20話 初陣
知らせを受けて若殿は直ちに命令を下す。
「出陣の用意を直ちにさせよ、後本城にこの旨伝え援軍を頼むのだ。」
「承知しました。」
家臣たちがそれぞれの方向に動き出す、
そして若殿は戦に出向く支度をするのであった。
☆
その頃猛将の部隊はすでに若殿の領地に攻め込み
田畑を荒らし、民家に火をかけたりした。
「ははははは、守護に逆らう者たちめ、怯え恐れるが良い!」
高笑いする猛将とその部下たちは意気揚々と引き上げていった。
若殿の部隊がついたときにはすでに姿はなかったが、
義母の里の者たちが密かに監視していたため、
その足取りはすぐにわかった、彼らは引き上げる途中で
本隊には合流せずに単独で陣を張っており、
その数は数百名だという。
「直ちに進みこれを討つ。」
若殿の言葉に家臣たちは慌てて止めに入る。
「こちらは百五十人というところです、敵いませんぞ。」
「今が好機なのだ、本隊と離れているのを各個に叩くのは
兵法にもかなっていることなのだ。」
そう言って進撃を開始するのであった。
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「なに?出てきただと、よほど死にたいとみえるな、望み通りに
させてくれるわ。」
正面から迫る若殿の部隊に悠然と迎え撃とうとする猛将で
あったのだが、その目論見は直後に崩れてしまう。
「左翼に旗印が見えます、あれは{鬼}の軍勢です!」
「右翼は・・・本城からの援軍です!」
三方から攻められて混乱する陣形に猛将は叱咤激励する。
「落ち着かんか!多くても我らと同数、ならば我らの勝ちとなる。」
そう叫んでいたその時である。
どこからかヒョォウと射られた矢が猛将を襲う。
「ぐゎっ!」 「殿!」
主の叫びに家臣が声を掛けるも。
「猛将殿を討ち取ったり!」
すかさず駆け込んだ武将に呆気なく猛将は討たれてしまうのであった。
☆
「今なんと言った?」
守護は使番が知らせてきた猛将討たれるとの知らせに呆然としていた。
「してその後は?」
守護の周りの武将が使番にたずねると。
「将を討たれた軍勢は散々に打ち破られ多くの配下が討たれました、
残る兵は領地に逃げ帰ったようです。」
「おのれぇ!」
守護は手にしていた酒盃を叩きつけて叫んだ。
「弔い合戦を行う、亡き猛将の墓前に奴ばらの首を並べてくれるわ!」
そして本隊を若殿の領地に向かう準備を始めた。
☆
「うまく策が効きましたな。」
若殿と二人きりになった時義母の弟が賞賛すると、
若殿は手を振りながら答える。
「猛将殿にもう少し落ち着いた目で見ることが出来れば右翼の勢は
旗印のみの偽勢であることが判ったろう。」
「見抜けなかったのが策が旨く行ったという事ですもっと功を誇りなされ、
初陣にて敵の一軍の将を討つ采配をしたのですから。」
「そうか、だが次はそうは行かんぞ、あの守護殿の事だ、
激怒して今頃総勢を繰り出そうとして居るだろうよ。」
「ならば此度もご苦労ですが策を立てて討ち取りたいものですな。」
簡単に言ってのける彼に苦笑する若殿であった。
こうして決戦の時は近づいて行く、本城からの援軍を待ちながら
若殿は策を立てていくのであった。
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