7話 覇道への道
少し間が空きました、申し訳ありません。
島より戻った一行を待っていた者がいた。
義母の兄で先日家督を継ぎ里の当主となった兄であった。
「兄者、どうしてここに?」
弟が不思議そうな顔をして質問する。
「ここの主人より急ぎの文をもらったのだ、我が一族の娘のことをな。」
そう言って若君と手をつないでいる娘の方に向かい恭しく頭をたれる兄であった。
「若君、お元気そうで何よりです、そしてそなたが・・・うんあの者と面差しが良く似ておるわ。」
そういって彼はにっこり笑うのであった。
★
「この娘の父とは幼馴染でな、子供の頃はよく野山を駆け回ったものだ。」
部屋に落ち着いた一行と兄は娘の父親の思い出話を聞いていた。
娘はもはや見ることも言葉を交わすことも無い父の話を身を乗り出すように聞いている。
「彼が帰ってこなかったときは信じられなかった、間違いだとおもっておった。」
「じゃがあやつはそなたを残しておったのだな、後のことは任せよ、
わしがそなたの父親になろうぞ。」
「私は母となると言いましたゆえそなたには両親が揃いましたな。」
義母が明るく言うと、娘は目を見開いて「ありがとうございます。」といって微笑んだ。
そして、若君の旅の話や参拝の話などをして、若君の決意を聞かされた兄は言う。
「若君、天下を狙うは覇道の道を歩むと言う事です、それにはそのようなお覚悟が必要ですぞ。」
兄の顔は真剣味を帯びていた。
「覇道を突き進めばその道行きは悪逆非道への道をまっしぐらでござろう、
後世の者達は決して若君のことを良くは思わないであろう、
その事を気にするならばその道を進むのは諦めなされ。」
「私は、そのような事は気にしません、皆々が悲しむことがないように、
皆が笑顔で暮らせる世の中にしたいだけです、
そのために私は悪名を受けようと気にはしません。」
「貴方様ばかりか貴方様の子々孫々までも同じような謗りを受ける事になりますぞ。」
「では、その事は子供やその子らに宛てて文でも書きます、我が家の事を良く思うものはおらぬと。」
そう言って若君は笑う。
「そこまで言われましてはこの身を粉にしても若君の願いかなえぬわけにはいくまいな。」
兄は傍の義母や弟に頷いてみせる。
「我ら一族は異能の技を持つゆえ{鬼}とも呼ばれるが、その力今こそ振るうべき時であるな。」
「兄上・・・」
弟は兄の発言に感極まったようである。
そして義母は・・・
「兄上ならばそうおっしゃってくださると思いました、我が一族がこの地に来たのも
今この日のためであったのかと思っております、必ずや若君の願いかなえまする。」
その言葉を聞いた若君は皆々に頭を垂れるのであった。
★
「では、某は里に戻るがそなたたちはどうするのかの?」
兄の問いに義母は答える。
「ここまで来たついでです、{西の京}と大陸との商いをする港町を見てこようかと。」
「うむ、若君の為にもなろう、確りと護るのじゃぞ。」
弟に目線を向けて言うと彼もすかさず答える。
「護ってみせる、心配は無用ですぞ。」
「期待しておるよ。」
兄はにっこり笑うと義母に向き直り言葉をかける。
「若君に我が一族に伝わる話をしてやって欲しい、覇道を進むには必要だろうからな。」
「承知しました。」
そう言って兄は立ち上がり若君に声をかける。
「某はこれより我が殿に従って京に向わねばなりませぬ、
若君も元服まで幾年かござろうがその間見聞を広げ、
覇道に向うための準備をなされませ、
元服を機に始めましょうぞ、{天下への道}を。」
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