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23.破滅への道(ルヴィン王子視点)

 ルヴィン王子の顔色は悪い。何故ならシセリアの居場所を探るのに、かなりの時間を要していたからだ。


 目撃情報をとにかく集めまくっていたが、どこかへ行く馬車で見かけたという情報だけしか手に入らなかった。


「恐らくはかなりマイナーな、誰も乗らない場所なのだろうが……」


 なので、今はとにかく御者に当たりまくっていると言う行動をしている。しかし、御者に話しかけようとする度に罵声を浴びせられていた。


「おいおい! 今更クズが俺に何の用だよ!!」


「いや……! シセリアという聖女を探していて、その情報を……!」


「はぁ!? 聖女様がいなくなったのは、てめえのせいじゃないのか!? 今更聖女様も戻るわけねえだろうが!」


 そう言って、御者が水筒に入れていた水を思い切りルヴィン王子にかける。びしょ濡れになったルヴィン王子は、怒ることもできずに、ただ無言でいることしかできなかった。


 普段こんなことを王族にしたら極刑になってしまうのだが、今のルヴィン王子にはそんな権限なんてないようなものだったからだ。


 きっと国王も、お前が悪いと言ってくる。


 しかし、ルヴィン王子も限界が来ていた。


 ルヴィン王子の心臓が早鐘を打つ。


 バクバクと心拍数が上がり、ルヴィン王子は次第に右手を剣に当てていた。


「お、おい……お前、何考えているんだ……?」


 御者もルヴィン王子の行動に怯む。しかし、ルヴィン王子は止まらなかった。


 剣を握り、思い切り御者に突きつけた。


「こっちはやべえんだよ!! 調子乗ってんじゃねえぞ!!」


 ルヴィン王子の罵声が轟く。周囲にいた人間もざわざわとざわつき始めた。


「いいから知ってる情報があるなら吐けよ!! 殺されねえうちにな!!」


 御者は突きつけられた剣先を見て、汗を流しながらにやりと笑う。


「おい……クズ野郎……俺はまだ生きたいから、これから知っている聖女様の情報を吐く。だけどよぉ、国民にそんなことした王子は今後大変なことになるぞぉ……?」


「いいから!! 吐け!!」


「あいあい……」


 御者はルヴィン王子に知っている限りの情報を伝える。ウェイド辺境伯行きの馬車に乗っていったこと、ウェイド辺境伯と少なくとも行動していること。


 ルヴィン王子はその言葉を聞いて頷く。


「あんなところに逃げていたか……だから情報があまりなかったわけね」


 ルヴィン王子は剣を鞘に納めて、くるりと踵を返す。


 しかし周囲の人間からは罵詈雑言の嵐で、ゴミなどが数多く投げられた。


 ルヴィン王子はゴミに当たりながらも「僕は悪くない……シセリアが全部悪いんだ」と何度も何度も自分に言い聞かせていた。


 だけれど、少なくともルヴィン王子は引き返せないところまで来ていた。彼がどう行動しようが、万が一シセリアを連れ戻そうが、待っているのは永遠の破滅である。


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