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チャック的~新説シンデレラ~

 ―――とある貴族の邸。



義姉1「はぁ、早く掃除してください」


シンデレラ「あ、ああ。すまない、すぐにやろう」


義姉2「えーと、ボクの部屋もお願い」


義姉1「ダメですよ、もっと強く言わないと。私達は“意地悪な義姉”なんですから」


義姉2「そ、そうだよね。……シンデレラ、さっさと掃除しなさい!」


義姉1「そうそう、その調子ですよ。王子………シンデレラ、ちゃんと掃除しないと夕食は“虫”にしますよ」


シンデレラ「分かった、任せてくれ!立派に役目を果たしてみせる!!

      あっ、夕食に虫が必要なら捕ってくるぞ?」


義姉2「ええっ!?ボク、そんなの食べれないよ!」


義姉1「そんな虫好きは、もう放って置きましょう。…私の出番は終わりで良いですかね?」


義姉2「良いと思うよ。…あっ、そうだ。シンデレラは一人で虫でも食べてなさい!

    ………ボクの前では食べないでね、気持ち悪いから」


 意地悪な義姉達がシンデレラをいじめていると、継母がやって来ました。


継母「おい、お前ら。もうメシだぞ」


義姉1「あら、レイお母様。夕食の支度をしてくれたんですね。…虫じゃないですよね?」


継母「はあ?…誰がそんなもん食うんだよ。

   お前らの好みが分からなかったから、とりあえず今日の献立はシチューだ」


義姉1「もうっ、何で娘の好みが分からないんですか。あなた、それでも母親ですか」


継母「すまん。これから教えてもらえると嬉しいんだが…」


義姉2「相棒…じゃなかった、ハルカお姉様。レイお母様に対してちょっとヒドくない?」


義姉1「すみません。何か、彼が“継母”をやってるのが面白くて、つい」


義姉2「今からそんなこと言ってると、後が大変だよ?」


義姉1「そうですね。大変そうなので、私はここで退場して良いですか?」


継母「ん?ま、そろそろ場面転換だしな。良いんじゃないか?……次の出番を忘れなければ」


シンデレラ「お、おい。どうだ、キレイになっただろう!私もやればできると思わないか?」


義姉2「わぁ~、ピッカピッカだね。ありがとう!」


義姉1「ずっと掃除してたんですか?…存在を忘れていました、主役なのに」


継母「おい、もういいから、メシにするぞ」


シンデレラ「しゅ、主役なのに3回しかしゃべれなかった…」


 残念でしたね。頑張って掃除していたみたいですが、そんな描写は一切ありませんでした。

 読み返しても、いるのかいないのか分かりません。



   ☆☆☆



 あるとき、王子の結婚相手を探すために舞踏会が開かれることになりました。

 まあ所謂、お見合いパーティですね。ここでも婚活が流行っているようです。


継母「お前ら、城から舞踏会の招待状が来てるぞ」


義姉1「燃やしておいてください」


義姉2「ダメだよっ!話が進まなくなっちゃう」


シンデレラ「わ、私も行って良いのか!?」


義姉2「え………。行きたいの?」


継母「別に構わんが……王子の嫁探しだぞ?行ってどうするんだ」


シンデレラ「えっ…?」


義姉1「何言ってるんですか、レイお母様。今どき“男の娘”の嫁なんてフツーですよ」


継母「そういうもんなのか?」


義姉2「あんまり、一般的じゃないと思うよ……」


シンデレラ「い、いや。それで出番が増えるなら…男らしくドレスを着るぞ!!」


継母「“男らしくドレス”か…斬新なキャラだな」


義姉2「あっ、化粧でもすればちょっとは見えるようになるんじゃないかな?」


シンデレラ「そ、そうか?似合うだろうか?」


義姉2「え………。…ウ、ウン。似合ウト思ウヨ?」


継母「………。(むすこ)の晴れ姿だ、似合わない訳ないだろう?」


義姉1「それって優しさなんですか?…むしろ、不憫さに拍車が掛かってる気がします」


