41.悪趣味
魔族はくつくつと笑いながら、パッと魔法を使ってビンを取り出す。その中には薄く色のついたガスが溜まっている。
「どうやらガスは対策されているようだし、こんなものを使ってもあなたたちには意味がないわね」
そう言いながら、魔族ははあと息を吐く。
「まあ別に、それ以外の魔法も得意だからいいけれど。私、人を殺すの大好きなのよ」
なるほどな。どうやら相手はかなり趣味が悪いようだ。部屋の外装やそれ以外に至るまで、悪趣味なのはこちらも把握しているが。
「あら、すごく嫌な顔しているわよ。あなた」
どうやら私が思っていたことが顔に出ていたようだ。あまり顔に出さないように気をつけて生きているのだが、分かる人には分かるようだ。
こればかりは反省しなければならない。以後気を付けよう。
「ウェイド辺境伯、エリック。やりますよ」
私が言うと、二人はこくりと頷いて各々の武器を構える。魔族はくすくすと笑いながら、軽く腕を振るった。
すると、複数の魔法陣が展開される。
「なら……喰らいなさい」
同時に、魔法陣からどす黒い玉が放出される。闇魔法……もしくは毒か。当たったら間違いなくヤバそうなものだ。
「当たらないようにしてください!」
私が叫ぶと、二人はにやりと笑う。
「了解した!」
「分かってるよ!」
二人は回避し、ウェイド辺境伯が接近。同時にエリックも弓を構えて魔族に放った。
「残念ね」
その刹那、魔族の足下から防御結界が展開された。矢と剣は軽く弾かれてしまう。
「そして迂闊よ」
魔族はウェイド辺境伯の腹めがけて、ゼロ距離で炎魔法を放った。このままでは焼けただれる……そうなる前に私は遠距離から反射魔法をウェイド辺境伯の体に付与する。
それすなわち、向こうもゼロ距離から炎魔法を喰らうということだ。
「なっ!?」
魔族は咄嗟に回避をするが、避けきれずに髪が少し灰になる。
「す、すまない!」
「気にしないでください。私も迂闊でした」
私はそう言って、一歩前に出る。
やはりここは舐められる前に押し切った方が速いだろう。
「二人とも、更にバフを付与します。相手の攻撃すらも無効化する勢いで、押していきますよ」
二人は私の隣に並んで頷く。
「「ああ!」」




