31.転生転移者が他にもいる可能性
私はウェイド辺境伯が待っているであろう自室へと向かう。扉の前に立ちノックをすると、普段とは違う声色が聞こえてきた。
「師匠! おはよう!」
扉を開けると、エリックが嬉々とした様子で手を振ってきた。どうやら先に集まっていたようだ。
しかしウェイド辺境伯の姿が見当たらない。
「エリック、ウェイド辺境伯は?」
エリックに尋ねると、なんともない様子で答える。
「ウェイド辺境伯は買い物に行ったぜ。なんかどうしても買いたいやつがあったらしくてな」
買い物……珍しいな。必要な物資はギルドマスターが用意してくれているだろうし、それ以外の物を買いに行ったのだろうが。
しかしあまり想像できない。
ウェイド辺境伯がそこまでして買うものを考えていると、バタリと扉が開いた。
「ウェイド辺境伯……?」
私は思わず小首を傾げてしまう。なんたって、バックパックを背負ってかなりの大荷物だったからだ。
「ごめんごめん! 待たせちゃったね。万が一のことを考えて、シセに必要なものを買いに行ってたんだ」
「私……ですか?」
まさか私の名前が出てくるとは思わなかったので、更に小首を傾げてしまう。
私に必要なものなんて、あまりないように思えるが。
しかしウェイド辺境伯は嬉しそうにしながら、バックパックからとあるものを取り出す。
「これだよ、寝袋! これ本当にどこにも売ってないんだよ。詳しい話は知らないけど、なかなか輸入できないらしくてね」
私は寝袋と聞いて驚いてしまう。
どうもこの中世のような世界にあるものとは思えなかったからだ。
輸入……詳しい話は分からないが、少なくともこの世界で扱っているようには思えない。
私も転生者という身分ではあるが、恐らくは私と同じ転生者が取り扱っているものだろう。しかし……転生する時にわざわざ持っているとも思えない。
恐らくはこの世界と日本を含むまた別の世界へ自由に転移できる能力を持っている人間だろう。
転生転移者は少なくとも、何かしらチートを与えられることが多い。私はと言うと、知識面においてのチートを与えられた。
まあ……正直転生転移者と会う機会なんてないし、会えたとしてもその世界に適応している人間だろうから、判断はできないけれど。
ともあれ、寝袋はとてもありがたい。長期的な滞在は無理だろうが、緊急時において多少なりとも助かることにはなるだろう。
「ありがとうございます、ウェイド辺境伯」
「いいんだよ! 役に立ってくれたら嬉しいな」
【あとがき】
ここまで読んでくださりありがとうございます!現在進行形で外にいるので、スマホで執筆しました。昔はいつもスマホだったのですが、普段はPCで執筆しているので新鮮でした。
18時よりも遅れてしまいましたが、無事皆様に届けることができてよかったです!引き続きよろしくお願いいたします!




