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20.掴んではいる

 私はウェイド辺境伯の下に戻って、少年の様子を見る。意識はまだ失っているが、外傷はないようだ。


「坊主! 大丈夫か坊主! シセ、これ大丈夫なのか!?」


 ウェイド辺境伯はかなり焦ってしまっているようだ。ともあれ、外傷はないとしても体の内部が何かに蝕まれている可能性は否定できない。


 ここは私の回復魔法で様子を見た方がよさそうだ。


「分かりました。少しお待ちください」


 そう言って、私はしゃがみこむ。そして、少年の額に手を当てて回復魔法を発動した。痛みを受けている可能性がある場所、それを探しながら癒やしていく。


 ……大丈夫。内部の痛みもなさそうだ。ただ魔族の何らかの魔法によって、強制的に意識を失わされている可能性はあった。


 ならば、その魔法を逆探知して解除していく。


 すると、少年はゆっくりと瞳を開いた。


「坊主!」


 ウェイド辺境伯はぎゅっと少年を抱きしめて、涙を流す。何度も「よかった……」と言って頭を撫でていた。


 少年は状況を理解しきれていない様子で、動揺しながら私とウェイド辺境伯を交互に見た。


「ど、どうしたのウェイド辺境伯。お姉ちゃん、これは?」


 まあ、詳しい情報は話すべきではないだろう。少年には少しばかり重すぎる。


「少し寝てしまっていたようですよ。そこを私たちが見つけちゃったわけです」


 そう言うと、少年は焦りながら答える。


「み、見つかっちゃったんだ!! ははは……それじゃあ今回は負けだね」


 笑う少年を見ながら、私はウェイド辺境伯をちらりと見る。ウェイド辺境伯は安堵しながらも、どこか決意めいた表情をしていた。



 少年と別れた後、私たちはギルドへと向かっていた。魔族が現れた以上は、報告する義務があるし、今回の一件が魔物の群れに関する手がかりになるかもしれないからだ。


 ギルドに行くと、すぐに奥の部屋へと案内された。少し待っていると、身長がかなり高い女性のギルドマスターが出てきた。


「まさか魔族がこの領地に入ってきているとはな。君たちも災難だったな」


 ウェイド辺境伯は真剣な表情でギルドマスターを見る。


「このままじゃ、俺たちの領地は大変なことになる。ギルドマスター、何かそっちでも情報は掴めていないのか?」


 ウェイド辺境伯の言葉に、ギルドマスターはこくりと頷く。


 そして、私たちの前に座ってメガネをくいと上げた。


「掴んでは、いる。確証は持てていないから、確かめる必要がある段階だがな」


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