シンデレラ「…はっ!そう言えば、着て行くドレスがなかった!!」


義姉1「大丈夫、怖い魔法使いがくれるはずですから。…たぶん」


義姉2「あの人、ちゃんとやってくれるのかな?ボクは不安でいっぱいだよ…」


継母「まあ、あの人が来たら分かるだろ」


シンデレラ「魔法使い?…あの人って誰のことなんだ?ギルか?」


 そんなシンデレラの前に噂の魔法使いが現れたのは、舞踏会の夜のことでした。



   ☆☆☆



 その魔法使いは尊大に言い放ちました。


魔法使い「おい、お前の願いを叶えてやる」


シンデレラ「ジ、ジークが魔法使いだったのか…。ね、願いって本当に叶えて貰えるのか?」


魔法使い「チッ、どうでも良いから、さっさと言え。時間の無駄だ。

     俺はこの後、妻と舞踏会に行く。お前に割く時間などない」


シンデレラ「そ、そうなのか。忙しいのにすまない。

      実は、私も舞踏会に行きたいんだ!ドレスを用意してくれないか?」


魔法使い「………………は?」


シンデレラ「だ、だからドレスが…」


魔法使い「………お前が着るのか?」


シンデレラ「ああっ!!」


魔法使い「まあ、趣味は人それぞれだからな…。

     ほら、これを着て行け」


 何もないところから、突然ドレスが現れました。


シンデレラ「…っ!?あ、ありがとう!!

      あと、良ければ馬車や靴も出してくれないか?」


魔法使い「はあ?…チッ、調子に乗るな」


シンデレラ「…すまない」


魔法使い「おい、ハト!あとはお前でどうにかしておけ。

     俺はハルカが待っているんでな、舞踏会に行って来る」


 そう言って、魔法使いは消えてしまいました。


ハト「あら、私の出番ですか。

   シンデレラ、私マリアンナが素敵な馬車をプレゼントしましょう」


シンデレラ「ありがとう、マリー!!」


ハト「では、まずはカボチャを持って来て頂けますか?」


シンデレラ「分かった!!ちょっと待っていてくれ」


ハト「あっ、あとネズミもお願いします」


 シンデレラは、家の中にカボチャとネズミを取りに行きました。


シンデレラ「持って来たぞ!!」


ハト「あら、お帰りなさい。用意できましたか?」


シンデレラ「ああ、これで良いだろう?」


 シンデレラの手には大きなカボチャがあります。


ハト「………ネズミは?」


ネズミ1「私達がネズミです」


ネズミ2「次は馬になれば良いのでしょうか?」


ハト「ああ、そこにいたんですね。そうです、馬になって頂けますか?」


ネズミ2「魔法は閣下の方が得意なのですが……」


ネズミ1「仕方ありませんね、私がかけましょう」


 ネズミは自力で馬になってしまいました。


シンデレラ「…っ!?ネズミが馬になった!?」


ハト「何を驚いているんですか?

   さあ、靴はこの“ガラスの靴”を履いてください。カボチャはもう馬車に変えておきました」


シンデレラ「い、いつの間に…」


ハト「私、優秀ですから」


シンデレラ「うん、そうだな!本当に、色々と力を貸してくれてありがとう!!」


ハト「そういう役ですので。

   ああ、忘れていました。魔法はすべて12時になると消えてしまいますので、気を付けてくださいね」


シンデレラ「分かった。じゃあ、行って来る!!」


 シンデレラはカボチャの馬車に乗って舞踏会へと向かいました。



   ☆☆☆



 城は舞踏会の真っ最中です。


王子「…はぁ。誰も彼も、結婚しろとうるさいですね」


家来「まあまあ。こんなに綺麗な人ばっかりですから、きっとギル王子の運命の人も見つかりますよ」


王子「…美人は苦手なのですが」


家来「あっ!!あの人、すごく綺麗です!」


 そこにシンデレラが駆けて来ました。


シンデレラ「はぁ、はぁ…。間に合ったのか?

