66.呪い付き
「領地の開発計画書に、他領との貿易資料に……うわ、この契約金。なかなかぼってるな。先方は頭抱えただろうに」
どうやら、ノーブル伯爵は他のところにも強気な姿勢だったようだ。しかし街は栄えているのだから、やり手ではあったのだろう。とりわけ誰かの不幸の上に成り立っているというところが救えないが。
「まあ、こんな誰かに見られるようなところにはないよな。隠し場所つっても、そんなの無限にあるわけだしねえ」
さすがに見えるところにはないようだ。探すにしても、この屋敷は広い。全部ひっくり返そうとしたら、それこそ数日……一週間くらいはかかるだろう。
「ですが……自分が長くいることになる、この部屋以外に隠すとは思えませんね。万が一使用人たちに見つかれば、それこそ大事でしょう」
「だな。んじゃあこの部屋か」
ウェイド辺境伯は頭を掻きながら、部屋を見渡す。
だけどめぼしいものは特に見当たらない様子で、悩みに悩んでいる。
私も同じである。魔法でどうにかしたい気持ちではあるが、特定の、しかも何かも分からないようなものを見つけるような万能魔法はない。そんなものがあれば、今頃貴族たちは摘発されまくっていることだろう。
「というか、結構いい万年筆使ってるな。これ、宝石もあしらわれているし、数百万はくだらないんじゃないか?」
机の上に置かれていた万年筆を、じっと見据えるウェイド辺境伯。
「俺、推理小説とか結構好きでね。実はこの万年筆も書くようのものじゃなくて、ペン先を取ったら、中から証拠が出てくるみたいなこと……」
ペン先を取って、中身を確認する。
「……なんかある」
じっと覗き込むウェイド辺境伯。トントンと机で叩いて、中から紙を取り出した。
「こりゃ……ビンゴだな」
「本当にそんなところにあったんですか?」
私は思わず困惑してしまう。実際、万年筆の中なんて誰も覗かないと思うが……でも、あるもんなんだな。
「ああ。しかも、見たところ呪い付きの契約だ」
「呪い付き?」
「見たら分かるさ」
そう言って、契約書らしきものを私に手渡してくる。




