69.光栄っす
「こちらウェイド。どうされましたか?」
小さくではあるが、向こうが話している声が聞こえた。
女の人ではありそうだ。
しかしウェイド辺境伯は次第に表情が険しくなってくる。
「なるほどね。シセ、ギルドマスターだったよ。はいはい、それで俺たちはどうしたらいいんだ?」
ギルドマスターからか。確かに彼女なら、ここに私たちがいることは把握していてもおかしくはないか。でも……わざわざ掛けてくるというのは、なにか意味深である。
普通に考えて、なにかしらあったとみていいだろう。
タイミング的に言えば……例の件だろうか。
「分かった。それじゃあシセと一緒に急いで向かうよ」
彼は頭を掻きながら、大きく息を吐く。
「宮廷に魔族から連絡があったそうで、今は大騒ぎだそうだ。早速ギルドマスターが、捜索もとい奪還をするために手を挙げたらしい。ひとまずギルドに戻ってこいだそうだ」
私はこくりと頷く。
「それじゃあ転移魔法で向かった方が良さそうですね。馬車でのんびり移動したかったところですが」
「だな。あんまり転移魔法の移動って好きじゃないんだけどなぁ……仕方がない」
私は手のひらを空にかざす。すろと、大きめの魔法陣がパッと出てきた。
「少し我慢してくださいね」
「はいはい」
首に手を当てながら、やれやれと言った様子の彼と一緒に、転移魔法陣をくぐった。
次に目を開ける頃には、ギルドマスターが待つ執務室に到着していた。それにエリックもいる。なんだかとても気まずそうである。ギルドマスターは私たちを見るなり、ニヤリと手を組む。
「来たか。遂に我々の快進撃が始まるぞ」
彼女、見ている限りかなりワクワクしてしまっている様子だ。
「ええっと……僕いります? だって……今回に限って言えば、多分めっちゃ強いっすよね? しかもかなり大事だし……」
エリックはおどおどしてしまっている。実際問題、こんな事件に駆り出されるのは気が気でないだろう。私だって、突然そんなこと言われたら困惑の一つくらいはする。
「君とシセと、ウェイド辺境伯はセットだと考えている。誇らしいものだと思わないかね?」
ギルドマスターの言葉に、エリックは困った様子で頬を掻く。
「はは……光栄っす。多分」
困り果てているエリックを気にもとめていない様子で、ギルドマスターは私たちのこっとを見る。
「先に聞いておくが、ノーブル地では何かあったかね?」
そうだった。まだ彼女には説明していなかったように思う。
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