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休日の始まり

ちょっと修正しました。

 待ちに待った休日。…ここまで長かった。



 ルーデンス殿下の元での事務仕事は、様子見のせいか大して難しいこともなく、大半が書類文書の清書であった。そして他にすることは、時々皆さんにお茶を淹れるくらいで。こんなにゆったりとした時間を感じる生活なんて初めてかも知れない。

 ああ、お茶の準備は部屋付きの侍女さん達がしてくれるので、彼女たちとのコミュニケーションにも気を配りましたよ。

 女子同士で協力が円滑にとれないと、私のここでの生活はかなり不自由になってしまうので…お茶請けの美味しい高級お菓子が余れば、積極的に「侍女さん達にプレゼントしましょう」と殿下達に声かけをした。私が侍女さんを直接褒めるのではなく、殿下達の前で侍女さん達を褒め称えましたよ。これがポイントです。それでなんとか怪訝(けげん)そうな目で見られるけど、彼女たちから直接的な暴行や嫌がらせはなく済んでいる状態を保っている。


 目下の問題は、ルーデンス殿下に舞踏会や夕刻の謁見などの用事が無いと、殿下は王都治安相談部屋からなかなか帰らないってこと。ロベルト様達殿下のお仲間ならいざ知らず、殿下より先に「お先に!」と帰るわけにも行かず、「帰ってよい」と言われるまではお付き合いしました。そのため何度となく食堂の終わるギリギリに走って行ったことか。髪を振り乱し、ドレスが乱れても、ご飯だけは食べなくちゃね。


 朝は早いし、夕は遅いしで、未だに官舎のご近所さんと全然顔を合わせていない。たまに仕事から早く帰った日は気疲れで寝てしまったし。スーザンさんに用事を頼むくらいしかアーシャとしては話をしていなかった。誰かと日常会話したい…。



 でも今日は休日。

 官舎にいることも考えたけど、私は久しぶりにポニーテイルを結い、ミルクティー色のドレスを身に纏い、王都の街を散策していた。大きく息を吸って、空に向かって両手を伸ばす。


「空は青いし、洗濯もしたし、今日は気分良いわあ。アーシャは元気だぞう!」


 すれ違った親子連れが私を見て、クスクス笑っていた。

 いいもん。

 今の私はアーシャなんだから、誰にも(とが)められないもんね。貴族のアンの仮面はつける必要が無いもんね。

 今日は屋台で何か買って立ち食いもしちゃおうかなあ。お金のあては出来たし。


 私は甘いたれがかかった米粉の団子を買って、石のベンチに座ってガブッとほおばった。


「こういう風に食べるのが、美味しいのよね!」


 口の端からたれがこぼれる前に舌でペロッと舐め取る。危ない危ない。スカートに染みができるところだったわ。

 幸い知り合いも居ないし、ちょっとくらい行儀が悪くてもだれも私を気にしないもんね。美味しく食べるのが一番ってこと。

 食べていると何故か日陰になった。


「おい、おいっ。アーシャだよな。元気か?」

「…んっ?」


 ゴクッと団子の固まりを飲み込んで、声のした方に振り仰げば、、、、、んっ? いつぞや見たお顔がありました。

 何で???


「ディックさんですか? お久しぶりです。」


 目線を上にすれば、タカの目を持つディックさんが黒い警備隊服を身につけ深緑色のマントを羽織り、端正なキラキラバージョンのお姿で目の前に立っている。ヨオッと片手を挙げている姿が周りの注目を集めているんですけど。所々金色が光っていて、良くも悪くも目を引いています。

 そして気さくな仕草なのに目だけは相変わらず鋭い。私に視線が刺さってます。


「なんでここに居るんだ?」

「今日は仕事がお休みなので、ボビルスさんのお兄さんの店に顔を出しに行くとこなんですよ。ディックさんこそ、どうしてここに居るんですか?」

「俺は仕事で王都へ来たんだ。泊まるなら『めんどり亭』が良いって聞いたから向かっているところだ。ちょうど側の衛士第2詰所に知り合いもいるしな。」


 私達はお互いを見て、うんと頷くと同じ方向へ向かって歩き出した。


 背も高く堂々と歩くディックさんは歩いているだけで人目を引いている。チラッと見た婦女子が目線で追っているのがわかる。

(ディックさんて有名人? 目を引く姿しているもんね。こういう人もモテるんだわ。確か隊内で上の方の地位だし。私なんかと噂になっちゃ困るわよね。)

 最初は隣を歩いていた私だがそっと歩くペースを落として、やや後方を歩くようにする。


「…ああ、歩くのが速かったか。」

「…いえ、お気遣いなく…」


「…こっちで合っているよな。」

「合っていますよ。」


 私の気遣いはディックさんには伝わらないようだ。

 結局、私が早足で先導するようにしてめんどり亭の玄関に到着した。

 プライベートまで殿下やロベルト様の話をしたくはないので、私は早々エイダさんを探したのだった。












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