地獄に来て、変わる名前。
1年ぶりの更新です。
既に忘れられた作品になっているかもしれませんが、時々更新していこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。
という訳で地獄に来ました。
道中おネェ系の馬頭鬼に絡まれたり、ゲイの亡者に襲われそうになったりして貞操の危機を感じたが、鬼咲のおかげで一大事になることはなく。貞操を守り切り無事に閻魔大王の謁見室にたどり着いたのだった。
「志紀。ちょっとこっちに来て。」
鬼咲は手招きをし、俺をカウンターの方へ呼び寄せる。
言われるがままにカウンターに行くと、(人骨でできているらしい)妙な手触りのする筆を渡されて(流石に筆の毛は人の髪の毛ではなく、馬の尻尾だった)。
「じゃあ。この書類に生前の名前と生年月日を記入して。」
「何これ・・・。」
「これはこちら側の世界で生きていくための手続き。の第一段階?」
「何で、名前と生年月日だけ?他に書くことは無いのか?住所とか趣味とか?」
「死んだのに住所書く必要性あると思ってるの?」
「無いな。」
「それに趣味なんか書いてどうするつもりなのよ。履歴書じゃあるまいし。ましてあんたの履歴なんて、皆知ってるし。映画鑑賞に音楽鑑賞、読書、パソコン、ストリートバスケにスケートボード。意外と多趣味なのね。」
「わかっよ。書けばいいんだろ。」
十河志紀っと。誕生日は1997年の9月18日ですよっと。
「はい、これ書いた。なぁ鬼咲。俺思ったんだけど名前も生年月日もそっちで把握してんじゃないのか?」
「はぁー。聞かれると思った。確かに名前も生年月日も把握してたけど自分で書くということが重要なの。わかった?わかったなら、次これ書いて。」
渡された紙には『名前』としか書かれてなく。
「なぁ鬼咲?名前ならさっきの紙にもう書いたんだけど?」
「え?・・・・。あ!そっか、ごめんごめん大事なこと忘れてたわね。志紀はまだ名前を変えてなかったっけ。」
「名前って変えないと駄目なのか?」
「そうね。名前を変えないと現世のあんたの家族があんたを現世に繋ぎとめようと名前であんたを縛るのよ。意味わかる?」
「まぁ、なんとなくは」
「ただ、名前を帰るといっても音は変えずに字だけを変えるの。」
「へ〜。その名前は俺が自分で決めていいのか?」
「そうしたいなら、そうしてもいいけど。それだと、あんたが生まれる前から持っている潜在的な力を引き出すことはできなくなるわね。」
「なに!?潜在能力だと‼︎?俺にそんな力が!?」
「そうね。この世に生を受けるモノは何かしらの力を宿してこの世界に生まれ落ちるわ。生きている間にその能力を目覚めさせられる人のは、ほとんどいないし。いるとしても、天才と呼ばれる類の人達だから。という訳で、この紙の魂判って書かれてる部分に利き手の、手のひらを押し付けて。」
「『魂判』って何!?」
「魂判というのは・・・。まぁ簡単に言うと血判みたいなものよ。その紙にシキの魂の性質と魂の情報を刻みつけるの。で、その紙がシキのこちら側の世界での身分証明書になるの。」
「なるほどな。じゃ早速・・・・。」
俺は右の手のひらを『魂判』と書かれているところに押し付けると。
突然、真っ赤な光の線が紙の上を縦横無尽に織るように走った。
「赤い光。ということは、シキの魂には炎の性質があるということね。」
鬼咲はひとり、納得したように頷いている。
あの鬼咲さん?ひとりで勝手に納得しないで?
「じゃあ、シキの名前は決まったも同然ね。」
「は?」
「十河志紀よ。汝に新たな名を与えよう。シキの音を、改め。燃え盛る炎の如き鬼。『熾鬼』この名を授ける。」
「鬼咲さん?いきなり何をおっしゃっているのですか?そもそも何故に鬼?俺、人だよね?」
「だめかな?我ながら良い名前だと思うんだけど?」
若干上目遣いで俺の顔を覗き込むように、残念そうな声音で言った。
(ちょ。その顔反則だろ。めっちゃ可愛い。自分の顔が赤くなりかけているのがわかる。)
「いやいやいやいや。名前の良し悪しはこの際置いといて、なんで名前に鬼が入っているのかってことだよ。」
「それはね。純粋な人のままだったら生前の行いに関わらず、地獄の焔に焼かれて文字通り魂ごと消滅するから。」
すーっと全身から血の気が失せていくのを感じる。
「消滅するのは大体どれくらいの時間ですか鬼咲さん?」
「ん〜?個人差はあるけど。大体の平均が5時間くらいね。ついでに熾鬼は4時間くらいね。」
「俺、平均下回ってる〜!?」
「それと熾鬼は地獄に来てからもう3時間半くらいたってるわね。」
「ええ!?ちょっ!え〜‼︎?あと30分で俺消滅するの⁉︎マジなの⁉︎?マジな話ならどうしたら鬼になれんの⁉︎」
「熾鬼うるさい。そんなに焦らなくても大丈夫だから。名は体を表すって言うでしょ。あんたの名前が熾鬼になったことで、熾鬼はもう半分は鬼になったということよ。だから、また死にたくなかったらさっさと書類に名前を書きなさい。」
「はい、かしこまりました。鬼咲教官殿」
さらさらっと。先程の筆で『熾鬼』と書く。
「うわっ!」
書類は急に炎をあげて激しく燃え出したかと思ったら、その炎の中から赤と黒の石で創られた数珠が出てきた。
鬼咲はその現象を確認するとその数珠を持ち上げ。
「熾鬼、右手出して。」
俺は言われるままに右手を差し出した。
「今は右手につけておいて。力が暴発しないように抑えてくれるから。」
と言い、俺の右手に数珠をつけた。
俺はこれから変わるであろう地獄での生活に様々な思いを馳せながら、自分の右手についている数珠を眺めているのだった
私としては、これくらいの長さの文章が限界です。人によってはこれの3.4倍書く方もいらっしゃると思いますが、私は私のペースで書いていきたいと思っております。