10.お金の使い道
私はわたわたとしていた。ウェイド辺境伯は急に私のことを褒めてくれるし、エリックは急に師匠と呼ばせてくれと言ってくるし。
「あ、あの。そんなにすごかったですか?」
どうにか聞いてみると、二人がすごい勢いで頷き始めた。そんなに頷くものなんですか。
「すごかったよほんと。あんな魔法、俺でも滅多に見られないよ」
「僕なんてもっとだ! 冒険者でもそんな魔法出せるやつなんてそうそういねえ!」
「え、え、そうなんですか」
動揺が隠しきれていない私。だけど、まあ嬉しいのには違いない。
戦闘で褒められたのなんて、恐らく初めてだ。そりゃ、そんなのを披露する機会がなかったからとも言えるけれど。
そんな中、ウェイド辺境伯がくすりと笑って言う。
「ともあれ。これで依頼はクリアだ。早速ギルドに報告して……報酬金を受け取りに行こう」
私とエリックはウェイド辺境伯の言葉に頷く。しかし報酬金か。なんだか本当に冒険者になったみたいだ。
聖女なんて、夢のある仕事のように見えて、ただの固定給が支払われているだけだからな。
なんて考えていると、ウェイド辺境伯が私を見る。
「ちなみに、今回の報酬金はシセに全部渡そうと思っているんだけど……エリックもいいかな?」
「もちろんだ。だって僕たちは何もしていないからな」
二人の言葉を聞いて、私は驚いてしまう。
「え、いいですよ別に」
しかし、二人は首を横に振る。
「いーや。今回はシセのものだよ。俺たちは何もしていないし、それにせっかく初めての依頼を達成したんだからね」
「うんうん」
ということらしい。ここまで言ってくれるのなら、せっかくだし受け取っておこうか。
まあ、それに初めての依頼で稼いだお金が嬉しくないわけではないし。
私は頷き、追加で二人にお願いをすることにした。
「分かりました……それなら、そのお金で一緒にご飯を食べに行きましょう」
そう言うと、二人がくすりと笑う。
「ほんと、君は優しいんだね」
「全く、お前はなぁ」
エリックはにししと笑いながら、私に言ってくる。
「それなら肉食おうぜ肉! ウェイド辺境伯もそう思いますよね!」
「ははは。肉かぁ、確かにいいかもな」
楽しそうにしている二人を見て、私は少しばかり心が満たされたのだった。