17話 チートアイテムとの再会
王国歴 476年 夏の月2日
昨日の王国祭初日は滞りなく終わった、開催宣言と国王の言葉は…遠すぎてよく聞こえなかった。今の国王は精力的に国を治めてて、演説の盛り上がりを見るに支持されているんだろう、俺は初対面だからなぁ…何を聞かれてどう話せばいいのやら。
エミリアはエナとレッセンを連れて祭を楽しんでいた、マキナウス領で俺とデクスが開発した料理が普通に屋台で売られててビックリしたが、200年近くも経てばそりゃ伝わるか。
お好み焼き…大判焼き…クレープに綿菓子…空腹は無くなった身だが、久しぶりに食べたいもんだ。
ま、それは昨日の話しとして、今デラクとエミリアは謁見者の控えの間に座っていた。
王城は多少の模様替えはあるものの、当然ながら200年前と同じ構造で、道々案内してやると二人には驚かれた。ふふん、いい記憶力だろうが。
「おと、お父様…私…すっごく緊張してきた…」
ソファに座ったエミリアの顔色は真っ青で、若干肩が震えている。手に持った紅茶のカップとソーサーがカチャカチャと音を立てる。
控えの間とはいえ、内装は華美、天井は高くシャンデリアに壁には巨大な紋章入りタペストリー、上品な装飾の入った調度品、入った直後にエミリアはその大きさに目を見開いてたな。広さもマキナウス家の応接室より広い、謁見の間に続く扉には衛兵が二名、部屋の入り口の扉前にはメイドが二名に執事服をきた男が一名。ついでに紅茶はお代わり自由ときた。
衛兵の一人がエミリアの緊張具合を見て、ちょっと心配そうな目を向けていた。もう一人は真っ直ぐ前を見つめている。
「大丈夫、エミリア。ただの御目通りだよ?陛下から一言二言声をかけられる位はあるかもしれないが、何も怖い事なんてないよ。」
「ででででも、私こんなの初めてだから、おお落ちつかないの…」
ちなみに紅茶はずっと持ち上げたままの姿勢で一口も飲んでいない。
(大丈夫、俺も久しぶりだからな、何かあったら俺が受け答えするよ、いいですよね?デラクさん。)
「トーノ殿、何度も言いますが、さん付けも敬語もいりませんから、トーノ殿はマキナウス家の創始者も同じなんですし。」
と、まぁエナと似たような事を言われる。
いきなりエミリアに向かって脈略のない事を言い出すデラクを訝しんで、メイドの二人がヒソヒソと話し出した。聞こえてるぞおねーちゃん供。
謁見の間に通じる扉からこれまた執事服が入ってくる、ようやくか。
「マキナウス子爵閣下、そのご息女エミリア様、どうぞこちらへ。」
「は、はいっ!」
ガチャンとティーセットを机に置いてエミリアが立ち上がる。家にいる時はドレスなんて殆ど着ないエミリアなので、ドレスに着られてる感があるが逆に初々しいしくて良い。
アレだな、発表会のお父さんってこんな気持ちになるのかな。夏らしい水色で薄手のドレスがとても似合う。
落ち着いて立ち上がったデラクも貴族然とした礼服姿になっている。ちゃんとすれば貴族に見えない事もない、いつもは伸びたシャツ姿だもんな。
謁見の間に続く長い廊下へは衛兵の先導で前後に執事服が付いて歩く、後ろの執事服が道中エミリアに助言していた。
「ご息女様、お父上の斜め後ろに付いて、陛下の御前までお進み下さい、お父上が止まられたら、その斜め後ろに。陛下は壇上におられます、御前にお進みになる際も、立ち止まっても陛下へ目線はお向けになりませんよう少し下へ。そのあと膝をついて陛下のお声をお待ち下さいませ。」
デラクが引きつった返事をするエミリアを見ながら苦笑いしていた。小声でもっと作法の勉強をさせておくべきだった…とかゴニョゴニョと言っていたが、仕方なかろうて。
謁見の間の前に着いたが、いつ見ても無駄にデカい扉だな。
(エミリア、大丈夫か?デラクの斜め後ろに居ればいいからな。止まったら膝をつく、聞かれたらそれに答えるだけでいい。)
(う、う、うん。わかった…)
扉が開かれ、二人の名前が呼ばれる。
「いくよ、エミリア。視線は下げて、付いて来なさい。」
歩き出したデラクにエミリアが背筋を伸ばして付いていく、おお、いい表情になったな。
謁見の間はあの時の様に、長い赤絨毯が壇上まで続いていた、大きな採光窓の並ぶ壁際には衛兵、中央の絨毯から離れた位置に数人の貴族服が並んで立っている。大臣とかなんだろうな。雛壇端にも衛兵、玉座の左右には鎧姿の騎士。
玉座の脇に女の子が一人立っているが、アレが長女のお姫様かな。
…あー…いたわ。女の子の逆側にやたら豪華な飾り台があり、そこに羽の意匠のガードと、銀の刀身を持った聖剣様が。
こっち見てるな…俺にもあいつにも目は無いがわかる、めっちゃこっち見てる。
「表を上げよ。」
国王に促されて二人は顔を上げた、40代…若いな、王様にしてはシンプルなジャケットにパンツ、赤いマントは厚手で銀糸の細かい刺繍が見え、少しアンバランスだ。
「今日はめでたい建国祭だ、気兼ねなくするがよい。久しいなマキナウス子爵。」
「はい、建国祭の開催、お喜び申し上げます。国王陛下におかれましてはご健勝のご様子、なによりでございます。」
「そんなに硬くせんでもよいデラクよ、マキナウス家は王家にとっては親戚も同じよ。」
少し周りの空気が変わった感じがしたが、まぁ気のせいだよな。数人並んだ最後尾の貴族服からめっちゃ睨まれてるけど。気のせい気のせい。
「して、デラクよ、その子が例の?」
「はい、次女のエミリアでございます。先日10歳を迎えました。慣習に従い祝いの席にて指を通しましたところ、この様に。」
「ほぅ…エミリアよ、その手を上げて指輪を見せてくれるか。」
「ひっ、は、はい。陛下!」
ビクンとしたエミリアに国王の視線が向く、国王は笑顔なので大丈夫だろう。
震える右手の甲を目の前まで持ち上げ、エミリアは俺から視線を外さない。王様の方を向きなさい。
「マキナウス家の指輪は聖剣レンゼリアと同じく意思を持つと言うが、誠であったか?」
「は、はい。陛下、リョウ、じゃなかった、指輪様は確かにお話になられます。」
国王は顎に手を当てて少し半眼になる、あー、こいつ疑ってんな?