      すごい人だな。よしっ、私も頑張って目立たなければ!!」


王子「………………殿下?」


家来「わあ、すごい!これだけの規模の舞踏会だと、男の人もドレス着るんですね!」


王子「そういう問題ではありません。…………でん…いえ、そこのあなた」


シンデレラ「ギル!!どうしたんだ?珍しい格好だな」


王子「あなただけには言われたくありません。……ドレス姿で走るのは止めなさい、はしたないですよ」


シンデレラ「ああ、すまない。ところで、これはギルのお見合いパーティなのか?」


王子「……そんなモノを開いた覚えはありません」


家来「えっと、ギル王子の花嫁探しの舞踏会なんです。……レオン殿下……あれ?今の名前は何ですか?」


シンデレラ「シンデレラと言うんだ。灰かぶりという意味らしい」


王子「もしかして、ご家族から虐待でも受けているのでは?」


家来「ギル王子、これはそういうお話なんです。…シンデレラさん、そろそろ王子と踊ってあげてください」


シンデレラ「分かった!!じゃあ、一緒に踊ろう。ギルが女性パートを踊るか?」


王子「踊れない訳ではありませんが……。ソレを着ているシンデレラが踊るべきではないですか?」


シンデレラ「そうか?まあ、私はどちらでも構わないぞ」


王子「では、踊りましょうか。

   ……………。お手をどうぞ、お姫様」


 それから、シンデレラと王子は夢のような時間を過ごしました。



   ☆☆☆



 しかし、そんな2人の時間にも終わりが来てしまいました。


『ゴーン、ゴーン』


シンデレラ「しまった!!12時の鐘がなってしまった!!」


 シンデレラはそう言って、慌てて駆けて行きました。


王子「ドレスを着ているときに走らないでください!……聞いていませんね」


家来「あの……追いかけないんですか?」


王子「舞踏会を放って追いかける訳にはいかないでしょう。第一、追いかける理由がありません」


家来「…………ですよねー」


王子「……一緒に踊りませんか、スズメ?」



   ☆☆☆



 数日後。


『コン、コン』


義姉2「はーい、誰ー?」


家来「すみません、城の者ですが……」


義姉2「えっ!?お城の人!?……シンデレラ捕まっちゃうの?あんなカッコでお城に行ったから??」


家来「ええっ!?そんなことしませんよ!?………えっと、お家の人を呼んでくれるかな?」


義姉2「ボク、子ども扱いされてる!?」


継母「おいおい、玄関先で何騒いでんだ?」


家来「あ、レイナルドさん。お久しぶりです」


継母「ああ。…で、お嬢さんは何しに来たんだ?」


家来「実は、この前の舞踏会でギル王子が運命の人と出会いまして、その人を探してるんです」


継母「大変だな…。見つかりそうなのか?」


家来「いえ、手掛かりがこの“ガラスの靴”しかないので、なかなか……」


義姉2「……大きい靴だね」


家来「ええ。しかも、ガラスだからちょっと重いんです」


継母「そんな靴、履ける女いるのか?」


家来「いるはずなんですけど………この家とか」


義姉2「分かった!!それ、きっとハルカお姉様のことだよ!王子が一目惚れするくらい綺麗だもん」


継母「……ああ、そうだな。ハルカを呼ぼうか」


 そう言って、継母はもう一人の義姉を呼びました。


義姉1「一体、何なんですか?私の出番はもうないと思っていたんですが」


家来「す、すみません。これだけ履いてくれたら、もう戻ってもらっても良いですから」


義姉1「…それ“ガラスの靴”ですよね。シンデレラのものですよ。私には関係ありません。

    あの子を呼んできます」


家来「陽香ちゃん、物語にはセオリーってものがあるんです。

   ちょっと履くだけで良いんで、履いてください。…せめて、フリだけでも」


義姉1「はぁ、分かりました。

    ………ほら、ぶかぶかです。これで良いですか?」


家来「ご協力ありがとうございました!……ええっと、着ぐるみさん?もお願いします」


義姉2「………………ボク、靴履いてない」


