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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第四部 異世界×駆け出し漫画家 前編
96/124

第十五話 トレーニング開始!!!




   【陰キャの狙撃手 ケント・オルカ】




   ヤバイヤバイヤバイ!!!!!!!死ぬっ!!!!死ぬるっ!!!!!!

絶賛高さ三メートルの肉食カマキリに追いかけられています。



「偽ィヤイヤアヤアヤアヤアヤアヤアヤアヤアねぇ?異疑義偽木々ギギギ技ギギギ!!!!!キチキチキチキチキチ」



なんか!?なんか!?

すんごい威嚇音立ててるんですけどっ!?!?

話し合いませんっ!?カマキリさんっ!?!?カマキリさーーーーんっ!?!?!?



           【ブンッ!!!!!!!!!!】



ひぃいいあいあいいあいいあいいいあ!!!!!!!!!

頭の上をガードレールみたいな鎌が通過する!足元を通過する!!!!

ジャンプして、スクワットして、ジャンプして…

タイミングがずれればワイはあっという間に膝から下がなくなって、凶暴なブルに捧げられたソフビ人形のごとくと化す…

死ぬるっ!!!!



「くそっ!こうなったら借りてるライフルでってあああああああああいあ!!!!!!!!!!」



さっきの一撃でライフル真っ二つ!!!!!!

鉄だが!?鉄なんだが!?!?スパッ!!みたいな効果音出てましたか!??

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!



   【新しいスキルが解放されました!】



はっ!?ナイッスぅ!!ー

別スキル【ステータス表示】の画面に新たなコマンドが増える!

ニュースキル!その名も!!




   【やらかしLevel1】:やらかしたー…、でももしかしたらワンちゃんセーフ?みたいな時に『いや、確実にやらかしてます。』と現実を教えてくれるスキル。


使用例:やっべ…、今月財布ピンチじゃんっ!?行けるっ!?教えてスキルっ!!


『いけません。過去の使用額から推測して浪費を最低限に抑えても無理です。』




…。

…、いるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああいあああああああああ!!!!!!!!

ここに来てくっそ使えないスキルなんか解放してんじゃねぇえええええ!!!!!!!!!!!

アホか!?バカなのか!?死ぬのか!?!?



くっそ、こんなコント始めてる場合じゃない!!

こうなったら一か八か―



   【鎌切りブンッ!!!!!!】



だめだ!

ノリとか気合いで行けるわけでもなさそうっ!

どうしたら…

その時奇しくも【思考無線そーっとりすなー】という思考を読むスキルのLevelが上がった。



(カマカマカマ…、このチンケな獲物…、肉付きがいいな…、まずは足を切り落として…)



野生のカマキリめっちゃ怖い…

スキル使わなきゃ良かった…



(隙アリッ!!!まずは右脚…!!!)



!?!?

狙いが…、あっぶね!!!!



(ちっ…、ちょこまかと…疑義偽ギギギ…、なら広範囲で逃げ場無くして…)

【魔蟲攻撃:毒火どっか当唾あだレ】カマキリが口から引火性の高い火を吹こうとしてる。



でもそのモーションが始まる前に対策を打てる…

真っ二つになったライフルを前のめりのカマキリの後ろ脚目掛けて投げる!

この勢いで走ってるなら…!!



ライフルの重みでストラップ部分がカマキリの後ろ足に引っ掛かり、カマキリはバランスを崩し前のめり…!

勿論真ん中の脚で踏ん張るんだろうけど…



(ブッ愚ゴオオオォオォオ!!!!!!)



反動で吐く寸前の粘液が口から少し漏れる!

一瞬の隙!

引火性の高い火、ご丁寧に沢山口に溜めちゃってくれてさ…

全長三メートルあっても屈めば1m弱…、狙いを絞る…、一発しか無い…



肉薄してくるワイに咄嗟にその火を吐き出そうと口を開ける。

外郭は硬くても中は柔らかく攻撃がとおるというお約束展開に賭ける!!!



