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ーーー集め…焦がし…冷やし…落とし…溶し…壊し…増やす


そうやって作った。


時間が無限にあるというのは退屈な事だ。

好きな食べ物でもずっと食べてれば飽きるし、何か新しい事が起きたとしても楽しいのは一瞬。

ああ、また退屈な時間が来てしまう。

何度世界を作っても結局同じことや似たことの繰り返しで結果は同じ。

全てを覚えているのは一人だけ。

ああ…なんて退屈なんだ、何か面白いことは無いか…。

もういっそのこと今までの記憶がなくなってしまえばいいのに。



ーーーーーー





「今日の国会会議で政府は年金の支給開始年齢をーー…。」

ピッ

「先日開催された国際陸上競技大会で大会新記録を塗り替えたコメリカのー…。」

ピッ

「CO2排出量をーー…。」

ピッ

「神は我々に一体何をーー…。」

ピッ



「神様なんているわけないだろ~」

そう呟きながら、水槽のエアレーションが聞こえる部屋でスルメをかじりながらテレビを見てPCで牧場ゲームをしている男がいた。


「やっと鶏の黄金の卵の称号が手に入った!。長かったぁ、もう鶏を増やさなくてすむ。黄金の卵1つの為に普通の卵130億個出荷して黄金の卵が1個しか出ないって、このゲーム表記してる数字と全く違うじゃねーか。」


と遊んでいるゲームの文句を言ってる。




 その男は昔、動物を5つ並べて消していくゲームにはまっていた。

…が、何度やっても対戦で勝てなくてやめた。対戦ものは苦手のようだ。


 その次に男がはまったものは世界を0から自由に作れるテレビゲームだった。

神様になり、宇宙空間、星の地形や生息する生物、操作を手伝わせるキャラ作成、天候操作ができる。

その宇宙で出来たものを自由に集めてコレクションしたりしながら実績を解除する自由度の高いゲームだった。

一般モードクリア後、ファンタジーモードという色々な種族を配置したりできるゲームだった。

 ただ、操作性やその他理由によってゲームに飽きてきた頃、配置できる全てのものを配置して世界をつくってみたが、ゲーム内世界の時間を動かしたらゲームが固まって動かなくなった。それが原因でそのゲームもやめた。


 大学受験でゲームを触らなくなり、受験を終えて男が次にはまったのがネトゲだった。

チャット操作など慣れないこともあったが、だんだんレベルが上がっていくにつれ操作も慣れていった。

戦闘は苦手だったが、チーム内チャットが楽しくてゲームはおまけみたいな感じで遊んでいた。

しかしゲームでレベルが上がるにつれチーム内役職を頼まれるようになり、だんだんゲーム自体も面倒になりそのゲームを引退した。


 その後男は大学卒業し就職してからゲームをする時間は減り、今は日曜の昼間にPCのオフゲーで農場面積を増やしたり、作った農場を見てニヤニヤしている。


「神様よ、もし本当にいるなら次から黄金の卵を10000分の1という表記通りだしてくれ。そしたら神様を信じますよーっと。」


と男は馬鹿にするように言った。


 欲しかったゲーム内実績を手に入れ満足した男は、飲み物を取りにいこうと椅子から立ち上がろうとしたときだった。

息苦しさと胸を突かれるような物凄い痛みが男を襲う。


「…っ!?」


男は胸を抑え顔を歪める。

しかしその苦痛は一瞬で過ぎ去った。


 そして痛みで思わずつむっていた目をひらくと真っ白な空間だった。

何が起こったか分からないまま回りをキョロキョロ見渡す。

…白い…白い。

見渡す限り白くてどこが壁か、どこまでも壁が無いのかわからない。


 回りには俺の部屋にあったものがそのままの配置で置かれている。

壁にかけてあったものなどは全て床に落ちた状態だが、冷蔵庫もPCもベットも、飼っていた金魚の水槽も部屋と同じ位置で、全部俺の部屋にあったものだ。

さっきまで電源の付いていた電化製品は全て動いておらず、その白い空間は無音だった。


 とりあえずベットの上においてある携帯を取ってみるが電源すら付かない。

何かのドッキリか、夢か、天国か。

これがドッキリなら、どこかにカメラが仕掛けてあるか誰かが覗き見てるしてるはずだが、ドッキリを仕掛けられる覚えも、仕掛けそうな知り合いも思い当たらない。これが夢なら時間が経てば目が覚めて元の部屋に戻れるはず。

とりあえず手っ取り早く夢かどうか確かめるために頬を少し強めに抓ってみる………ギュッ。


「痛いっ」


強めに抓ったのもあって痛い、夢じゃないのか。


「あの〜、誰かいますか?…すいませーん、誰かいませんか?」


声を出してみるが反応はない。


 こんな時は動かないほうがいいだろう、映画や漫画では動くと変な事に巻き込まれる。

こういう時こそ一回無理矢理にでも寝てしまうのが正解だ。

目が覚めたときこの真っ白な世界は何かの間違い、やっぱり夢だった、そう思えるに違いない、きっとそうだ。

そう考えた男はスムーズな動きでベットに入って目を閉じる。

なかなか寝れないが布団を頭まで被り体を横向きに無理矢理寝た。


――どれくらい経っただろうか、布団の中で目が覚めた。

被った布団をどかすがやっぱり白い。


「…。あぁ…夢じゃないのか。一体何処なんだここは。」


せめて何処か分かるものは無いのか、目印でも看板でもドッキリの看板を持った友人でもいい。


「うおおおおおおお」

「ハッー!、給料上げろ!、どら○もーん!、美人なお姉さん助けて!、誰かー!」


 声を出し思いっきり走ってみたり、転がったり、普段声に出さないような言葉を変なポーズを付けながら叫ぶがとくに変わりはなかっ…


「ん?」


 男の目の前の白い床がボコボコと水が湧くように盛り上がり、人の形のになったかと思えば女性の姿になり、色もついていった。

そして現れた女性は目を開くとこう言った。


「ああ様ここにいたのですか?新しく世界を作り直してから急に何処かへフラリと行ってしまわれて、心配していましたよ?」

「?」


何の事だか分からないのと突然現れた綺麗な女性に理解が追いつかない。


「あ、あの、あなたは誰でここは何処なんですか?ああ様って誰です?」

「?」


 女性が不思議そうにこちらを見てくすっ笑いながら言った。


「もう、ああ様は冗談がお上手ね」

「…え?」

「…?」


女性は少し首を傾げた。


「本当に私が誰か分からないんです?」

「はい、すいません。」

「…本当に?」

「…はい。」

「何十億年も一緒にいた事を忘れてしまったの?」

「…は?」


何十億年?一体何の事だ?この子は俺を誰と勘違いしてるんだ。


「あの何十億年とかよく分からないんだけど、何かのドッキリ?」

「ふふっ」


 女性はまた笑うと俺の胸の当たりに軽く手を当てトンッと軽く後ろに押した。

落ちていく感覚と同時に、次の瞬間そこは真っ白い世界からどこかの宮殿の中の廊下ような所に変わった。

 男の目の前には大きな扉があった。

その扉は男が一歩近づくと同時にゆっくり開いた。


「ーーーああ様、今度の散歩はずいぶん長かったのですね。」

開いた扉の中からそう声がした。


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