65.片付けはしないタイプかぁ?
言われてみれば確かにそうだ。あの時はノーブル伯爵の失脚から領地の併合、それの根回し。それらが重なって、到底調べる状況ではなかった。
「なるほど。しかし……残っていたらいいですね、形跡」
ウェイド辺境伯は頭を掻きながら苦笑する。
「まあね。屋敷の立ち入りは誰もしないように、現地の人間に任せてはいたが……これに関して言えば、本当に俺が信用されているのかがかかっているな」
「そうですね。この様子だと、結構信用されていると思いますけど」
そんなことを言いながら、私たちは屋敷へと向かう。
しばらく進んでいると、屋敷が見えてきた。実際に見ると、確かに警備の人間が何人かいる様子である。
「ありがとう、君たち。もちろん誰も入っていないよね?」
警備の人間たちに、ウェイド辺境伯は軽く手を挙げて言う。
警備たちはウェイド辺境伯を見るなり、姿勢よく敬礼をして返した。
「もちろんでございます! 辺境伯の期待に応えないようなことはいたしません!」
「それはよかった。それじゃあ、俺たちは中に入るから、引き続き頼んだよ」
「はっ!」
見ている限りだと、かなり信用はされているようである。案外心配は不要だったようだ。ウェイド辺境伯も、どこか安心した様子である。
私たちは屋敷の中へと、扉を開けて入る。もちろん人の出入りは禁止しているのだから、中は掃除なんてされていない。別に家具とかが散らばっているわけではないが、どこか埃っぽくてくしゃみが出そうである。
「こりゃすごいね〜。一通り調べたら、俺たちで掃除した方がいいかもな」
やれやれ。彼はどうやら自分で掃除しようとしているようである。自分の使用人や仲間にお願いすればいい立場ではあるのに。けれど、そこが彼のいいところではあるが。
「そうですね。とりあえず……うう……くしゅん」
我慢していたつもりなのだが、思わずくしゃみが出てしまった。思いきりしてしまいそうになったが、ギリギリ抑えることができたはずだ。でも……ちょっと恥ずかしい……。
「ほら、ハンカチ。少しはほこりも防げると思うよ」
「ああ……ありがとうございます」
私はハンカチを受け取り、鼻を覆う。なんていうか、恥ずかしい。でも、私ばかり申し訳ないな。感謝しないと。
「ええと、ノーブルさんの部屋はっと」
ウェイド辺境伯は、ノーブル伯爵がいた部屋の扉を開ける。
見たところ、荒らされたところはないな。彼は執務机の方に歩いて行き、引き出しを空けて中身を確認していく。
「うーん……結構色々入ってるなこりゃ。片付けはしないタイプかぁ?」
やれやれと言った様子で、一枚一枚書類を見ていく。




