チャック的~新説桃太郎~
あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。
爺「ばあさん、俺はそろそろ山に行って来る」
婆「ああ、分かった。なら、俺が川で洗濯をしておこう」
爺「………頑張れよ」
婆「………何が流れて来るんだろうな…」
こうして、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ桃をひろ………洗濯に行きました。
???「うわぁ!?何この桃、水がしみ込んでくる!?ボクのボディが濡れちゃうよっ!!」
おばあさんが川で洗濯をしていると、“どんぶらこっこ~、どんぶらこっこ~”と可笑しな桃が流れて来ました。
どうやら、しゃべる桃のようです。
婆「……………アレ、か……」
桃「ちょっとっ!!さっさと助けてよ!」
婆「拾わないといけないんだよな。…交番とかに届けちゃダメか?」
おばあさんは、その可笑し………美味しそうな桃をおじいさんと一緒に食べようと、家に持って帰りました。
意外と力持ちのようです。…いえ、別に意外ではありませんでしたね。
婆「レイ…じいさん、桃を拾ってしまったみたいだ………」
爺「ソレ、桃なのか?…何か、足出てるぞ」
婆「…たぶん、桃が水に濡れて破けたんだろう。コストが削減されてるのかもな」
爺「そこはコスト削減しねえ方が良かったんじゃないか?一応、桃が主役だろ?」
婆「中身が大事なんだろう…」
桃「もうっ!!終わったことはどうでも良いから、話進めてよ!」
爺「…せっかく、ばあさんが持って帰ってくれたことだし、斬るか」
婆「斬るのか?………中身、大丈夫なのか?」
桃「ええっ!?…普通、桃を切るときは包丁でしょ!そんな物騒なモノはやめてよっ!!」
おじいさんがその桃を食べようと包丁で切り分けると、中からヌイグルミのように愛らしい男の子が出て来ました。
中身は無事だったようです。おじいさんの腕前に拍手!
桃「………こ、怖かった…」
爺「おお、中から子どもが出て来るとは。…ばあさん、この子に名前を付けてやろう」
婆「えっ、ここで付けるのか?…こんな話で付けても良いのか?」
桃「ちょ、ちょっとっ!!何の話してるのさ!正式名称のことじゃないよ!や・く・め・い!!!」
婆「ああ、そうか。じゃあ、桃太郎で」
桃太郎「安直過ぎる!!」
婆「なら、着ぐるみ丸は?」
爺「いや、ここはハム吉とかの方が良いと思うぞ」
婆「む、なかなか良い名前だ。…二人の間を取って、桃ハム丸でどうだ?」
爺「ああ、それは良い名だな。…何というか、美味そうだ」
桃太郎「ボク、桃太郎!」
桃ハ………桃太郎はおじいさんとおばあさんに大切に育てられ、すくすくと成長しました。
ある日、大きくなった桃太郎がおじいさんとおばあさんに言いました。
桃太郎「え、これ、ホントに言うの?」
爺「………。ああ、桃太郎は鬼退治に行ってしまうのか。達者でな」
桃太郎「ボク、まだ何も言ってないよ!?」
婆「………生命は大事にな」
桃太郎「ヤダヤダ!!ボク、鬼退治になんか行きたくない!」
おじいさんとおばあさんは、決意の固い桃太郎を涙を呑んで見送りました。
桃太郎「…はぁ、こんな団子なんていらないよ…」
桃太郎の腰には、おばあさんお手製のきび団子がついています。
その美味しそうな匂いを嗅ぎつけて、1匹の犬が現れました。
犬「も~もたろさん、ももたろさん♪」
桃太郎「こんな団子、欲しいの?」
犬「ええっ!?何で分かったんですか!?」
桃太郎「その歌有名だし」
犬「着ぐるみ界にまで広まってるとは、さすがです!」
桃太郎「何の話!?」
犬「きび団子ください」
桃太郎「いきなり!?」
犬「おこしにつけた~、きび…」
桃太郎「もういいよっ!!」
桃太郎からきび団子を貰った犬は、鬼退治について行くことにしました。
次に現れたのは猿です。
………随分と凶悪な面構えをしていますが、桃太郎は大丈夫でしょうか?
猿「……………。おい、さっさと鬼退治とやらに行くぞ」
桃太郎「何の脈略もナシ!?」
犬「犬猿の仲って言いますし、仲が悪い設定なんでしょうか…」
桃太郎「ヤメテ!!そんなこと言ったら、キミ死んじゃうよっ!!」
猿「くだらん話をしているとお前から叩き斬るぞ、このハリボテが」
桃太郎「………ハイ」
犬「さあ、鬼退治に行きましょう!」
ああっ、おばあさん印のきび団子の威力は絶大のようです!
