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チャック的~新説白雪姫~

 あるところに、魔法の鏡を持っている王妃様がいました。


王妃「あー、鏡?……美人の名を教えてくれ」


鏡「はあ?それを聞いてどうするつもりだ。………ハルカに手を出す気なら、殺すぞ」


王妃「“美人”つったのに何で限定されてんだ……。俺は一応結婚してる役だからな、ヨシュア殿と」


鏡「………………そうなのか。まあ、そういう趣味なら安心だ。ヨシュアと幸せにな」


王妃「おい、何か勘違いしてるだろ。……この話の趣旨、理解してるか?」


鏡「いや、踏み込んだことを聞いたようだな。………お前達は“お似合い”だと思うぞ?

  あの年増………“白雪”が邪魔なんだろう?さっさと殺してしまえば良い」


王妃「話飛ばし過ぎじゃねえか?しかも、アンタの方が悪役臭いぞ。

   ………ま、別に良いか。そういう訳だから、白雪姫にはいなくなってもらおう」


 鏡に唆されて、王妃様は白雪姫を殺してしまうことにしました。



   ☆☆☆



王妃「お嬢さんには、非常に言いにくいんだが………」


狩人「分かってます!白雪姫を森に連れて行って、殺したフリをするんですよね?」


王妃「………それは俺に言っちゃダメなことだと思うぞ」


狩人「あ、すみません。ここはカットしてください」


王妃「………白雪姫のことは頼んだぞ」


狩人「任せてください!」


王妃「………………………」


 狩人は渋々、白雪姫を森に連れて行きました。



   ☆☆☆



白雪姫「あら、狩人様。どこまで行かれるんです?」


狩人「えっと、小人の家の近くです。そこに着いたら私は城に戻って、王妃様に“殺しましたよ~”って言うだけですから」


白雪姫「ありがとうございます、親切な狩人様。

    ふぅ、しかし私が美し過ぎるばかりに………こんなことになるなんて、悲しいですわ」


狩人「美し過ぎるのも罪ってやつですね。…マリアンナさんは美人で優しいから、白雪姫にピッタリですよ!」


白雪姫「まあ、そんなに褒められると照れてしまいます。

    …王妃様も、早くアノ“悪しき鏡”を壊してしまわれたらよろしいのに」


狩人「そう言うと、王妃様が鏡さんに操られてるみたいです。……さすが新説白雪姫、新しいですね。

   あ、ここの道をまっすぐ行くと小人の家ですよ。主役、頑張ってください!」


白雪姫「はい、精一杯頑張らせて頂きますわ。“主役”ですし。

    狩人様、ここまでありがとうございました」


 狩人は森の中に白雪姫を置き去りにして帰って行きました。




『コン、コン』


 白雪姫は森の中にあった家の扉をノックしましたが、何の反応もありません。


白雪姫「あら、留守のようですね。では、先に家の中で待たせて頂きましょう」


 白雪姫は勝手に家の中に入って行きました。




 白雪姫が家の中でお茶を飲みながら寛いでいたら、小人達が帰ってきました。


小人7「ハイホー、ハイホー♪」


小人5「“抜け作”、その歌は何ですか?」


小人7「“照れ助”さん、知らないんですか?

