16.メガネも意外と似合う
……結界は今日も比較的安定している。魔物が何度か攻撃を仕掛けてきているが、どれも速やかに対応している。
破壊されることはまずない。ただ、確かに高ランクの魔物は多い。しかし原因は未だ不明。対処しなければならないが、現時点だと対応は不可能。ただ守ることしかできない……か。
「んん……!」
私は目を覚まし、ぐっと伸びをする。窓の外を見てみると、今日も晴天。心地の良い朝だ。ベッドから下りて、廊下へ出て、のんびりとウェイド辺境伯の下へと向かう。
「あ! おはようございますシセ様!」
「おはよう」
セラスが元気よく手を振ってくるので、私も手を振り返す。すると、セラスは「きゃー!」と言って、もう限界オタクみたいになっていた。
ははは、というか限界オタクって単語を久々に使った。私のことでそうなってくれると思うとありがたい限りだけれど。
ウェイド辺境伯が待つ部屋の前に立ち、ノックする。返事をしてくれたので、私は部屋に入った。
「おはよう、シセ。今日もありがとう」
ウェイド辺境伯は、椅子に座ってメガネをかけ、新聞を読んでいた。ウェイド辺境伯がメガネをかけているのだなんて初めて見た。
なんだか新鮮でずっと眺めてしまう。
それに気がついたのか、苦笑しながらウェイド辺境伯は聞いてくる。
「どうしたんだい? もしかして、俺、変かな?」
「いえ! メガネも素敵だなって思って!」
「そ、そうかい? いやーメガネかけてて素敵って言われたの初めてかもな」
ウェイド辺境伯は悲しそうにしながら笑う。
「素敵……じゃなくて、胡散臭いは言われたことあるんだけど」
胡散臭い、か。まあ確かにウェイド辺境伯がメガネをかけたら、少しばかり胡散臭さはあるかもしれない。なんか、インチキ商人みたいな雰囲気があるのは確かだ。
「ああ、そういえば今日は例の坊主とかくれんぼでもしようと思っているんだ。シセも来るかい?」
「知っていますよ。セラスから聞きました。もしよければ、ご一緒します」
「おお〜そうかい。こりゃ坊主も喜ぶな」
ウェイド辺境伯はパタリと新聞を閉じて立ち上がる。
「それじゃあ行こうか。公園で待ってくれているようだから、急いで行こう」
◆
公園までやってきた私は、ふうと息を吐く。なんたって、意外と公園が広いからだ。王都にも公園はあるにはあったが、浮浪者もいたし土地が足りないこともあってとにかく狭かった。
こんなに広い公園なら、かくれんぼだってできるだろう。
「ウェイド辺境伯! それにお姉ちゃんも! 来てくれたんだね!」
少年は目を輝かせて、私たちのことを見ていた。