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67.契約

 ……見たら分かった。

 契約にも色々種類はあるが、大抵はサインを交わして終了のものが多い。だから、簡単に言えば、特定の手続きを踏めば契約を破棄できる可能性のあるものだ。それに、ただのサインのやりとりというわけだから、特別魔法的な被害を被るわけではない。


 しかし……見たところによると、この契約書は血印をお互いがしている。しかも、極めて邪悪な、魔族の魔力が契約書自体にも込められている。


 とどのつまり、悪魔と契約したようなものだ。情報は常に抜かれるし、監視状態に陥るし、あまつさえ命すらも吸われる。


 だが……大抵呪いのような契約を交わす時は、お互いの名前。もっと言うなら、真の名前である必要がある。


「エルド……」


 私はぼやく。間違いなく、この名前の魔族と契約を結んだのだろう。


 というか、契約書を見る限り、結構な金銭も交わしている。


 ノーブル伯爵の懐は豊かになったかもしれないが、失ったものを考えると大赤字だろう。


「これだと、ノーブル伯爵が持ち合わせている王家の情報も抜かれてますね。宮廷が混乱状態に陥っていたのも、少しは把握していたのかもしれません。ルヴィン王子の身柄が都合良く確保された件に関しては、ノーブル伯爵の契約での情報漏洩があった可能性も拭えません」


 その言葉を聞いた、彼は大きく息を吐く、

 面倒くさそうにしながら、額に手を当てた。


「あらら……とはいえ、掘り返して罪を追及したところで、この契約は破棄できないことだしね。やることは変わらないにしても、困ったものだ」


 ウェイド辺境伯は隣に並んで、じっと契約書の内容を見ていく。


「ま、メインは呪いのようだから変わったことは書いてないな。名前は分かったが……って感じだな」


 けれど……この契約書には魔力が込められている。

 呪いが付与されている契約を破棄する方法はないと言ったが、一つだけあるにはある。それは、契約を結んだ人物が死亡した場合だ。


 この契約書はまだ生きているようだし、向こうは死んでいるわけではない。


 それこそ逆探知なんてものはできないが、万が一私が知り得る相手なら違う。一応、私は会ったことがある、もしくは形跡を確認したことがある魔力なら人物が誰かを見つけることはできる。


 どちらにせよ、ノーブル伯爵から情報を抜かれ続けるのはよくない。

 ならば……。


 私は軽く契約書内な付与されている魔力を確認する。自分の記憶に残っている魔力の波長を、無限に照合させる。


「ウェイド辺境伯。私の中に、エルドという人物に該当する魔力がありました」


 ウェイド辺境伯は驚きの目を向ける。


「本当なのか?」


 間違いなく記憶の中にあった。ただし直接会ったことはない。


 だけど……形跡だけは確認したことがある。


「ルヴィン王子を襲った魔族が、どうやらエルドのようです」


 確定、と言って良いだろう。


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