    スズメちゃんに聞いたんですけど、“小人と言えばこの歌!”だそうです」


小人3「スズメがそう言うのなら、そうなのでしょう。私も歌った方が良いでしょうか?」


小人1「じゃあ、皆で歌おうよ!!その方がきっと小人っぽいよね!」


小人4「眠いです…」


小人2「女神様。眠いのでしたら、すぐにお休みください。

    このアレンが、あなた様を“悪しき鏡”からお守りしましょう!」


小人6「“怒りんぼ”、王妃様に怒られますよ?」


小人2「………大神官さ…」


小人6「私は“くしゃみ”らしいです。……くしゃみをしてみましょうか?」


小人1「別にしなくて良いと思うよ。……早くボクらの家に入ろう!」


 小人達は家の中に入って行きます。


白雪姫「おかえりなさい」


小人7「お、美人発見!オレ達の家に何かご用ですか?」


白雪姫「はい。実は、私の美しさに嫉妬した王妃様に命を狙われているのです。

    しかし、王妃様は悪くありません。“悪しき鏡”が王妃様を唆したのです!」


小人7「うわ~、大変ですね。…じゃあ、その“悪しき鏡”はオレが壊しに行ってきますよ!」


小人1「話、変わっちゃうから!………え、キミが白雪姫なの?」


白雪姫「えっ、私以外に“白雪姫”はいませんよ」


小人1「何その図々しさ!?………キミより相棒…“ねぼすけ”の方が似合ってるよ!!」


白雪姫「ああ、確かに“居眠り”の仕方は堂に入っていますね。

    …彼女、さっきからずっと寝ているようですよ」


小人1「えっ!?ちょ、相棒!?」


小人4「ぐぅ……」


小人2「“先生”様、少しお静かに。“ねぼすけ”様が起きてしまわれます」


小人1「ご、ごめん」


小人3「………………。驚くほど話が進みませんね」


小人5「白雪殿、これからどうされるおつもりですか?」


白雪姫「私はここで“三食昼寝付きの生活”をしていれば良いらしいです」


小人1「何それ、どこ情報!?」


小人2「“先生”様、お静かに」


小人1「何でボクだけ……。うぅ……っ」


小人6「くしゅん?……ヘックション?」


小人7「“くしゃみ”様、さっきからずーっとくしゃみの練習してますね」


小人6「いざするとなると、なかなかできないものですね」


小人7「この家、別に埃っぽかったりしませんしねー」


小人3「………………全員、少し黙って頂けますか」


小人5「では、王妃殿がこちらに来るまで待っていましょうか」


 イロイロありましたが、白雪姫は小人達の家でお世話になることになりました。



   ☆☆☆



 その頃、狩人から報告を受けた王妃様は再び魔法の鏡に尋ねました。


王妃「………鏡、白雪姫は生きてるのか?」


鏡「俺に聞くな。………チッ、あの年増、なぜ死んでないんだ」


王妃「俺に言われてもな……。はぁ、じゃあ次は毒林檎でも持って行こう」


鏡「あの女が毒のようなものだろうが。

  そんなモノ使わず、叩き斬れ。何なら俺が殺ってやろう」


王妃「アンタら、何でそんなに仲悪いんだ?………とりあえず、俺が行って来る。そういう役だしな」


 王妃様は毒林檎を持って、白雪姫のいる森へ向かいました。




『コン、コン』


 王妃様が小人の家の扉をノックすると、中から白雪姫が出て来ました。


白雪姫「どちら様ですか?」


王妃「お嬢さん、林檎はいらないか?」


白雪姫「…いきなりですね。申し訳ありませんが、父の遺言で“知らない方から食べ物を貰ってはいけない”と言われているので。ご遠慮させてもらいます」


王妃「お嬢さんの父親は生きてるだろ。……ヨシュア殿が可哀想だから、そういうことは言ってやるな」


白雪姫「遺言は祖父のものだったかもしれません」


王妃「………誰の遺言でも良いが、これは食べてくれ。話が進まん」


白雪姫「仕方ありませんね。

    ………うっ、王妃様が塗られた毒の所為で、気持ち悪くなってしまいました。

    もう、ダメです。私、美しくて可憐な姫君ですから」


 なんと、白雪姫は倒れてしまいました。


王妃「えらく説明口調な倒れ方だったな……。まあ、これで俺の出番は終わりだろ。帰るか」


 白雪姫を毒殺した王妃様は城に戻って行きます。



   ☆☆☆



 しばらくすると、出かけていた小人達が家に帰って来ました。


小人1「あっ!!白雪が倒れてる!?………今のうちに埋めちゃおうか?」


小人2「しん…“先生”様がそう仰るなら、私が!」


小人3「止めてください。……もう佳境なんですから」


小人5「では、ガラスの棺に入れましょうか」


小人7「オレらって、周りで泣いてりゃ良いんですよね?……いやー、美人の死は辛い」


小人6「ヘックション」


小人4「くしゃみ、上手くなりましたね」


小人6「ありがとうございます。この齢になって新しいことに挑戦することになるとは……」


小人4「チャレンジすることって大切ですよね。………ふあぁ、眠い」


小人1「あっ!誰か来た!!」


 小人達が悲しみに暮れていると、そこに王子様がやって来ました。


王子「あっれーっ!?皆、どうしたの?」


従者「………皆、小さくなっていて可愛いな」


王子「ホントだね!!マーくん、その衣装良く似合ってるよ!!」


小人6「ありがとうございます。………ヘックション!…王子様、私は今“くしゃみ”なんですよ」


王子「そうなんだ~。くしゃみ、とっても上手だよ!…ええっと、“くしゃみ”くん?

