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発見

 侍女が届けたお下がりで無いドレスには驚いた。既製品だけど新品なんて初めて。飾りが何にも無いのには苦笑するしかなかったけど…探すの大変だったろうなあ。ここまでシンプルなドレスって見たこと無いよ。あえて飾りは取ったのかもしれない。

 ドレスの色は薄い茶色。ミルクティー色と言えばいいか。この色もあまり見かけない。


 サウザント家としてはみすぼらしい格好はさせられず、かといって着飾らせるのも嫌。その結果がこのドレスなのだろう。

 フローレ様にしては最大級の譲歩なんだろうな。心中を思うと笑っちゃう。


 自分の身を着飾る物を自分からねだったことが私にはない。

 年頃の娘なのに、清潔で着られれば問題ないってのが信条だ。

 洋品店に通ったり、刺繍関連で流行が何かとか、高級品と汎用品の違いも知っている。だけどあくまで知識であって、自分と関係づけることはない。


「生地がゴワゴワしてない。柔らかい。」


 そんな私でも新品で質のよいドレスは嬉しくて、ギュッと抱きしめてしまった。


 父やお兄様の仕事のお手伝いをするようになって、以前よりお屋敷での私の扱いはマシになってきている。書類仕事が出来るということで一目置かれたようだ。

 それともう10年以上私だってここに暮らしているのだもの、使用人からもキツく当たられることは減って、無視も減った。関わりを持たれないのはむしろ助かる。今更、貴族として強く言いつけることも出来ないし。



 昨晩、私は自室でよーく考えた。

 ランプを遅くまで使って燃料が無くなっても、侍女がなかなか補充してくれない。だから基本私は早寝早起きだ。

 ベッドの中で考える分には部屋は暗くても問題ない。いつもなら色々考えているうちにアッというまに寝てしまっているのだが…さすがにこの晩には無かった。



 私が図書室で見つけた貴族の法律に関する本、そこには私が望んでいた一文が記載されていた。


 ―貴族および平民の間に生まれた庶子は、成人となった時点で、どちらの戸籍に属するかを自ら決定することができる。―


 ―但し、自ら戸籍からの削除を申請し、受理された場合に限る。―


 …ちょっと気になる文も一緒に記載されているけど。それと他の法律と比べてここだけ字が小さいのも、意図的な意思を感じる。あまり知られたくない権利なのかな。

 今まで誰からも自分で貴族か平民か選べるなんて教えられたことはなかった。受理されにくいのかな?


 貴族同士の間に生まれた庶子なら後ろ盾もあるだろうし、何より本人に貴族としての意識が強くあるから、平民になるなんて思いもしないことだろう。たとえ平民との庶子であっても、貴族として扱われていたなら、意識も貴族となっているだろう。


 昔、誰か平民との間に生まれた庶子が平民になろうと頑張って作った法律なのかな?


 貴族としては扱われず、平民としては恵まれている私は中途半端な存在だ。。

 母は私をどうしたかったのだろう?

 貴族にしたかったのだろうか?


 お屋敷での私の様子は良いことしか伝えなかったから、私が貴族らしく暮らしていると信じていたのかな? 信じたかったのかな?

 庭師小屋で母と暮らしているときは、母と同じことをすることが私には誇らしかったのだけど。

 土にまみれることも、手が荒れることも嫌ではなかった。

 平民の気持ちがわかる貴族にしたかったのかもしれないと思う。


 でも…お母様、なんて呼び方しなかったでしょ。母さん、って呼んでいたでしょ。


 昔から別に貴族になりたかった訳じゃ無い。どっちかって言ったら関わりたくない。


 母を守るために父の言うこと聞いて、貴族になろうとした。マネを覚えた。守ることになるとに信じていた。

 その結果があれだもん…



「貴族戸籍から私の戸籍を削除してもらう」

 目標ができた!

 そうとなったら、貴族戸籍からの削除を申請して受理してもらう理由をしっかり作らなくては!


 お屋敷での扱いがあまり良くないのも理由になるのでは?

 そう思えば、よし、もっと私に家族も使用人も再びつらく当たってくれ! ウエルカム!

 父の仕事も秘密にしなくちゃいけないようなことには関わらないようにしなくては…この家から出してもらえなくなってしまう。使えると思われすぎないようにしなくては。


 平民になっても自立して暮らせることも示すと良いよね。

 刺繍の腕をもっと磨くぞ!

 家事、炊事もできたほうが良いよね。厨房の手伝いもするかな。もっと自分で出来ることは何でもするべきかな。


 したいことがどんどん溢れてくる…こんな気持ち初めて。

 今まで、お屋敷の外で暮らしたいとは思っていたけど、具体的にどうしたらいいかわからなかった。だから周りの顔色をうかがって、言うことを聞いているしかないと思っていた。

 言われるがままでいないで、サウザント家の家長である父と交渉しなければ。


 母の言葉がふと浮かぶ。『自分の要求ばかりを押しつけちゃだめよ。聞いてもらいたいなら相手のお願いも聞かなくちゃ。』

『気持ちを伝えたいときは相手の目をちゃんと見て話をするのよ。』


 まずは周りをもっとちゃんと見よう。


 ただ気になるのは、成人してすぐに貴族でなくなることを選ぶと、貴族としての義務である「貴族として王族に従い尽くす」ことが出来ないままになるってこと…代わりに何か要求されるのか? 先に何かするのか?

 私がもっと自由に動ける立場なら、貴族戸籍課に行って直接聞くのに。


 それと心配なのは、成人を待ってどこかに嫁にだされること。

 幸い父の王宮での役人としての仕事は、古美術維持管理係。王家に伝わる絵画や骨董品を定期的に虫干ししたり、補修するのが仕事だ。予算もあまりあてられず、地味だが必要な部署である。

 古美術の目利きとして父は優秀な能力を持っているようだが、大きなお金を扱う部署でもなく、頻繁に王宮に通っているわけでもない。だから積極的に父とのつながりを持とうとする貴族や商人はいない。そのせいもあってゲランお兄様をはじめ、お姉様方にもまだ婚約者はいない。まあ、本人達がより良い人を求めているせいもあると思うけど。


 持参金も期待できず、見目も普通で、貴族として社交界での振る舞いもろくに出来ない私をわざわざサウザント家の血が欲しいがために、嫁にもらおうとする家があるとは思えない。サウザント家が嫁に出すとは思えない。だけど嫁に出される可能性がないわけではない。


 あるいは家庭教師や高位の家に侍女として出される…私にそこまでの力量があるとは思えないし、貴族と平民の庶子って扱いにくいだろうし。


うん、やっぱり、平民になるのが一番いい。何より本人が望んでいるんだから、問題ないでしょ。

思ったほど早く投稿できませんでした。一気に書けなくて文章にまとまりがなくてすみません。

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