11.その調査、協力します
帰宅途中のことだった。どこでご飯を食べようか、もういっそのことギルドの酒場でわいわい騒いでしまおうかなんて話をしていたのだけれど。
「……近づいてきてる」
私は立ち止まって、ぼそりと呟く。というのも、念には念を入れて街に戻るまでは探知魔法を発動していたのだが、周囲に魔物をある程度観測していた。
まあそれはウェイド辺境伯領付近では魔物が発生しているという話なのだから当然ではあるが、しかし何やら私たちの方へと接近してきている魔物の反応があったのだ。
警戒は続けていたのだが……間違いなく来ている。
「ウェイド辺境伯、エリック。魔物が近づいてきてます。恐らく、ゴブリン以上の強さの魔物です」
私が言うと、二人は驚きの表情を浮かべる。
だが、ウェイド辺境伯はすぐに冷静になって私に確認を取る。
「数は?」
「一体だけです。ただ、少なくとも高ランクではあります」
ウェイド辺境伯はこくりと頷き、エリックを見る。
「警戒の態勢に入ろう。シセがいるから大丈夫だろうが、俺たちも全力で対抗するべきだ」
「そうですね!」
エリックは弓を構えて、ウェイド辺境伯は剣を引き抜いて周囲の警戒に入る。
「こっちの方角です。到達まで……十秒ほど……来ます!」
刹那、巨大な図体の魔物がこちらに走ってきているのが見えた。あの魔物……実物は見たことないが、名前は知っている。
オーガだ。
「なっ! 領地のこんな近くにオーガがいるのか!?」
ウェイド辺境伯は汗を滲ませる。それもそうだ。
オーガは普通、高難易度のダンジョンの奥地にしか出ないような魔物である。領地の近くの、こんな場所で出現するような魔物ではない。
どうやら……辺境伯領は本当にワケありのようだ。
「今度はみんなで戦いましょう。バフを付与します」
私はそう言って、詠唱をする。発動する魔法は攻撃強化と物理耐性の二つである。
二人の足下に魔法陣が出現し、淡く輝く。同時に二人へのバフが完了した。
ウェイド辺境伯とエリックは驚きを見せる。
「すごい……こんな強いバフを貰ったのは初めてだ」
「僕もです、ウェイド辺境伯……」
二人は感動していた様子だが、すぐに切り替えて戦闘態勢に入った。
「よし、俺たちも頑張るぞ! 坊主!」
「もちろんです!」
そう言って、エリックがまずオーガに向かって矢を放った。それも火属性を付与したもののようで、赤く燃えながらオーガの肩に刺さった。
同時に、オーガは悶絶しながら膝をつく。
「す、すごい……あのオーガが僕の弓で……」
エリックがぼうっとしている中、ウェイド辺境伯がオーガに接近。怯んだオーガに一閃を放つ。
オーガが苦しみながら悲鳴を上げた。この短時間で確実に弱っている。
よし、最後は私の攻撃で……。
「《衝撃》」
私が詠唱をすると、オーガに向かって打撃属性の魔法が放たれる。
オーガは吹き飛ばされ、完全に倒れてしまった。
私はふうと一安心していると、二人が嬉々として迫ってくる。
「やったなシセ!」
「さすが師匠だ!」
二人の饒舌っぷりに困ってしまう私。だが、ウェイド辺境伯はオーガを見て冷静に呟く。
「しかし、俺の領地で何が起こっているのか。調べる必要がありそうだ」
「そうですね! とりあえず、ギルドに報告しとかないと」
エリックの言葉に頷くウェイド辺境伯。
まあ確かに、このクラスの魔物が現れるのは異常事態だ。しっかり調査して原因を探らないと、領民も安心できないだろう。
「私もその調査、協力します。どれほど役に立てるか分かりませんが……」
なんて言うと、ウェイド辺境伯は嬉しそうにする。
「シセが協力してくれるなら、意外とすぐに解決しそうだな。本当にありがとう」
「い、いえ。別に」
やはり褒められてしまうと、照れてしまうのは変わらなさそうだ。
「領民の皆さんのために全力を尽くします」
よし。領民のために……ウェイド辺境伯のためにできる限りのことはしよう。
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