家来「………そ、そうですね」


継母「…今度買ってやるよ、お前に似合うやつ」


義姉2「レイお母様っ」


家来「仲良いんですね。……えっと、見た感じ靴がちょっと小さいみたいなんで、もう良いですよ」


義姉2「………ボクの足って大きいのかな…」


継母「そんなことねぇって。その靴がお前に合わなかっただけだ、気にすんな」


義姉2「レイお母様っ」


継母「じゃあ、ハルカ。退場ついでにシンデレラ呼んでくれないか?…そのまま帰って良いから」


義姉1「分かりました」


 そう言われた義姉は、シンデレラを呼びに行きました。


シンデレラ「どうしたんだ?私に何か用か?」


家来「すみません、シンデレラさん。何も言わずにこれを履いてください」


シンデレラ「あっ!?こ、これは!?」


義姉2「さっさと履けば?」


シンデレラ「あ、ああ。………何だか機嫌が悪くないか?私が何かしたか?」


義姉2「別に」


継母「シンデレラ、気にしなくて良いから、その靴履いてみろよ」


シンデレラ「分かった。…おおっ、ピッタリだ!!」


 その“ガラスの靴”はシンデレラの足にピッタリと合いました。


家来「本当ですね!この家に一番に来て良かったです」


継母「さっき見つかりそうか聞いたとき“なかなか”とか言ってなかったか?」


家来「あっ!…口が滑っちゃいました、今のナシで。

   ええと…、あなたがあのときの女性(?)だったのですね!城でギル王子がお待ちです、一緒に城まで行ってもらえますか?」


シンデレラ「ええっ、わ、私は何もしていないぞ!?理由も聞かずに連行なんて!!」


家来「ふっ、あなたは大変なモノを盗んで行ったのです!」


義姉2「………………」


シンデレラ「な、何も盗んでなどいないぞ!?何かの間違いだ、弁護士を呼んでくれ!!」


継母「………………」


家来「それは、ギル王子の心です!!」


義姉2「ドヤー」


シンデレラ「心…?心臓など盗んでいない。本当なんだ!!信じてくれっ!!」


義姉2「もう、2人とも城に行きなよ。…遊んでないでさ」


継母「ああ。シンデレラ、城に行くまで帰って来るなよ」


 継母たちはシンデレラを家から追い出してしまいました。


『カチャ』


 鍵も掛けてしまったようです。


シンデレラ「ええっ、そんな!?み、見捨てないでくれ!!

      …鍵まで掛けるなんて、私は要らない子だったのか?……地味だからか?」


家来「早く城に行きましょう!…ご家族は、あとで城に呼んでください」


シンデレラ「皆、面会には来てくれるだろうか…?」


家来「面会…?ま、いっか。……ギル王子ー、もうすぐお嫁さんを連れて帰りますからねー」


シンデレラ「………新聞に名前が載ることになるなんて。こんな風に目立ちたかった訳では……」


 少々行き違いがあるようですが、2人はとりあえず城へと向かいました。



   ☆☆☆



 城では王子が“運命の人”を、今か今かと待っていました。


家来「ギル王子っ!!運命の人を連れて来ましたよ!」


王子「スズメ、あれは何度も間違いだと……。…ソレは何です?」


シンデレラ「ギル?…違うんだ、これは冤罪だ。私は何もしていないっ!!」


王子「………は?」


家来「シンデレラさん、ちょーっと勘違いしちゃってるみたいですね」


王子「コレをどうしろと」


家来「とりあえず、結婚とか?」


王子「………………もう、好きにしてください」


 こうして、シンデレラと王子は結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ。


 めでたし、めでたし。





 キャストロール


シンデレラ:レオンハルト

義姉1:ハルカ

義姉2:着ぐるみ

継母:レイナルド

魔法使い:ジークフリート

ハト:マリアンナ

ネズミ1:アレン

ネズミ2:ローレンス

王子:ギルバート

家来:スズメ



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