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6.エリック

 ウェイド伯爵が頭を掻きながら笑っていると、ふとこちらに歩いてきている冒険者の姿が見えた。私は特に気にしていなかったのだけれど、止まる素振りを見せずに来ていることから、さすがに気になってしまった。


ウェイド辺境伯も気がついたようで、ちらりと見た後軽く手を挙げる。


「よぉ。どうした坊主」


 坊主、と呼ばれた少年。否、顔だけ見れば美少年と言っても良い彼は、少し怪訝な表情をしている。


 さらさらとした黒髪を揺らしながら、美少年は私を見た。


「ウェイド辺境伯! 聞きましたよ、あの人と一緒に暮らしているって!」


 その言葉に、ウェイド辺境伯は気にする様子も見せずに笑う。


「ああ。シセだけじゃあ、年齢的にも心配だからな。それがどうしたんだ?」


 美少年は不服そうな表情を浮かべていた。


「ずるいです! 僕もウェイド辺境伯と一緒に暮らしたかった!!」


 ぐっとウェイド辺境伯に顔を寄せる姿を見て、私は苦笑してしまっていた。なんだこの女の子が喜びそうな展開は……。


 私は特段喜ぶわけではないが、しかし少し状況が面白いとも思う。


 そんな光景を眺めていたら、ウェイド辺境伯が困った様子でこちらを見る。


「シセ、びっくりさせちゃったね。彼はエリック。ここで冒険者をやっている子だよ」


 エリックと呼ばれた美少年が、じっと私の顔を見てくる。


「お前、多分俺と同い年くらいか?」


「ああ……多分、それくらいだと思いますね」


 そう言うと、エリックさんは私に近づいて握手を求めてくる。


 私は困りながらも、エリックさんと握手を交わした。


「ウェイド辺境伯と一緒に暮らしているのはあれだけど、辺境伯が認めた上に領地を救ってくれているのだから悪い人ではないな。今日から友達だ」


「え、あ、はい」


 あまりにも唐突に距離が縮まったので、私の返事はたどたどしいものになった。その様子を眺めていたウェイド辺境伯がくすくすと笑う。


「悪い子じゃないからね、シセも仲良くしてあげて」


 エリックさんはふんと鼻を鳴らして、にこりと笑う。


「敬語はいらない。わざわざ年近いやつと敬語で話すのも意味が分からないからな」


「分かった。それじゃあよろしく、エリック」


「もちろんだ」


 ひとまず、どうにかなりそうでよかった。最初会った時は敵対心マックスだったが、案外初見の印象からは変えられるものだ。


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