「ふむ、ならば指輪に問おう、勇者王ランデウスの携えし聖剣、伝説に伝わるレンゼリアの力とは何か。」
「ぎょ、御意を得てお答え致します、聖剣レン(あー、俺が直接答えるよ)」
「ぬ⁈い、今のは?」
驚いてるな、少し腰上がってるぞ。
国王とデラクとエミリアだけに念話送ってるからな、驚いた国王に驚いた貴族服の挙動が笑える。隣のお姫様も王様を凝視しない。
(レンゼリアの能力はあんまり大っぴらにしない方がいいぞ?国王。レンゼリアに迂闊に話すなって言われてないのか?)
デラク、焦ってこっち見るな。不敬だぞ不敬。 エミリアも固まらない。
「マ、マキナウスの指輪は操者とのみ言葉を交わす…のでは無かったのか?」
(あー、それはな)
ヒュン!
風切り音と共にエミリアの前に銀色の影が降ってきた。ガキンと床の破壊音を響かせてエミリアが掲げた手のほんの数センチ向こうに聖剣が突き立った。
(おい、リョウ。いつまで私を待たせる。まずは真っ先に私に声をかけるべきだろうが。)
国王、デラク、ついでにお姫様、口開いてるぞ。エミリアも早く口を閉じなさい。
(それになんで国王に念話出来てる、その娘の父親にもだ。お前は装者以外はもう私としか話せなくなっていただろうが!)
刀身がバチバチと光を纏い始める、超◯イヤ人にでもなるつもりか。
(ちょっと落ち着い(今日の謁見が決まってからどれだけ私が待ちわびていたかわかるか⁈久し振りに会えると思ってみれば、私の事は無視して国王とばっかり話して!ヒドイじゃないか!))
(だーかーらー(最後に会ってから何年経ったと思ってる!お前の事を呼び出せと言っても、国王達にはのらりくらりと躱されて、いっそのことマキナウス領まで飛んで行くか、お前をマキナウス家から召しあげようかと思ったんだぞ!))
光から紫電が唸り刀身が振動を始め、突き立った床からビシリとヒビが広がる音がする。
(あー、もう!落ち着けっての!色々あって出来る様になったんだよ!)
俺の声はレンゼリアと国王、デラクとエミリアにしか届けてないが、多分レンゼリアのそれは謁見の間全員に聞こえてるんだろう。
苦笑いを浮かべる者、冷や汗浮かべる者と様々で、貴族服達は聖剣をどうやって飾り台に戻すかどうかで騒いでいる。
(これが落ち着いていられるか!お前は昔からそうだ!なんでも一人で淡々と!私がどれだけお前を理解したいと思っているか知らない訳ではなかろう!)
いや、そう言われましても。
カタカタと振動しながら、一層激しくなった紫電を纏って浮き始めるレンゼリアについにエミリアが涙目になって震え始める。
(国王!すまないがこのままじゃ収集がつかん、ゆっくり話したいんだが、難しいか?)
「レンゼリアよ!この後の予定は取り下げる!別室でゆっくり時間を取るゆえ!」
レンゼリアの纏う光がふっとかき消え、ゆっくり浮遊して玉座脇の飾り台へ戻っていく。
「ならば私の部屋で話そう、良いか?」
…ダメって言ったらまた飛んで来るんだろうが。
謁見の間の全員が同時に溜息を吐いた。
◇異世界の指輪◇
装備分類:リング
成長度:1
防御力:0
魔力値:6
アビリティ:筋力増強+1
サイズ調整
アクティブ:鑑定
パッシブ :魔力自在化
視覚自在化
思考制御
◇説明◇
詳細不明の金属で出来た指輪。




