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16話  正体

だいぶ間が開いてしまいました

構想としてはもう少し書いて完結ということになります。

づづきは名前を出した物になる予定です。


 いきなりのことで動揺する若殿だったが、すぐに落ち着いて状況を整理し始める。


(又一緒に?以前一緒にいたことがあるのか?)


彼は今までの記憶をなぞっていくがどうもそのような記憶はなかった。


不思議に思った若殿は抱きついてきている彼女を少し離してお互いを

見詰め合った。


(知らない顔・・・いや見たことがある、私はこの娘を知っている!)


徐々に思い出される記憶、そしてついに目当ての人物の名前を思い出した。


「そうか・・・そうだったのか」


「思い出していただけましたか?」


若殿のつぶやきに彼女が震える声で返す、流れる雫が頬を伝った。


「ああ、思い出したよ、・・・だけど驚いた。」


「すみません、お手紙でもと思ったのですが、お義母様から秘密にするようにと。」


(やはりな、義母上のやりそうな。)


「そうだったのか、しばらく会えなかったのもそのためだったのだな。」


「はい、御分家に行って色々と教えてもらっておりました。」


そうして二人はお互いのことを話していた。


「顔を見せずに手紙だけだったのは修行していたのか。」


「御分家に行くまでは御当主様に修行をつけていただきました。」


里の修行を受けて今では一人前のお墨付きを得たとうれしそうに

話す彼女に若殿は内心驚いていた。


(あの時から今日までどれだけ修行したんだ?)


若殿も今では義母の実家の異能ぶりは認識している、

その恐るべき実力も。


だがそれには触れず彼の次の言葉は。


「そうだったのか、よくがんばったな。」

という労りのことばであった。


彼女は頬を赤らめすこしもじもじしながら言う。


「あ、ありがとうございます、ですがこれも勤めのため、

お気になさらずに・・・そ、それより・・・」


「?」


「今は勤めを、あなた様の奥方としての勤めを果たさねば・・・」


「あ、ああ。」


つまりは婚礼の仕上げというべき初夜を迎えなくてはならないということだ。


「そうであったな、修行がとうであれ今はわが奥、そのための勤めをせねばな。」


そう言うと彼は彼女の方に手を伸ばしそっと抱き寄せる。


彼女も抗うことなく身を任せて・・・


婚礼の賑わいも収まり静かな夜が更けていくのであった。





その頃遠く離れた京ではある話し合いが行われていた。


「よいか、そなたの役目はあの国の静謐にある、くれぐれも忘れぬようにな。」


「はっ!心得てございます、必ずやあの奸雄の策を打ち破って見せます。」


その言葉に京での戦を勝利し政権を獲得した

{7州の守護}は満足げにうなずいてみせた、

彼はこれに先立って京の貴族の娘を養女として目の前にいる

若殿たちの住む国の守護に娶わせていた。


そのためにすぐに方がつくであろうと安堵していたのだ。


そばに控える若殿の兄の当主を含めてその国の領主たちも同じ思いであったが

結果的には完全に裏目となるのであった。




そして帰国した守護は妻を離縁するとこともあろうに奸雄と呼ばれた

北の国の守護の家より妻を迎えたのであった。


そして北の守護と呼応するように自分の勢力拡大のために動き出すのであった。



ここまで読んでいただいて有難うございます。

誤字・脱字などありましたらお知らせください。

感想や評価などあれば今後の励みになります

よろしくお願いします。

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