   【狙撃魔法:いにしえの銀弾】click!!!!! bang!!!!!!



「偽ィヤイヤアヤアヤアヤアヤアヤアヤアヤアねぇ?異疑義偽木々ギギギ技ギギギ!!!!!キチキチキチキチキチ」(熱づぃ!!!!!!愚ャァァ!!!!!!!)



カマキリの丸焼きいっちょうあがり!!!!

ザマァ見ろ!!!!!!!

やった!

なんかワイかっこよ…



「剛ココごゴゴゴギギギィイイイイイゃぁい亞亞亞亞亞亞!!」

「キョ虚ェェエエエエエエエ!!!!!!!!」

「忌鬼ギギギギギギィイイイイイヤァァイアアアイアアあはは?ギギギ疑義疑義!!!!!!」



森であんだけうるさくして、火まで燃えてる。当然、お腹をすかせた他の魔蟲達はそれはそれは苛立ち、ワイの脂肪肉に狂喜乱舞しているのか、雄叫びを上げながら辺りを取り囲む。

思考無線そーっとりすなー】は使いたくない…

…、終わったー…。



四方八方、十数匹、ニ、三メートルのカマキリにムカデ…

そういえば反対側に沢山いたもんな…

半ばグロい死を覚悟する。

なんとか逃げ切る方法を一瞬模索するも隙間を抜け出るだけのスペースはにじり寄る彼等によってすでに埋められていた。



「壮観だ。草間蛇そうかんだ、勘だかなんだか知らんが…、嘘だからか、そう浮かんだからか…、甲高な魔の徒の慟哭どうこくが聴こえるなら…」

【召喚魔法:Explode:US7章8節 蛇佑だゆう】紫キャベツ一枚を垂らしたような地面に生える草が、それを下顎にして蛇になってニュルニュルと這い出てくる。それに目を奪われてると気がつけば辺りに落ちた小枝が同じ様に蛇腹をズリズリと動かして居ることに気づく…



赤紫のハットスーツに包まれた男の一声で、あっという間に魔蟲が飲み込まれていく…

シューシューと言う音は蛇の威嚇音か…、彼等に埋もれ中で蟲達が溶けていく音なのか…

助かった…



辺りに白い煙が立ち上り始めると、森の木々を踏み分けて男が姿を現した。



「本当に殺りやがった…、冗談だったのに…」



な?は?え?

あんなかっこよく弾丸一発だけ入った古めかしい銃渡しといて!?!?冗談!?!?

さっき死ぬところだったんだが!?!?だが!?!?!?



「古い慣習だ。昔は一発の銃弾だけ渡して度胸と腕を見る慣わしがあったんだ。」



なんか隣りにいる赤紫の蛇が耳元で喋る。



「それにしてもなんでそんな前のめりなんだよ?」



…?なんでって言われても…



「強くなる為に、もうこれ以上余裕ぶっこいてらんないっていうか…、なんか色んなチャンスがあるなら全部拾っていきたいっていうか…」


「そうか…。若いってのはいいな。で、なんで銃構える姿勢そんな前のめりなんだよ?」



またこれかよ!!!!

くっそ!どいつもこいつも人をバカにして!!!!!



「どーぞ人をいじり倒してください!!!満足いただけるまでどうぞっ!!!どーせ勇者になりたい強くなりたいと啖呵を切ったアホですよ!!ワイは!!!!」


「あぁ、ハハそれな。受付のお姉さん、魔導水晶でんわ越しに笑ってたぜ。」



死にたい。お願いですから忘れてください。

スーツ取り行けない…、郵送でオナシャス。



「そうじゃなくてよ、お前あれだろ?強く、かっこよく成りたいんだろ?」


「え、はい。勿論。じゃなきゃこんなクソデカカマキリにみすみすカルビにされかけにきません。」


「じゃあ強くてかっけぇ奴みたいにしてろよ。」



成る程、まずは形からってやつ?

