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ちょっと昔のこと 2

おー、指がキーを打つ打つ。

 母から父には奥様と私以外の子供がいるという話は聞いていた。でも所詮3歳の子供の理解力なんてたかが知れている。


 訳の分からないうちに侍女によって私1人でお屋敷内に連れて行かれ、応接間でただ私は固まって立っていた。


 目の前には私を冷ややかに見る赤い髪がフワフワと波打ったキレイな女の人がいる。この方がフローレ様とこのとき知った。フローレ様をかばうような立ち位置に赤みがかった茶色い髪の少年が同じく私を冷ややかに見つめている…ゲランお兄様だった。フローレ様のドレスに隠れるようにしていたのは同じく赤みの強い茶色の髪の幼い少女2人…つり目がキャサリンお姉様で、垂れ目がロザリーお姉様だった。

 父は茶色い髪で、母は明るい金髪、私は金に近い茶色のストレートの髪を持っていた。


 普段子供と呼べる年齢の子と接する機会はなく、遠くから見つめていただけだったので私は3人のお兄様お姉様を興味津々で見ていたことだろう。まして赤毛を近くで見たことも無く、不躾な視線は早々フローレ様の不興をかった。


「立場をわきまえなさい。」


 赤い髪のキレイな女の人が近づいてきたと思ったら、身体が跳んでいた。

 扇子で頬を張り倒されたのだ。

 頬の痛みより驚きの方が勝って、何が何だか解らなかった。

 床をみれば折れた扇子が落ちている。

 視線を床から上げれば赤い髪のキレイな女の人は応接間から出て行くところだった。


 父は私を床から立ち上がらせ、「今出て行ったのが、私の妻のフローレだ。」と言った。女の人を非難することも無く、私の頬の手当をされることもなく。

 この時点でお屋敷での私の立ち位置は決定していた。一番下と。


 お屋敷の1階の端の一部屋が私の部屋となった。そんなに広くはない客間だ。「貴族としての教養」つまり家庭教師の指導は学習室で受けるので、それ以外でお屋敷の中にいるときはここに籠もっている。時間があれば母のいる庭師の作業小屋へ戻るのだが、戻れない時はここにいるしかない。母はお屋敷の厨房以外には入れないし、お屋敷のことは私にはまったく解らないのだから。

 お屋敷で働く者からも下と判断された私の世話をするものなどいない。するときは仕方なくだ。まあ、自分のことは自分でするように普段から母に言われていたから、しばらく貴族のお嬢さんに対する扱いで無いって気が付かなかったんだけど。きっと関わりたくないのだろうな。誰だってフローレ様に睨まれたくないもん。


 家庭教師の指示の元、ふたつきに3週間ほど間隔でお屋敷に滞在する。滞在中は学習以外に貴族としての食事のマナーからダンスまでみっちり仕込まれる。突然お屋敷に呼び出されて、急に小屋へ帰される。お屋敷に滞在していない時は週に3日ほど午前中の半日が学習に費やされた。こんな生活がずっと続いていた。


 お兄様やお姉様方も同様の教養の学習をしていたのかって?

 一緒にしたこともあるし、別々の時もあった。

 それでも私より年上だから何でもうまくできるし、困っていれば兄妹で教え合って課題をこなし、先生に怒られることは少なかったように見えた。幼い頃は協力して私に陰湿な虐めをすることもあった。大きくなるにつれ、無視や召使い扱いへと変わったけど。

 私は先生の指示にがむしゃらに従うしかなかった。先生だけがお屋敷内で私に話しかけて来てくれた。質問に答えてくれた。

 母は「貴族としての教養」を身に付ける機会をくれた父に感謝するようにとよく私に言い聞かせた。

 はいはい、そうですとも庶民だったら到底こんな機会なかったですよ。


 母は庶民として当たり前の暮らし方を私に教えた。


 だからこんな私になっちゃったんですよ。







屈折した乙女になっていってます。自立した娘さんを目指しているはずなのですが…

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