんだ、私の部屋に不満があるのか?それにこれも保管には変わりないだろうが。)


 ついさっきまで居た控えの間よりも広い部屋に通されたデラクとエミリアは、聖剣を机で挟んだ向かい側に席を勧められた。


(普通に人用の部屋じゃん。ベッドが無いから余計広く感じるわ。)


 既に国王はレンゼリアの横に腰掛けている。部屋には3人+1本が向かい合って座る。部屋に控えていた衛兵とメイドは飲み物が並んだ途端レンゼリアに追い出された。


(よし、挨拶が遅れたな、改めて私が聖剣レンゼリア、異世界の女神によって作られた意思持つ剣だ。)


「マキナウスの指輪は私を知っておるだろうか、現エスティリマ国王ドルフである。」


(名前だけはな、会うのは初めてだな。)


「ふむ、それで?マキナウスの指輪よ、諸々の話を聞こうか。」


(そうだぞリョウ、お前に何が起きたか教えろ。それとずっと会いに来なかった理由もな!)


(落ち着け、前者は話すが後者は知らん。)


 ガタンガタンと揺れるレンゼリアを無視して、数日前の狼襲撃の件を説明する、成長度、魔術が発動出来る様になった事、念話の能力が拡大した事。…神に会った所は伏せた。


(…リョウよ、過去を思えば中々に皮肉めいた話ではあるが、お前にとっては悪くないと私は思うぞ?ようやく意思疎通の手段を得たのだろう?)


「ワシは…にわかには信じがたいがな、武具が成長するなどと、まして聖杖のみが持つ治癒の魔術が指輪にも備わっていたとは。」


 思った通り、この程度までならただの報告で済みそうだな。本題についてはまずレンゼリアとだけ相談したい。


「恐れながら国王様、トーノ殿…指輪様の治癒魔術は本当です。我が家のメイドが瀕死の重症から救われておりますので。」


「腕の酷いキズが見る間に治ったんです、聖杖のお力は見た事が無いので同じかどうかはわかりませんが…」


「聖杖と聖球は今は隣国にあるのでな…治癒の魔術は確かに重要ではある。が、今は特に大きな戦も無いゆえ、王都や王家に留めようとも思わん。そなたはマキナウス家の…その、所有だからな。」


(あぁ、成長度については少々検証したい。マキナウス領に戻ってからは色々と試してみたいと思っている。それでレンゼリア、少し頼みがあるんだが…いいか?)


(おぉ⁉︎珍しいな、いいぞいいぞ、なんでも言え、リョウ!)


(二人で話したい……アレをやって欲しいんだが…)


(アレって、いいのか?それはむしろ私からお願いしたかった事だが…リョウからなんて本当に…いいの?)


「トーノ殿?」


(皆、少しの間待って居てくれ、すぐ戻る。)


「ちょ、リョウ⁉︎何を…戻るって…」


 エミリアが言い終わる前に俺の視界は光に包まれた。









 眩しい…やっぱり慣れないな…手で光を遮る。


 目が落ち着くとそこはさっきまで居た部屋とよく似た内装の部屋だった。違うのは家具の細かい意匠や小物の類い、大きなベッドがある事だ。変わらないな、ここは。


 目の前には銀髪の…ってちょっと待てオイ!

 銀髪の美女が勢い良く俺に抱きついてきた。


「リョウ!やっとまた私を受け入れてくれる気になったのか?嬉しいぞリョウ!」


「離れろ!痛い痛い!加減をしろ!この怪力聖剣が!」


「ここではあの時の様にレンと呼んで欲しい。もうずっとそう呼ばれていない…」


 抱きついたまま離れないレンゼリアの肩を無理やり引き剥がす、そう、両手で、だ。


 銀色の長いウェーブがかった髪、大きな青い瞳、飾り気の無い真っ白なチュニック、俺の胸に手をあて上目遣いで見上げる息を飲むような美女。あの時と変わらない、20歳程の彼女の見た目は…あの時から全く変わっていない。


「…むぅ。…レン、俺も会えて嬉しいよ。」


「リョウ!」


 肩を掴んだ手からすり抜けて、レンゼリアが抱き付いてくる。俺が今抱いているのは聖剣レンゼリアの精神体、ここは彼女曰く自分の中なんだそうだ…最後に来たのはあの戦争が終結してすぐだったな…。


 その顔を改めて見つめる、違う、赤くなって目を瞑るんじゃぁない、違うから。………やっぱり似てる気がする。


 今の俺の外見は遠野亮司だった頃の姿だ、……レンの部屋には大きな姿見があるから確認出来る。多分…あの神に呼ばれた時も…こうだったんじゃないか?


「…レン、俺がここに来たのは違うんだ。お前にだけ聞いて欲しい、聞かせて欲しい事があるからだ。」


「リョウ……そうか…とりあえず座ってくれ。紅茶でも入れよう、リョウの好きなレモンティーにするよ。」



 そう行ってレンは背後の棚にあるティーセットとポットに向かって歩いて行く、部屋の中央に置かれたテーブルに着きながらその後ろ姿に最初の質問を投げた。


「前は疑問に思わなかったんだが、自由に出したり消したりは出来ないのか?」


「何をいきなり、ここは擬似的にだが外界と同じだって前にも言ったろう?そんな事は出来ないよ。」


「飲んだり食べたりした物は?」


「女神様のご配慮でな、決められた場所に一定の期間で復元する。擬似的と言ったろう?その辺りは私の為に色々と都合良くして頂いている。」


「そうか…なら俺をレンの意思で動かしたり出来るか?」


「だから無理だってば、リョウの精神体はリョウの意思で動いてるだろう?それは外界と一緒だ。私がどうこうする事は出来ないよ。勿論ここから強制的に追い出す事は出来るが。………そんな事はしない。砂糖は今でも二つでいい?」


「…あぁ。わざわざ聞かなくても俺の頭の中身が読めたりは…しないか?」


 ティーセットを二つトレーに乗せて半眼のレンが戻ってくる。


「そんな事が出来るならあの時のアレは無かっただろうに…またここで会えて、私の中に来てくれて…本当に嬉しい…」


 だから潤んだ目で見るな。…落ち着かない。


「…あの時はすまなかった。俺がどうかしてたんだと思う。ただ、今日来たのはその事じゃぁ無いんだ。」


「聞きたい事?聞かせたい事?…さっき言ってた…それが無かったら私の部屋には…来て…くれなかった?」


 いや、泣きそうな顔は反則だろ。俺は紅茶を一口啜る、美味い…懐かしい味だ。


「相変わらず美味い紅茶だ………本当はずっと、ずっと来たかったよ、ごめんな、レン。」


 パアッと明るくなるレンの表情、くそぅ可愛いな!問題を放り投げてしまいそうな誘惑に駆られる。自分を抑えろ!遠野亮司!


「…これから話す事は俺とレンだけの秘密だ、外でこの話をする時は、俺たちだけの念話を使う…いいか?」


 レンも紅茶を口にして、小さなため息をついた、こちらに目を向けて真剣な顔で頷いた。


「今のやり取りだけで私は相当に満足しているからな、どんな秘密だって守るよ、リョウ。」


 そして花が咲く様な笑顔を見せた。

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