てかそれが出来るなら苦労してないんだが?



「お前等殺し屋ギルドの奴等は皆そうだ、前傾前傾、馬鹿みてぇにつんのめって、とっとと爺になりたがってんのかなんなのか知らねぇけど…」



喋りながら男はかったるそうに伸びをして天を仰ぐ。

ワイは一応話に集中する。

男は呆れたように、「お前も早く」と言う。

え?何を?伸び?体操的なこと?


あぁ、確かに背筋がポキポキ…、昔ネトゲやりこんでてた頃が懐かしい…。

異世界樹を登りだして以来、無茶苦茶な季節感ばっかだけど、春っぽい澄み渡った明静めいじょうの空がそこにはある。

ツバメが飛んでいる気もする、なんか鳥が鳴いてる。ステラーカケスみたいな青い鳥もいる。空から飛び出して産まれてきたみたいだな、あいつ。



「リラックスしたか?」



男はそのまま前屈後屈と上半身を前から後ろに反らす。

その動き一つに下半身の体幹の良さがうかがえるのだからやはり凄い。

俺も真似て体操、いっちに、おいっちに…



「止まれ。」



体を仰け反り、背中に聳える木々の枝分かれが見えたくらいで男がワイに言った。



「このまま撃ち殺せ。」



…。

見えないじゃん。前。

どうやって的狙うの?



「説明下手すぎるだろ…、もう見せろよ。」



さっきから黙って俺等を見ていた赤紫の蛇は見上げた先の木枝に絡まりついてワイに同調の意を示している。



「な!?わかりやすいだろ!?しょーがねーな…、いいか、見てろよ?」



ワイは男の正面に立ち目を見張る。

男はストレッチをする要領で前から後ろへ体をのけぞらし、いっちに、いっちに…パキューン

…?



「あれだな、仕事から疲れて帰ってきて、家のソファにドカっと腰かける感じにも似てるな…」



全然わからん。

速すぎていつホルスターから銃を抜いたかもわからない。

いつ銃を抜いたかわからないけれど確かに構えた感じが保安官クラリリスさんのと二重だぶってみえる。

体をのけぞる毎に銃を撃つその的の樹には〝逆さにした葉付きのどんぐりの形〟に銃弾がめり込んでいく。



「やってみ」



こ、こうか!?



「硬いなー…」



こ、これは!?



「まだ固いなー…」



ふぬりゃっ!!!



「ダサいなー…、センスねー」



今さらっとディスったぞこいつ。

ならこれで!!!!



「うーん…」



せめてなんか言って。



「何かこう、余裕のある感じがなー…、切羽詰まってると言うか、セコついた感じに見えちゃう訳よ。ykwsayin?

こう、男なら決める時は決める!それ以外はゆったり構えて…」



肩を揺らしながらステップを踏むように歩み寄ってくる男は、俺の膝を裏からインソールで小突く。

膝がカクンっとなって、重心が一瞬後ろにブレる。重心を戻そうとするワイの方に男が手を置…待て待て待て倒れる倒れる倒れる!!!!!



「ギブ!!ギブ!!」


「今のカクンって力抜けた感じ分かった!?!?」


「わかった!!わかったから!!倒れる!!!倒れるって!!」


「え?きこえなぁい!」


「倒れるっ!!!まじまじマジ!!マジで!!!!!!」


「男ってのはー!その余裕ーのない時にー!!よゆーある素振りを見せてー!!カッコよく決めるのー!!!

Do you understand???(おーわーかーりー?)」


「わかった!!!!わかったから!!!!ギブって!!!!!!ええええええええええ」


「oright!!(おけ!)」



男が手を離すとワイはあっけなく尻もちをついてまた仰向けになる。

男は空を覆うようにワイを見下ろしながら言った。



「本当に余裕のあるやつなんていねぇーんだよ!それでも悠然と!余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》にやってのけるのがかっけぇ男ってもんだろ?

だから、撃てるのは一発だけなの!」



哲学にして美学!












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