44.一安心
領主の変更……というのは結構大きなことである。場合によっては領民からの反乱があってもおかしくはない。
私たちも慎重になりながらも、ノーブル伯爵打倒後に新聞社へと変更の文面を記載することにした。ここからどうなるか……と思っていたのだが。
「やれやれ、意外と上手く行ったようだね」
ギルドマスターがメガネをくいと上げて、くすりと笑う。
私たちは一度、ギルドに報告するために帰還していた。ギルドマスターの隣で、覗き見るように新聞を眺めているウェイド辺境伯。
「反乱もなし……なんなら、領民は大歓迎か。ふう……一安心だね」
ウェイド辺境伯は胸を撫で下ろす。私も私で安心してしまっていた。これで何かあったら、今度は領民からウェイド辺境伯の首を狙われることになる。
ともあれその危険性はないということが分かったので、素晴らしいことだ。
ギルドマスターはウェイド辺境伯をちらりと見る。
「しかし、君も随分と有名になったものだね。これで、ウェイド辺境伯の地位が更に確立したようなものだ。私も冒険者ギルドの規模を大きくできるってことだし、嬉しいことだよ」
ギルドマスターも納得しているようである。ウェイド辺境伯も頭を掻きながら笑う。
「そう言ってくれると嬉しいよ」
しかし……思うところがある。ウェイド辺境伯の人柄もあると思うが、ギルドマスターとウェイド辺境伯の関係は不思議なものだ。
普通は領主とギルドマスターの関係は綺麗な上下が決められていると思うが、しかし二人の関係値は対等のように思える。
私は気になったので、聞いてみることにした。
「少し話は逸れますが、ギルドマスターとウェイド辺境伯の関係ってどのようなものなんですか? 普通は……なかなか対等のようにはいかないと思いますが」
そう言うと、ギルドマスターは笑う。
「まあそれもそうか。いやね、ウェイド辺境伯とは昔なじみでもあり、同僚でもあってね。簡単に言えば、ウェイド辺境伯がやらかしたことが私にも影響して、こうして僻地での仕事を一緒にしているわけだ」
「え、もしかしてやっぱり怒ってる?」
「怒ってないさ。王都での仕事より、ここでの仕事の方が自由にできて快適だよ」
なるほど……大体理解できた。
それならウェイド辺境伯との関係も納得がいく。けれど、ともに僻地へ追放みたいなものは可哀想ではあるけれど。
「ともあれ、こうして色々おまけが着いてきたが一つの仕事が終わったわけだ。しかし魔族対応の派遣をすると言っても、こんなことが毎回起きる可能性がなきにしもあらずとか考えると、頭が痛くなってくるな。さて……どうしたものか」




