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俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
14/45

14話 質問するなら落ち着いてー





「ん、んん…」


 真っ白い空間に俺は立っていた。

眩しい…目をまともに開けられない。


「起きたー?わかるかなー?」


「ん…?人…?」


 それでも瞼を上げると、ボヤッと人影が見える、眩しいな…手をかざして光を遮る…手?

 …手…手がある…足も…、体がある!戻ったのか?元の体に戻った「戻ってないよー。」


「え?」


「まぁ、座りなよー。」


 目が慣れてきて…女の子。女の子が目の前でテーブルの向こうに座っている。

 見下ろした足元は何処までも白い、俺と女の子は白い空間にテーブルを挟んで向かい合っていた。


 銀色の長いストレート、大きな青い瞳、歳は…エミリアくらいか、真っ白い服、机が手前にあるから下は分からないが、笑顔が可愛い、かなりの美少女だが…どこかで…


「あんまりジロジロ観察されるのはちょっとなー。でも美少女ってのは悪い気しないよー。」


「今俺声に「まぁ座りなよー。時間も限られてるしー。」」


 促されてノロノロと席につく、気がつくと手前には湯気を立てる…コーヒーがあった。自分の足で動く感触、手で椅子を引く感触…手を握りこんだり開いたりして確かめる。

 コーヒーが入ったカップを手に取った。コーヒー、懐かしいけどブラックはちょっと。


「紅茶がよかったー?」


「え?」


 顔を上げる、コーヒーの香りのする湯気が消えた。下を見ると、手元の黒い液体は透き通る琥珀色に変わっていた。…紅茶だ。


「まー、200年越しだからねー、飲み物ぐらいは美味しいのを用意してあげるよー。好きなの言ってねー。」


「200年って、なんで…君は…」


「もともとあたしが呼んだんだから知ってるに決まってるじゃーん。」


 言葉が出ない、あの時気がつけば城に居て、そのまま状況に流された。色々あって、本当に色々あって、諦めた。ずっと前に諦めて、それで


「よ、呼んだっておま…呼んだって!お前何を知って!」


 立ち上がりながらテーブルを乗り越えんばかりに相手に手を向ける。頭に血がのぼる、掴みかかろうとして


「だめだよー、神様にさわろうなんてー。」


 その手が触れる瞬間に腹をテーブルに打ち付けた、そのままの勢いでテーブルに顔面から突っ込んだ、手が、腕が消え…


「う、うわぁぁぁぁっ⁈」


「だから落ち着いて座ってー?」


「うわぁ…あれ?」


 次の瞬間、俺は何事も無かった様に椅子に座っていた、倒して溢れた紅茶も元に…


「さっきのはねー、空間ごと切り取ってー、そのまま指定空間拡大と時間制御をーってまぁいいやー、落ち着いてねー?」


「あ、あぁ…あぁ…」


「話してもいいー?」


 ニコリと微笑んで目の前の女の子は紅茶に口を付けた。


 震える、今起こっている何かが理解出来ない、正面に座る笑顔の女の子がなんなのか分からない、だがその笑顔に体の底から言い様の無い恐怖を感じた。


「…神様って言ってたな…本当…なのか?」


「お、話してもいいかって聞く神様に向かってそっちから質問ー?なかなか恐れ多いねー。」


コロコロと笑いながらまた紅茶を一口。


「否定は…しないんだな。」


「そうだねー神様だよー、んー、話すって言っても、伝えなきゃいけない事はー、もう時すでに遅しだからねー。そんなに意味はないからいいかなー。」


 何を…言ってるんだ、この自称神様の女の子は。自分から話すって言っときながら…


「だってー、本当は200年前に伝える予定だったんだよー。貴方が悪いんだよー?設定じゃ、成長度が1になったらすぐここに来る予定だったんだからー。いくらなんでも遅すぎだよねー。」


「はぁ?」


「魔族との戦争の切り札としてー、死んじゃった貴方の魂をとっておきの最終兵器ー、とはちょっと違うけどー、にしたのにー、貴方臆病過ぎて何の役にも立たなかったじゃなーい。ちゃーんと見てたよー?」


 ???死んだ魂???