   あっ、僕のことは“アレクサンダー”って呼んで!王子だと“レオぴょん”のことかと思っちゃうから」


従者「ち、父上………違った、アレク王子!!メタはダメですよ!!」


王子「そうだったねぇ。ごめんね、従者くん」


従者「じゅ、従者くん?…わ、私の役に名前はないのか…」


王子「じゃあ、レオ従者で良いんじゃない。何か、“王子”よりも似合ってる気がするな~」


従者「………じ、地味だからですか…?」


王子「はっ!忘れてた!!皆は、ここで何してるの?」


小人6「白雪姫が亡くなってしまわれたので、お葬式をしていたのです」


小人3「葬式………?」


小人1「うん、した覚えないね…」


小人5「アレク王子はどうされたのですか?」


王子「僕は気の向くままに旅してるんだ~。旅の話とか、聞く?お土産もあるよ!」


小人2「………変ですね。王子は死体愛好家だったか、死体収集家だった気がするのですが…」


王子「うん、それも趣味の1つだよ!

   今は、東洋の秘術に挑戦中なんだ。“キョンシー”って言うのを作るつもり。

   そうだ!その死体、貰って行っても良い?」


小人6「もちろんです。さすがアレク王子、楽しそうなことをされていますね」


王子「ありがとー!良かったら“くしゃマーくん”も来る?」


小人6「はい、ぜひご一緒させてください。……それにしても、素敵な呼称をありがとうございます」


王子「えへへっ!気に入ってくれて嬉しいよ!!

   じゃあ、“くしゃマーくん”の代わりにレオ従者くんを置いて行こう!」


従者「ちょ、ちょっと待ってください!!ちち……アレク王子、そんなこと“台本”にありませんよ!?わ、私はどうしたら良いんですか?……私は要らない子なんですか…?」


小人7「じゃあ、レオ従者さんも一緒に小人になりましょー。

    で、“くしゃみ”様は従者になったら良いですよ!名案ですよね、オレ冴えてる~」


王子「なるほど~。名案だね!ハイホー、ハイホー♪

   僕も小人になりたくなってきちゃうなぁ。ハイホー、ハイホー♪」


小人7「おおっ!!アレク王子、歌上手いですね!そんな感じですよ、小人っぽい!」


王子「ありがとー!!僕、コーラスもやってるんだ。神殿で“くしゃマーくん”と!!」


小人7「へぇ~、楽しそーですね。オレもやってみよっかな~」


小人1「ちょっとっ!!!いい加減にしてよっ!!さっさとこの死体…白雪連れてって!」


王子「ああ、そうだったね。ゴメンね?

   じゃあ、レオ従者くん。その棺持てそう?」


従者「………ちょっと、重くて無理そうです。ガラスだし」


王子「そっか~。どうしよっかな~。“台本”だとキスすることになってるけど…」


小人3「陛下っ!?叔母上が…叔母上が………っ!!」


従者「そ、そうです!!母上が、た、大変なことにっ!!」


王子「だよね~。言ってみただけ☆

   じゃあ、歩いて憑いて来てもらおっか~」


従者「………一応、その死体は死んでる設定だと…」


王子「こうすれば良いんだよ!“チチンプイプイ☆”」


 王子が何やら魔法の呪文を唱えると、死んでいたはずの白雪姫が生き返りました。愛の奇跡ですね。


白雪姫「おはようございます。主役なのに、もう出番が来ないのかと思ってしまいました」


小人1「………起きちゃった」


 愛の力で目覚めた白雪姫と王子は、末永く幸せに暮らしましたとさ。



 めでたし、めでたし。



   ☆☆☆



 お ま け


王「どこが“めでたし、めでたし”なんだ?………何か俺、団長に変な誤解をされてるような…」


王妃「仕方ねえよ、キャスティングミスだ」


王「…そうだな。ところで、“悪しき鏡”はどうしたんだ?………あの、全然仕事をしてくれない鏡は」


王妃「城にあっても困るから、小人の家に置いて来た。“ねぼすけ”の部屋に置いてれば文句ないだろ」


王「ああ、それなら大丈夫だろう。妻なんだし、面倒見てくれると思うぞ。………たぶん」


王妃「ま、あのお嬢さんが面倒見なくても、アレなら1枚(?)でも生きていけるはずだ」


王「…あの人がどうにかなるとか、想像もつかない。

  まあ、何はともあれ終わったんだ。良かったら、この後飲みに行かないか?」


王妃「………ああ、良いぞ」


 王様と王妃様も、末永く幸せに暮らしましたとさ。



 めでたし、めでたし。




 キャストロール


白雪姫:マリアンナ

王妃:レイナルド

鏡:ジークフリート

狩人:スズメ

小人1(先生):着ぐるみ

小人2(怒りんぼ):アレン

小人3(ごきげん):ギルバート

小人4(ねぼすけ):ハルカ

小人5(照れ助):ローレンス

小人6(くしゃみ):マーリン

小人7(抜け作):ジルド

王子:アレクサンダー

従者:レオンハルト

王:ヨシュア


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