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晴香の黄色い青春  作者: じゅん
2/10

春休み〜薬局でじゅんと〜

目を覚ました晴香はまたしても昨日と同じ感覚に起こされる。そして、恐る恐る事実を確認すると恥ずかしさと不安で今にも泣きそうな顔になっている。


しかし、高校三年生に上がろうとしている晴香はいつまでも子供のようにしているだけではない。しっかりと昨日と同じように後片付けをする。もちろん、抜かりはない。


一通り片付けを終わらせると椅子に座って昨日と今日の粗相について思い当たることはないか考えていた。

(なんでしちゃったのかな…。いや、そんなことより明日には真澄が帰ってくるのに。どうしよう…。うーん…。でも…おねしょするようなことなんてしてないし…初めてだし…なにしたらいいの。…おむつとかかな?ダメダメ、そんなの恥ずかしすぎて…)


“ちょろちょろちょろ…しゅわぁぁぁぁあああー…。ちょろ”


(ぇ…?え!?)

考え事をしていた晴香は自分の尿意すら忘れて考え込んでいたのか、なんとお漏らしまでしてしまったのだ。


♢♦︎♢


しばらくすると、晴香は少し寮から離れたところにある薬局に来ていた。

(はぁ…。まさか、お漏らしまでしちゃうなんて、本当に私どうしちゃったんだろう…)


『あれ?はるかじゃん〜っ!こんなところまでどうしたの?あ、さては…ここの薬局、カップ麺安いから買いに来たんでしょ〜?ダメだよ〜、お昼くらい自炊して食べないとっ。』

話しかけてきたのは、同じクラスで特別仲のいいじゅんである。

146㎝でクラスのもう1人の人気者のじゅんは、可愛いと噂の生徒の1人だ。しかも、男女ともに高い人気を得ている。それもそのはず、なんと外見は完全に女の子にしかみえないが、実は男であるという。いわゆる、男の娘である。


『あっ、じゅんっ。久しぶり〜っ。終業式以来だね。寮は近いけど、春休みって割と忙しくて遊べないもんね。因みに、私はカップ麺なんて買いに来てないわよ〜だ。それに、そんなに言うならじゅんがごはんつくってよね。それにそういうじゅんはなに買いに来たのよ…?』

ふと、じゅんの手元を見ると大きめのエコバックを持っている。エコバックからは黒いビニール袋が少し見えるがなにを買ったかはわからなかった。


『わ、私は…まぁ。男の娘にもいろいろあるのっ。じゃ、急いでるからまたねっ。ご飯、真澄が帰ってきたら作りに行くから!』


落ち込んでいた晴香だが、突然親友とあって話したことから随分と気持ちが軽くなっていたが、今から買おうと思っていたものを思い出してまた憂鬱な気分に逆戻りであった。


棚には様々な種類のものが売っている。どれを買えば良いのかわからない。しっかりと説明書きを読んで購入したいのだが、生憎商品棚の前で立ち止まることすら恥ずかしくて難しい。

なんども、その列を行ったり来たりしてなにくわぬ顔をしてチラチラ商品を眺めて少しずつ商品の情報を確認していく。他人からみたら、怪しいことこの上ないが、本人はこれ以上ないほど自然に見ているつもりである。


やがて、意を決したように決めたのは結局可愛らしい柄のものにしたようだ。パッケージには、“BOON SBサイズ 女の子用 大きなお子様でも大丈夫”と大きく書かれている。

(あぁ、ついに持ってレジに出しちゃってるよっ、私。うー。ちがうの、これは私が使うんじゃなくて、私の妹が使うんだからっ。)と心の中で言い訳をするが、勿論聞こえるはずもない。しかも、真っ赤な嘘である。


『お会計1500円になります。袋にはお入れしますか?』大学生くらいのお姉さんが、親切に対応してくれている。


『えっ、あ、大丈夫です。』

(しまった!え、いま袋のこと聞いてたよね?間違えちゃったー。袋欲しかったよぅ…。)


『ありがとうございました。』


お店を出ると、手に持っているそれを捨てたくてしょうがない。今更ながら、晴香が買ったのはおむつである。おねしょを二日間も続けざまにしてしまい、しかもお漏らしまでしてしまった晴香。当然不安である。また、ルームメイトで親友の真澄にだけはばれたくないと思うのは当然の流れであるといえる。そこから、おむつを買う発想自体は不思議なことではない。

晴香は、袋を断ってしまった過去の自分を呪いながらやっとの思いで、寮まで帰ってきた。もちろん、他の寮の生徒に見つからないように帰ってきた。


しかし、寮に入っていく様子を1人だけ眺めていたものがいた。それは黒い影である。以前、部屋に入ってきたと思われるシルエットは逆光によって誰か判別できない。しかし、その目はきっと晴香の持っていたものをしっかりと捉えていただろう。


♢♦︎♢


『ふぅ…。ばれなくてよかった。ちょうど、私のルームメイトも帰省してて助かったよ。ほんと…。』

ため息交じりにつぶやいたのは、じゅんである。


『おととい、毛布の中なんかにお茶なんてほったらかしたから当たっちゃったのかなぁ…?うーん…。』


♢♦︎♢


晴香の部屋では今日も当然の如く入浴中に黒い影は現れていただろう。


『さてと、今日は早く寝なきゃ…ってあれ?パジャマ…あ、そっか…。私薬局行ってる間に洗濯したのにほし忘れちゃったのね。』

(くさくなっちゃうよ…。しょうがないからもう一回回して明日の朝に干そうかな。うーん、しょうがないから今日は柔らかい素材でできてるスカートで寝るしかないかなぁ…。なんか、今年になってからうまくいかないことばっかね…。いや、気のせいよね!早めに寝よっ)

心の中でそう言い聞かせると、柔らかい素材でできた、スカートとシャツ着ると、少しあたたかめにセーターも着た。


そして、晴香のタンスを開く。すると、そこには薄いピンク色をベースに、花やさくらんぼといった、可愛い柄をワンポイントあしらったデザインのおむつがぎっしりと詰まっていた。

そこから、無造作に一つだけ取り出すとタンスを閉める。それを持ったままベッドまでいくとショーツを脱いで、手に持っていたそれを履く。

(うーん。なんか、もこもこするかな…。ま、でも気にならないといえば気にならないし…。毛布かぶってればばれないよね。明日平気だったらきっと昨日と今日が変だっただけよね。きっとそうよ。)


そんな風に考えてるうちに、次第と瞼が重くなってゆく。毛布をしっかりとかけて夢の世界へ落ちてゆく。そして、もう二度とと、あの布に足を通すことはないということをまだこのあどけなさを残す女子高生は知らない。

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