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スピンオフ・八咫烏のキャラで世界最小のダンジョンに挑む ~緊急事態! リーダー不在でダンジョン迷走!~

掲載日:2026/07/09

 その日、『滄溟(ウナハラ)(トリ)』乗組員のリーダー・(ツルギ)が飲みに出掛けていて、俺達は留守番だった。

 そんな時に限って緊急事態が起きる。

 義兄弟『カラス』の残るメンバー、俺と久斯(クシ)三野(ミノ)は、宿所に使っていた竪穴住居で炉の火に当たっていた。船の乗組員の約半数と一緒だった。

 そこへ、顔面が刀傷痕だらけの志毘(シビ)が駆け込んできた。

「オヤジ! 大変だ。魔物の出る『だんじょん』があって、仲間が行方不明になった!」

 志毘の父親・()()()は操舵士。

 真具呂は顔も躰も刺青があり(鯨面(げいめん)文身(ぶんしん))、真っ黒に日焼けしてスキンヘッド、船一番の大男で筋骨隆々、三白眼が鋭い。ベテラン船乗りからも一目置かれる特別な存在。

 真具呂は乗組員の中で一番愛想が悪い。息子の志毘にも冷たい。

「志毘。自分で何とかしろ…」

「そんなぁ…」

 いつもは偉そうな志毘が俺に泣きついてきた。

「よう、多伎(タキ)。大変なんだ。漕手(カコ)比良(ヒラ)()()が『だんじょん』に入ったまま、出て来ねぇ…! 助けてくれ!」

 俺と久斯と三野が顔を見合わせた。

 俺は十五歳、三野が十八歳、久斯(クシ)が二十五歳。

 俺は面倒臭がり。三野は直情的。久斯(クシ)はいつも冷静だ。

「放置しといても出てくるんじゃねぇの?」

「仲間を見捨てんのか、多伎!」

「様子を見に行きましょう…」

 船長の剣が不在なので、俺が決断する。久斯の意見を採用し、その場の乗組員全員と狼の仔・淡由岐(アハユキ)を連れ、『だんじょん』を見に行くことになった。

 真具呂は面倒だから、

「俺は待ってる」

 と、言った。

 おい、真具呂。おまえの子分格の比良と波知だぞ。

 仕方ない。剣が戻ってきた時に連絡が付くように、真具呂を置いていくことにする。

 俺は志毘を振り返った。

「それで、どんなダンジョンなんだ?」

 たぶん、ダンジョンというものの知識を持ち合わせているのは、異世界から来た俺だけだ。

「多伎。『だんじょん』を知ってんのか。話が早ぇ!」

 志毘は喜んで手を叩いた。

「こっちだよ、多伎。『だんじょん』は魔物が棲む洞窟のことだ!」

 志毘が俺達をその『だんじょん』に案内した。

「お前ら、魔物と戦う用意はいいか?」

 俺が見回すと、刀剣を持っているのは俺と久斯と三野だけだ。

 残りの奴等は船のパドルを構えて山を登っていく。

 ダンジョンはすぐ近く、俺達が宿泊していた集落の裏山にあった。

 普通に『だんじょん』の立て看板が出ていた。

 倭のクニグニにはまだ文字がないから、『だんじょん』は絵文字で記されていた。

 『だんじょ』は男と女の向かい合う絵、『ん』は、う○ちの絵の中段に矢印で表現されていた。

「何だ、これは!」

 俺は冒険者お決まりの台詞を言ってみた。一度言ってみたかったんだ…。

 そのダンジョンは世界最小。奥行きが1メートルしかない!

 入口側から出口が見えているぞ!

 自然光が入るので、全然暗くないぞ。

 岩で出来た自然の洞窟なのに、出口が山の裏手の景色で、空間として明らかにおかしい。ダンジョン内で距離が短縮されている。

 ここを通ると、歩いて一日はかかりそうな山の裏手側にワープ出来てしまいそうだ。

「魔物はどこだ⁉」

 俺は『滄溟(ウナハラ)(トリ)』専属の(カムナギ)。お祓いは俺の仕事だった。

 でも、ダンジョンが小さすぎて、そこに魔物が棲んでいる気配が無い。

「ここに入るのか、多伎! お前じゃ無理だ! 死ぬぞ!」

 三野が焦って、俺を引き止めた。

「多伎。説明しよう。この『だんじょん』はかつて、神々の時代に、山の裏手に素早く移動する為に造られたものだ…」

 何でも知っている久斯が教えてくれた。

「何だとォー⁉」

 じゃ、俺、行かなくちゃ。

 俺は単独でダンジョンに踏み込んだ。

 あっ。三歩で出口に出ちゃった。

 何事も無かった。比良と波知も見つけられなかった。

 俺は慌ててダンジョンに戻る。また三歩で入口を越えて戻ってしまった。

 俺に浴びせられる仲間の白い視線…。

「何やってんだよ、多伎! 早く魔物をやっつけて、比良と波知を救出しろよ‼」

 志毘に怒鳴られる。

「多伎…。やっぱり、お前ごときに攻略出来る『だんじょん』じゃねーんだよ!」

 三野にけなされる。

「じゃ、お前らも入ってみろよ!」

 俺は三野と志毘を押してダンジョンに入った。

 駆け付けた全員で入ろうとしたが、入りきらねぇ。

 ぎゅうぎゅう押し合っているうちに先頭は出口を通過して、最後尾はまだ入口の外だ。

 どこにも魔物が見当たらない。

 今度は俺一人で、匍匐前進で入ってみた。

 岩の隙間に異空間を探してみた。岩の隙間には(こけ)しか生えてねぇ。

 やっぱり、そういうことか。

 洞窟を背にして、俺は咳払いした後、結論を述べた。

「比良と波知は、神々の時代に行ってしまった…」

 志毘達が涙ぐんだ。

「じゃ、もう会えねぇってのかよ⁉」

 俺達が諦めかけたその時、ダンジョンの魔物が背後から現れた。

 俺の頭をゲンコツで一発殴って、ダンジョンに戻ろうとした。

 振り返る俺。ダンジョンの魔物は……みすぼらしいジイサンだった。

 逃がしはしない。俺がジイサンを捕まえ、背負い投げした。

 ジイサンが怒った。

「何をする。(わし)蓬莱山(ほうらいさん)の仙人じゃ…」



 俺は比良と波知を救出した。

 蓬莱山の仙人がお詫びに絶世の美女を贈ると言ったが、余り期待出来ないので、残念ながら辞退させてもらった。




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