68.コール
「エルド……か。ルヴィン王子を攫ったり、ノーブル伯爵と契約したり。何かしらそいつが色々と絡んでそうだな。恐らくはエルドが率先して、宮廷に働きかけるとみていいだろう」
けれど、エルドという人物は聞いたことがない。そこまで手を動かせる人物なら、何かしら有名であってもおかしくはないが。
だが、魔族自体名を率先して名乗ることはないし、名乗ったとしてもこのような呪い付きの契約を結ぶ時くらいだから、滅多に漏洩することなんてないのだろうが。
「でも、エルドとやらを倒せば色々と解決しそうですね」
「そうだな。呪いも解消されるし、世界も平和に……なんてなるといいな」
ウェイド辺境伯は契約書をちらりと見る。
「シセ。とりあえずこの契約書は保管しておいてくれ。《魔法収納》とか使えるんじゃないか?」
「もちろんです。お預かりしておきます」
私は《魔法収納》を発動して、契約書を魔法陣の中に入れる。
呪い付きではあるが、私の領域内に入れても基本的には問題ない。
「ひとまず帰るとするか。情報も多少は手に入ったし上々といったところで……」
くるりと踵を返そうとした瞬間のことだった。
ノーブル伯爵の執務机に置かれていた通話型魔導具が音を鳴らした。
「ええ? こっちは無人だってのに、どうして通話がかかってくるんだ?」
ちらりと彼はこちらを見てくる。
「出てみてはどうでしょうか? 他の人間もここが辺境伯領へと併合されたのは知っているはずですし、いたずらだとしても出る権利はあるかと思います」
「それもそうだな」
ウェイド辺境伯は受話器を取って、耳に当てる。




