表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

死神と女神①

 

 薄暗くなり、完全に日が落ち始めた森の中を歩く、一組の男女が居た。


「神様! もうちょっと急ぎましょうよ! 暗くなってきたし怖いですよ!!」


「良いじゃん暗いの。好きだよ、俺。落ち着くし」


 心底遺憾ながらも二人揃って下界に落とされた死神の俺と女神だ。


「えっ? そ、そんなぁ……好きだなんて……」


「お前の事とか一言も言ってないし。初対面の相手に、お前は頭ん中お花畑か」


「ペアで行動しろって言われたから仕方が無いじゃないですか。冗談なのに酷いですもう死にます!」


 ゴパァアン――!!


 目の前でフワフワと宙に浮いていた少女が自分の胸に手を当てると、上半身が破裂した。しかし、グニャグニャと色々な物が蠢きながらも少女の体を再度形作り、


「復活しました!」


 再生した。


「ああ、うん。それ楽しい? 自分で上半身吹き飛ばすの」


「はい! 渾身のネタです! 皆笑うんですよ、これ!」


 いやお前それ……。


「…………そうか。どうでもいいけど目の前でいきなり体吹き飛ばすのだけはやめろよ。マジでショッキング過ぎるぞ。後気持ち悪い再生の仕方もやめろ。普通にキモい」


「えっ……ごめんなさい……神様が喜ぶと思って……」


「露骨に落ち込むなよ感情の起伏が激しいなお前」


「まっ、演技ですけどねっ!」


「……知ってたけどねっ!」


「……キモッ」


 人が乗っかったのにこの女神ふざけやがって……! 結構マジなトーンで言うんじゃねえよ!


「つーかお前も一緒の神なんだから神様って呼び方おかしいだろ。普通に名前で……って、おい?」


「ッ……あれ……た、立てない」


「はぁ……アホみたいな自虐するからだろ。肉体も弱くなってる上に『神力』少なくなってんのに無駄に消費するなよ。体張りすぎたろ」


 いきなりガクリと膝を着いてそう言った彼女の額には小さな汗が浮かび、若干呼吸が乱れていた。肉体の活動に根本的に必要とされる神力の消耗で動けなくなったのだ。

 神力とは神が持つ力で、存在する上で絶対的に必要不可欠なものであり、力の源だ。それがさっきの意味不明な自滅からの回復で消費されてしまっているのだろう。

 本来であればあの程度で動けなくなる事などあり得ないのだが、何分、この世界に強制的に送られた際に保有する神力をごっそり封印されたらしく、消えた体の半分を回復させるなどすれば少ない神力がさらに減り今の結果に繋がるという事など分かる筈だ。


(筈なのになぁ……馬鹿だなぁこいつ……)


「じゃあ俺先に行くから」


「えっ!? 置いて行くんですか!?」


「仕方ないだろ。動けないんだから」


「おぶってください!」


「あ、甘えんな、自分で歩きぇ……歩け」


 噛んじゃったじゃねえか……!!

 くそ、なんなのこいつマジで会ったばかりなのに馴れ馴れしいし距離感近いし上目遣い可愛いし最高だな――って違う違う。せっかくのチャンスだし今のうちに後々お荷物になるであろうこいつから逃げれば……。


 でもペアで過ごせって言われたし下手に逆らったら戻れないかもだし……あぁぁあ!!


「……はあぁ、じゃあここにするか……」

「ここにですか? 確かに人間達の町からもそれなりに近いですし、ちょうどいいかもですね! でも私は何も出来ないので、神様お願いします」

「分かってるよ……ったく」


 この先こいつと過ごすと考えたら眩暈がする。


「はぁ………」


 何度目かも分からない溜息が吐き出される。神力を操り周囲の木を引っこ抜いて仮の家・を組み立てていく。完成までの間、横目で女神の少女を眺めながら、俺はこの下界に落とされた時の事を思い出していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