その3 永愛
永愛。
永六輔の永と、飯島愛の愛。
AIじゃない。
永愛は祈らない。
祈る習慣がない。
祈ったことはあるけど、何だかよくわからなかった。
永愛は占いに興味ない。
誰かに占ってもらったことはない。
動物占いの本を買ったけど、すぐに飽きた。
永愛は書く。
書きながら考える。
今までもこれからも。
永愛は思う。
「学校に行かないってことは、自分で考えるってこと」
自分で考えない人は、学校に行くべきだ。
教師に言われた通りにすればいい。
永愛は学校に行かない。
だから自分で考える。
「自分なりに自分で考えよう」
永愛はエジソンの伝記を読んだ。
エジソンは小学校を3ヶ月で退学した。
エジソンは図書館の本を全部読んで、ファラデーのロウソクの科学を見つけた。
永愛は思った。
「自分で考えるって事は、自分で本を探して、自分で本を選ぶこと」
永愛はエジソンみたいに図書館の本を全部読まない(読めない)。
でも読書が好きなので手当たり次第に多読した。
永愛はエジソンみたいな発明家じゃない。
でもエジソンの影響を受けてる。
自分に合う本を、自分で探して見つける事を教えられた。
永愛は思う。
「宗教をやらないってことは、自分で決めるってこと」
自分で決めない人は、宗教をやればいい。
揺り籠から墓場まで、言われた通りにすればいい。
永愛は宗教をやらない。
だから自分で決める。
「自分なりに自分で決めよう」
永愛はナイチンゲールの伝記を読んだ。
ナイチンゲールは進路で悩んでいた。
ナイチンゲールは神の声を聞いた。
「神に仕えなさい、自分の信じる道を進みなさい」
英愛は思った。
「自分で決めるってことは、自分の信じる道を進むこと」
永愛はナイチンゲールみたいに神の声を聞かない。
でも不思議な体験をした。
永愛はナイチンゲールみたいな看護師じゃない。
でもナイチンゲールの影響を受けている。
自分の信じる道を進む事を教えられた。
永愛は書く。
書きながら考える。
今までもこれからも。
永愛の信じる道は文芸創作だ。
文学じゃない。
文学は大学の学問の意味が強い。
学校に行かない英愛は文学者とは程遠い。
でも文章芸術家なら遠くない。
だから永愛は文芸作家だ。
「年齢は?」
「まだ決まってない」
「性別は?」
「まだきまってない」
「出来たてほやほやのキャラだからだね」
「それもあるけど、決める必要がない」
「君は書く人だから、見た目にこだわらないんだね」
「作家より作品で判断して欲しい」
「美人作家で売るのは邪道かな」
「それは作家芸人、もしくはタレント作家」
「勝手にやってればいい?」
「わたしは作品だけ見て欲しい」
「学歴も余計な情報かな」
「わたしは作家の学歴を気にしない」
「学歴を重視する人もいるね」
「画像と素顔が、まるで別人な事もある」
「永愛は女っぽい名前だ。もし男なら詐欺った事にならないかな」
「永愛はペンネームだ。永愛というキャラが書いてる」
「作家が永愛仮面になって書いてるわけだね」
「永愛仮面は年齢性別未設定だ」
「永愛仮面の中の人に、性の違和感はあるのかな」
「あると思う」
「だから性別未設定の永愛仮面になるんだね」
「その方が落ち着く」
「年齢も未設定だね」
「年齢を意識しない。正確な年齢をすぐに言えない」
「だから年齢未設定の永愛になるんだね」
「その方が楽だ」
「永愛は年齢性別未設定だから、年齢性別を主題にしないのかな」
「それらの問題は興味あるから作品で取り扱う」
「今からちょっと披露してくれるかな」
「わかった」
独り暮らしで友人がいなく、鏡を見ない人は、あまり年齢を意識しない。
静かに生活してれば、体力を使わない。
人間は他者と関わる中で、自己を認識する。
美魔女か、老けてるか。
男らしいか、女っぽいか。
モテるか、モテないか。
性の違和感は、ジェンダーの問題だ。
他者と関わる中で、男っぽいとか女っぽいとか自覚する。
心に性別はない。
身が男なら心も男。
身が女なら心も女。
身が中性なら心も中性。
身が両性なら心も両性。
性転換手術した元男は身体障害者のようなものだ。
下半身のない身体障害者の男は男だ。
身と心、物質と精神は、それぞれ対応する。
これらは表裏一体で切り離せない。
生物と環境は切り離せない。
人間は酸素を吸って、二酸化炭素を出す。
人体の60%は水分だ。
地球は太陽に生かされている。
太陽系は宇宙の影響下にある。
人間と地球と太陽と宇宙はつながっている。
切り離せない。
つまり物質と精神は表裏一体で切り離せない。
だから身と心は表裏一体で切り幅せない。
よって体の性別と心の性別は同じ。
体と切り離した心だけの性別はない。
性の違和感はジェンダーだ。
社会の役割の違和感だ。
性の違和感がある人が、孤独になれば、性の違和感は弱まる。
冥王星が惑星かどうか、沖ノ鳥島が島かどうか、は言葉の問題だ。
言葉でどう分類しようが、冥王星自体、沖ノ鳥島自体は変わらない。
性の違和感も言葉の問題だ。
言葉で男女にわけるから、違和感になる。
混血が進むと、どの人種かわかりにくい。
ある作家が孤独に生きてるなら、年齢性別を意識しにくい。
それに慣れてるから、年齢性別の確認が煩わしくなる。
だから作家に興味をもたれたくない。
作品だけで評価されたいのだ。