猿も団子欲しさに、鬼退治に加わりました。
3人――1体と2人…いえ、1人と2匹ですね――が歩いてると、雉が現れました。
雉「さあ、桃ハム丸様?私マリアンナに、きび団子を渡して頂きましょう」
桃太郎「どこの山賊!?……ハムって…キミ、いつから見てたの?」
雉「ふふっ、それは企業秘密です」
桃太郎「ソレ、絶対ブラック企業だっ!!」
雉「きび団子を渡して頂けますか?」
犬「はいっ!これです!」
桃太郎「ちょ、ちょっとー!勝手に…」
雉「あら、スズメ様。お久しぶりですね」
犬「ご無沙汰してます」
桃太郎「………え、ボク無視された?」
雉「では、皆様。鬼退治へと参りましょう!」
犬「レッツ、ゴー!!」
桃太郎「…………ボク、帰っても良いかな」
雉も、きび団子の魅力には抗えなかったようです。
………何という威力!一体、おばあさんは団子にナニを入れたのか!?
こうして、厳しい旅を乗り越え、桃太郎一行はようやく鬼が島に辿り着きました。
桃太郎「退治に来たよ!…え、鬼って相棒なの?」
鬼の大将「はい、残念ながら」
桃太郎「………ど、どうしよう。ボク、相棒を退治したりできないよ…」
猿「会いたかったぞ、ハルカ」
鬼の大将「ところで、退治ってどういうことですか?
一体、罪状は何なんです………まさか、アレの所為ですか」
鬼1「ああっ!!!女神様、神獣様!!!!!」
鬼3「確実に、コレの所為でしょう」
桃太郎「……っ!!変態、怖いよーっ!こっち来ないでぇ!!」
雉「では、この“おじいさん印”のきび団子で退治しましょう」
桃太郎「何それ!?ボク、聞いてないよ!?」
鬼の大将「どうでも良いので、早くそこの変態を退治してください」
猿「任せておけ。消し炭にしてやろう!」
鬼1「ああっ!!!女神様!神獣様!!」
雉「えいっ!」
雉が、謎の“おじいさん印”のきび団子を鬼1へと投げつけました。
なんと、きび団子の中にはおじいさんからの手紙が入っていました!
『鬼1へ。他人に迷惑を掛けるな。あと、黙れ』
鬼1「………………」
桃太郎「わあ、変態が止まった!!スゴイ、効果は抜群だね!」
雉「ふふっ、私に掛かればこんなものです」
犬「さすがです!…でも、他の3人はどうするんですか?」
鬼2「ア、アレン!?くっ、アレンの仇は私が………」
猿「煩い」
鬼2「ぐはあぁぁ。そ、そんな、ようやく出られたのに……」
鬼3「大将、これからどうしますか?…とりあえず、和解した方が良いのではないでしょうか」
鬼の大将「宰相サマ、最終形態とかないんですか?」
犬「ええっ!?そんなことできるんですか!?」
鬼3「……ご期待に添えず、申し訳ありませんが………私には無理です」
鬼の大将「………はぁ。仕方ありません、今日はこのくらいにしておいてあげましょう!
さあ、私達は負けを認めたのですから、そこの魔王と変態を持ってさっさと帰ってください」
鬼1「………っ!?…………………」
桃太郎「“おじいさん印”のきび団子、強過ぎるでしょ!」
猿「と、いうことだ。その変態と俺の役を入れ替えておけ」
桃太郎「え、何が??何の話??」
犬「じゃあ、私も鬼2さんと入れ替わりたいです!」
雉「あら、楽しそうですね。では私も、鬼3になりましょう」
犬「あ、あの。えっと…私は鬼4になるので、マリアンナさんは鬼2さんと入れ替わってください」
雉「ふふっ、そんなに焦らなくとも、冗談ですよ。
私には鬼なんて務まりませんから」
桃太郎「誰よりも鬼らしい人が何言ってるのさ!」
雉「…もうそろそろ、“おじいさん印”のきび団子の効果が切れてしまいそうですね。
頑張って逃げ切ってください、桃ハム丸様」
桃ハム丸「え、時間制限あるの?コレ?…ボク、もう帰る!!」
鬼1「………私も神獣様について行きます」
桃ハム丸「えええぇぇー、ヤダー!おじいさーん、助けて!!」
こうして、桃太郎…いえ、もう桃ハム丸で良いですね。
桃ハム丸のおかげで、鬼は退治され、皆幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
キャストロール
桃太郎:着ぐるみ
おじいさん:レイナルド
おばあさん:ヨシュア
犬:スズメ
猿:ジークフリート
雉:マリアンナ
鬼の大将:ハルカ
鬼1:アレン
鬼2:レオンハルト
鬼3:ギルバート