「そ、せっかく貴方が死んだ時にわざわざ呼び出したのにー。」


「な、何で俺を⁉︎いや、死んだってそんな馬鹿な「死んだよー?」」


「20◯◯年の◯月◯日、仕事から帰宅した貴方は過労状態でベッドに倒れこんだまま昏睡、そのまま心臓麻痺で死亡ー。覚えてないよねー、遠野、亮司くーん。」


「貴方はたまたまー、本当にたまたまタイミングが合って選ばれただけよー、深い意味はまーったく無いよー、亮司くーん?」


 明るい声で、満面の笑顔で女の子が続ける。


「せっかく第2の人生ー、道具としての役目を与えてあげたのになー、わたしあの時凄くがっかりしたんだよー?」


 何だ、何を言ってるんだこの…


「ぜーんぜん、ホントにぜーんぜん、役に立たなかったんだからー。」


「ふっ…ふっざけるなぁ!」


 頭にキて飛びかかろうと椅子を立ち上がろうとした瞬間、今度は俺は俺が座っていた椅子のずっと後ろで前のめりに倒れこんだ。


「うおぁっ⁈」


 顔を上げると、足がみえた、小さな裸足と真っ白なワンピースの裾、見上げる。


「座って話してもらっていいー?空間を操作するのって色々と面倒なんだからー。」


 …また次の瞬間にはテーブルに座って目の前には、紅茶、頭が、おかしく、なりそうだ。


「あなたはー、成長する道具としてー、魔族側に傾いたバランスを戻す為の要素として放り込んだけどー。調整ミスで強力過ぎたからつまんなくなると思ってー、ほんのすこーし縛り入れたら全然ダメだったしー。」


「…成長……バランス?…縛りって…」


 俺の問いかけに話は続く。


「そうそうー、バランスー。」


「あなたを使わなくてもー、人類側が呼び出したオマケだけでなんとかなっちゃったのはー、神様と言えども予測不可能な事だったんだよねー。だからこそ結構面白かったんだけどねー。正直予想外からの展開が新鮮でー、かなーり良かったよー?」



「お、お前一体何を…」


「そろそろタイムリミットだねー、本当は神様として魔族と戦う使命とかー、簡単な説明を伝えるだけの時間しか設定して無かったからねー。まーせいぜい次のイベントの邪魔にはならないでねー?」


 笑顔が変わらない、声色も変わらない、俺は恐怖を感じていた、ヨクワカラナイナニカを一方的に突きつけられるこの感触に。


「あなたの役目はー、もうとっくに終わってるんだけどー、たまったま思い出したからちょっとしたスパイスもいいかなーと思ってー、ほんの気まぐれだから期待しないでねー?まーどうせなら頑張って楽しませてくれると嬉しいなー。」


「さっきから!何を!言って!」


「はい、そろそろ設定時間がおわるよー、あの時だったらもっと神々しく演技してあげて、役割にも楽しみや責任を感じさせてあげたんだけどねー。ほんとにざーんねーん。」


 少女の体が光を発して浮かびあがる。笑顔のまま、両手を拡げて椅子の背もたれが見える程度まで、俺がそいつを見上げる位置まで。

 背後からの強い光で少女が影になる。


「ようこそ…異世界の勇者よ…貴方を待って居ました…ぶふー!あーっはっはっはー!こーんな感じでどぉー⁉︎あはははははははははははははは!」


 影が腹を抱えて笑う。心底楽しそうに。取って付けた様なエコーをかけて。


「まだ話は終わってねぇ!まだ話は「やー笑った笑ったー、はーい、さーん、にー、いーち、」」


 立ち上がりテーブルを乗り越えようとする。


「じゃーねー!ぜろー!」


 途端に目の前が真っ暗になって暗闇に落ちる感覚、終わりの無い落下感、夢の中で…高いところから落ちた時の、あの絶望にも似た。




 叫ぶ



(話は終わってねぇぞ!このクソ神!)


「うわっ!ビックリした!リョウ、リョウ⁈」


 ベッド…部屋?エミリア…なんでそんな顔で俺を見てる…なんで泣いて…?


「5日も反応しなかったから心配したんだよ⁈大丈夫なの⁈」



 俺を嵌めた右手を胸に抱く様に握りしめる。


(5日?5日って…さっきの女は…俺は…)


「女って…リョウ!わたし凄い心配したのに…お父様もレッセンもリョウが反応しないって言ったら真っ青になってたし、エナだって…」


「お嬢様!今トーノ様のお名前を⁈もしやトーノ様が戻られたのですか⁈」


 ノックもせずにエナが部屋に駆け込んでくる、ベッドに座るエミリアの手を両手で握って、その指に嵌った指輪に涙を流しながら顔を近づけた。


「あの時トーノ様に命を救って頂きました、本当にありがとうございます…お声が聞こえなくなったと聞いて…私…私…」


(あ、あぁ、エナさん、良かった。ちゃんと治ったんだね。)


「えっ?今の…は…?」


 エナが急に目を見開いて指輪を凝視する、握った手に力が入ってエミリアが顔を歪める。


「エナ、ちょ手、痛いって。」


「今…男の方の声が…トーノ様、トーノ様のお声ですか⁈」


 エマが更に涙を流しながらエミリアの手を自分の胸に搔き抱いた。


「(ええぇぇぇぇぇ⁈)」




◇異世界の指輪◇

装備分類:リング

成長度:1

防御力:0

魔力値:6

アビリティ:筋力増強+1

サイズ調整

アクティブ:鑑定

パッシブ :魔力自在化

視覚自在化

思考制御


◇説明◇

詳細不明の金属で出来た指輪。

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