8.初めての魔物狩りへ行こう
私は夢を見ることはない。強いて挙げるならば、結界周辺の景色を見ることくらいだ。結界に傷がついてないか、壊されそうになっていないかを随時確認している。
それが、私の寝るという行為。普通の寝るとは違うものだ。
「うう……」
しばらくぶりに目が覚めた私は、ぐっと伸びをする。外はまだ明るい。時計を見ると、午後二時くらいを差していた。
私はベッドから降りて、ウェイド辺境伯に挨拶へと向かおうとした最中。ガチャリと突然扉が開く。
「お、起きたんだね。おはよう、そしてありがとう」
「ウェイド辺境伯……?」
ウェイド辺境伯の登場に、私は困惑してしまう。
しかし、ウェイド辺境伯は笑いながら答える。
「君の起きる時間、大体分かってるから朝の挨拶をしておきたくてね。ほら、結界もやってもらってるから、こういうのは大切にしておきたいし」
「ははは……ほんと丁寧ですね」
「当然だよ」
ウェイド辺境伯は誇らしげに鼻を鳴らす。
ふとウェイド辺境伯は思い出したかのように、私を見て言う。
「そうだ。今日は来客が来ているよ。といっても、昨日ぶりってところだろうけれど」
そういうウェイド辺境伯の背後に、こそっと隠れるようにエリックの姿があった。
エリックは私を見るなり、顔を出して来て。
「シセ。一緒に依頼受けてみようぜ。僕、ずっとシセの実力が見てみたかったんだ」
「ということだ。俺も着いていこうと思っているんだけど、どうかな?」
二人が期待に満ち満ちた表情を向けてきている。まあ断る理由もないので、せっかくなら行ってみようかな。
「分かりました。行きましょう」
私がそういうと、ウェイド辺境伯とエリックがパッと顔を明るくさせる。嬉しそうにしながら、お互いハイタッチを交わしていた。
ええ……そんな嬉しいものなのだろうか。あまりにも嬉しそうにしてくれて、私も若干嬉しいけれども。
「そんじゃ、決まりだな。ウェイド辺境伯、シセ、強い魔物一緒に倒すぞ!」
大盛り上がりのエリックを見て、私はこくりと頷いたあと拳を突き上げておいた。
私の人生史上、初めての魔物狩りが始まります。
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