25.ゴーレム戦
転移魔法陣から出てきた私たちは、目の前にある洞窟を見据える。なんというか、魔族が出入りしていると聞いていたから仰々しいものを想像していたが、別になんともない洞窟だ。
ただ……確かに中から魔族の反応を感じる。
恐らくは五体くらいはいるだろうか。
「魔族の反応が五体あります。少なくとも、以前私とウェイド辺境伯が邂逅した個体と同程度か、それ以上のものかと思います」
私の言葉を聞くと、ウェイド辺境伯はごくりと唾を飲み込む。エリックはエリックで対応はしたことがないのだろうが、そもそも魔族自体が格上であることには変わりないので、緊張している様子だった。
「シセ、俺たちにバフを頼む。多分常に発動して貰うことになるだろうが、負担は大丈夫かい?」
「もちろんです。一応、魔力の扱いと量には自信があります。少なくとも二十四時間以上は維持を続けることはできると思います」
私の言葉聞いて、エリックが目を見開いて驚く。
「二十四時間以上!? 師匠、それは嘘じゃあ!?」
「嘘じゃないですよ。事実、結界は常に展開を続けていますし」
「ああ、そうだった。というか、結界を維持しながらバフも維持するって、人外染みているというか!」
あわあわとしているエリックの肩を、ぽんぽんと叩くウェイド辺境伯。
「シセは規格外なんだ。ここで驚いていちゃ、体が持たないよ」
「まあ、確かにそうですね。その通りです」
ウェイド辺境伯とエリックが二人で納得したのか、ずっとうんうんと頷いている。というか、人外だなんて言われるのは心外だ。
少しばかり私は悲しい気持ちを抱くことになる。まあ別にいいんだけれど。実際問題、聖女の魔力量は規格外だ。
少なくとも、人間界の中でトップに君臨するレベルのものだからな。
「とりあえず、皆さんにバフを付与します。基本的には攻撃、防御、素早さの三つ。後は細かい耐性や無効などのバフも付与します」
ウェイド辺境伯とエリックが何度も頷く。
「それじゃあ行きましょうか。魔族狩り、頑張りましょう」
私たちは洞窟の中に入っていく。中はジメジメとしているが、明かりは松明で確保されている。これだけでも中に何かがいるというのが分かる。
ダンジョンならまだしも、普通の洞窟などに明かりがもとからあるなんてことはないからだ。
ともあれ、私が光源系の魔法を発動しなくてもいいということなので、楽には違いないけれど。
私は歩いていると、急接近してきている魔物の気配を探知する。
「ウェイド辺境伯、エリック、来てます」
「ああ!」
「分かった!」
ウェイド辺境伯とエリックは咄嗟に武器を構え、冷静に奥を見据える。ドンドンと足音が地面を揺さぶり、目下まで迫ってくる。
——ゴォォォォォォ!!
巨大なゴーレムが拳を構えて、私に向かって一撃を放ってきた。
なんだ、この程度か。
これなら私が動く必要はない。
拳が私の目の前に来た刹那、一閃が放たれる。
ゴーレムの腕が、地面にゴトンと落下した。
ちらりと横を見ると、ウェイド辺境伯が剣を放ったようだった。
「シセ! 怪我はないか!」
「もちろんです。問題ありません」
ウェイド辺境伯は私の無事を確認した後、ちらりと後方のエリックに合図を送る。
エリックは弓を構えて、にやりと笑った。
「分かってますよぉ! 《破壊のエンチャント》——《爆裂矢》!!」
刹那、エリックの矢がゴーレムに向かって放たれる。
矢がゴーレムに当たった刹那、ゴーレムの体が一気に爆裂する。
粉々になった体を見て、エリックは「よしっ!」と拳を握りしめた。
私はふうと息を吐き、二人にサムズアップをする。
「さすがです」
二人もサムズアップをして、満足そうに笑った。
【あとがき】
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