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38.粉砕

 私は幽霊のような巨大な魔物を見据える。物理系の攻撃は効果があるのだろうか。中身がスカスカに見えるから、効果はなかなかに薄いような気がする。


 ともあれ、試してみないとどうなるか分からない。


 私は集中し、魔法を発動する。


「《衝撃インパクト》」


 詠唱とともに、魔物に物理魔法が発動される。魔物は攻撃が当たった瞬間に瓦解して崩れ去った。


 しかし……これは決して倒したわけではなさそうだ。


 カタカタと音を立てて、魔物の体が再形成される。これは驚いた。こんな魔物を昔遊んだゲームで見たことがある。倒しても、数秒後に復活する敵キャラだ。


「これは驚いたね……シセ、どうする?」


 私は考える。しかもこの敵、衝撃を受ける度に毒ガスをばらまいているようにも見える。問題はないだろうが、万が一濃度が濃くなりすぎて私の結界で防ぎきれなくなったら問題だ。


 ふむ。しかし攻撃を与えても復活するか。


 ならば……これならどうだろうか。攻撃を与えても復活するのならば、復活できないように木っ端微塵にすることだ。


 私は手のひらを魔物に向ける。


「《粉砕クラッシュ》」


 今度は、魔物の体自体を粉々にしてしまう魔法を発動した。相手はガタガタと震えだして、そのまま押しつぶされてしまう。


 しばらく観察してみたが、全く復活する予兆は見られなかった。


 どうやら作戦は成功したらしい。


 ウェイド辺境伯は頭を掻きながらケラケラと笑う。


「恐ろしい魔法だねそれ……俺に当たったらと思うとぞっとするよ……」


「試してみますか?」


「それ……復活できる? なんか死者蘇生みたいな魔法持ってる?」


「それはまあ、お楽しみってことで」


「あ〜そう。だって、エリック」


 ウェイド辺境伯は急に話をエリックに振る。


「嫌ですよ僕! やめてくださいよ!」


 どうやら本気で嫌らしい。まあ私もこんなことをしろって言われたら、たとえどんな魔法をこなす賢者に言われようが全力で断る。


 逆にこれでやるだなんて言われなくて良かった。


 ともあれ。


「いったんここはいいでしょう。別の所へ向かいましょう」


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