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22話 新たなる試練

12月9日修正

蓋を開けてみれば大勝利を得た若殿の名前は周囲の領主たちはもちろん都にまで知られる事となった。


そして隣国の{7州の太守}の耳にも当然入る事になる。


「面白き奴が現れたものよ、あの守護は我を裏切った憎き奴、それを打ち破るとは頼もしき者ではないか、恩賞を取らせようではないか」


「はっ、ですがかの者は当主ではなく後見人に過ぎぬようですが」


「なんと、それでは宝の持ち腐れではないか、いっそ当主に擁立するか」


 その様な会話を重臣たちと繰り広げているのを末席で伺っていた守護代の御曹司はかつて友として友誼を結んだ彼が認められたのを嬉しく思いながらも(これからが大変になるだろうな。)と心配するのであった、彼らが再会するのはまだ暫く時が経たねばならぬであろう。



北の国の守護の耳にも当然若殿の話は届いていた。


「面白いな、奴を使えばあの家を割り、付け入る事が出来そうじゃな」


「なるほど、では早速その様に」


「うまく奴のみ取り込めれば我が家の利となるからのう」


そして彼らの企みは意外な所で若殿を追い詰めていくのであった。



あの戦いから一年が経た、若殿には又平和な日々が戻ってきていた。そして慶び事もあった、彼の奥方が懐妊し子を生したのである。女の子であったが彼は非常に喜び家族の増えた城はにぎやかになっていく、だがそこに不吉な影が近寄って来たのであった。


「ご隠居殿が討ち死にしたと?」


「落とした城で首実検していた所に潜んでいた敵の一団が切り込んで呆気なく討たれたそうだ」


「何ということだ、これではこの地の均衡が崩れる事になりかねん」


その為近隣の有力な領主たちが集まって会合が開かれる事となった、若殿も後見人として当主の代わりに出席した。



「我等としては、今後も守護家の報復があると考える、その時には今回以上の合力が必要じゃ、だが今のままでは不安が残る」


{鬼殿}家からの提案は各家の縁組をさらに強くして連携を取るというものであった。


「然り、それが良いと思われますな」


 ご隠居殿を失った家の当主はうなずき同意した、彼の領地は{北の守護}の領地に近い、それが脅威なのであろう。


「貴殿の当主に我が家の姫を娶わせるのはどうであろうか?」


その言葉に若殿はうなずきながら答える。


「それは良い話なのですが未だ元服もしておりませぬからな、直にとはいきませんな」


「我が家の姫も同じじゃからな、これは婚約という事でよかろう」


「では帰って諮りましょう」


「よろしく頼みますぞ」


「そして我が家との縁を深めるため後見人殿の娘を我が子に娶わせたい」


「それは……去年生まれたばかりゆえ、いくら何でも早すぎでしょう」


「もちろん婚約と言うことでよいのじゃ、その事実のみで周りの領主たちも我らの結束の固さを知るであろう」


この縁組が発表されると3家の結束は広まりまわりの領主たちも一目置くようになった。



ここで意外な事が起こる事になる、奸雄たる{北の守護}が動いたのだ、あくまでも自分に従わぬ隣国の領主たちへの制裁であったがその威容はご隠居殿を無くした彼の家の当主を狼狽させるには十分であった、ところがである{北の守護}は懇ろな使者を当主に遣し亡きご隠居殿の事を称え誼を結びたいという意思を伝えてきた。

現当主の妻が病没したので後添えに自分の弟の娘を自分の養女にして送り出すという者である。

そこに溺れる者が藁でも掴みたくなるという心理は十分同情できることである、だがそれは強固であるはずの盟約が変質する事となるのであった。

{鬼殿}の家も{北の守護家}に娘を娶わせており十分に近いのである三つの家の内2つまで取り込まれてしまえば抗するのは難しい、後見人たる若殿は{北の守護}の招きに応じなくてはならなかった。


「そなたがあの豪傑守護を討った男か、都までその偉業が伝わっておる中々の大将ぶりじゃの」


「運も味方しておりました、出来すぎであると思います」


「謙遜はいらぬぞ、そのそなたが一介の後見人とは惜しいのう、わしのところに来れば一軍を指揮する将に取り立てるのであるが」


「過分な評価驚いております」


内心では舌打ちをしたい気分であった、この誘いに乗れば、いや乗らなくても確実に言えるのは本家との関係が悪化するというのであった。


若殿はうまく言を左右にしてはぐらかすのであった。



 若殿が去った後北の守護と{鬼殿}が二人で語り合う、話はもちろん若殿のことである。

 

「なるほどのう、彼の者は実にすばらしい資質を持って居るな」


「本気で欲しいのですな」


{鬼殿}の問いにうなずく北の守護はふと思い出したかのように問うた。


「そういえ孫娘殿は残念な事をしたの」


「実に、ですがこれも戦国の世の定めかと」


かつて若殿と出会ったことのある彼女は北の守護の有力家臣の家に嫁ぐ事になっていたのだが、その相手がなんと戦で呆気なく亡くなってしまったのだ。


「うむ、では新しい縁を結んでみるか?」


「どこかお心当たりでもありますかな?」


「先ほどのものではどうかな?」


「確かにそれは良縁ですが、確か隠居殿の家から奥方を貰っているのでは?」


「それがの、実に都合が良い事にの……」


二人の密談は暫く続いた。


ここまで読んでいただいて有難うございます

誤字・脱字などありましたらお知らせください

感想や評価をしていただいて感謝しております

よろしくお願いします

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