第八話 異世界で、少女を拾う
いい忘れていました。
今回はちょっとした二次創作物です。
OVAたのしみだぜ!
【陰キャの狙撃手 ケント・オルカ】
どうも、皆の狙撃手、ケント・オルカさんですよー!
女神ではなく魔王に異世界召喚された愛すべき陰キャッ///
肋骨と内臓、全身の筋肉は死にましたが、無事!大天使ミカエルの部下、レクソンを打ち倒しました!はい拍手ー!(パチパチ)
しかし!
レクソンを倒したものの、白鳩スーツには逃げられ、村はほぼ全焼。(知らない人は前章を読んでね!お願いっ!!(切実)
村の復興を数日手伝うとすぐに次の指令が【魔片王】さんより舞い込みます!
「get him on our side...
(白鳩スーツを仲間にしてこい)」
だそうです!
なんでも有名な占い師にそうするように言われたとか!
拗らせたメンヘラみたいな事を言い出す【魔片王】さんはやはりバカなんでしょう!
つい先週まで銃で撃ち殺しあってた相手ということを完全に忘れていますねー!
でもワイに拒否権はありません!拒否ればハラキリショーのエンディングが待っていますからね!!ヤケクソ
おまけにワイ以外のメンバーは皆満身創痍。。。
頼みのチート契約魔獣シルベスターさんも「元の体に戻った影響反動がでかい…、一度魔界に戻る」と渋い声で言って何処かへ!
さぁ!ついにケント物語ソロ編が始まります!!
不安しか無い…
そんなこんなで村を後にし白鳩スーツを追って次の目的地へ向かう。
雲海に浮かぶ島の端にあった村から次の目的地までは世界樹海を抜けなければならないらしい…
まぁ?
ゲームの中なら?
キャンプどころか動物さん達とあつまれスローライフ満喫してましたが?
なにか?
なにかぁあああ!?!?!?(逆ギレ)
村の人達とシルベスターに選んでもらったキャンピング道具を心細い森の中で広げる真夜中…
あれ、テントってどうやって張るの?
あ、すご、ワンプッシュで道具箱サイズの袋があっという間に六畳一間のテントに…
元の世界でもこんなんだっけ?
さて次は飯か…、火ってどうやって起こすの?
冷たいパウチのカレー…
ま、いいか。夜に火を起こすと狼呼び寄せるってアニメで見たことあるし…
あーあー、キャンプ系のアニメ見ときゃよかった…
履修する前に死んじゃったからなー…
なんにしても星は綺麗だ。なにせ空に浮かぶ島からだからね!
所持品の魔導水晶のカメラ機能で写真を撮ってみたけど目に映る景色とは全然違った、大事なものはいつも形のないものばかり…なんてね
てか寒ッ…!!!上空一万メートル寒ッ!
そんなこんなでもうかれこれ4日近くグダグダのキャンプ生活を続け、世界樹海を突き進むとやたら開けた荒野に出た。
どこやこれ…
ただ、なぜかは知らんが行く方向だけは明確に分かった。まるで体内に羅針盤が埋め込まれているみたいに。
あ、でも森でお腹減ったときにこの勘を当てに歩いて見つかったの怪しげな紫の毒キノコだけだったな…
やっぱ食えたのかなあれ…
と、そこに人影が歩いているのが見えた。
こんな所に?人?いや、勿論いないわけではないんだろうけど…
モンスターかもしれないので恐る恐る十メートルくらいまで近づくと、杖を片手によろよろ歩いていたその人影がバタリっと倒れた。
慌てて駆け寄る。おじいさんかと思ったらそれはすごく可愛い顔をした女の子だった。
「だ、大丈夫…!?」
「な…、何か食べるものをください…」
「ちょい待ち!」
ワイは慌ててバッグの中から非常食用の柔らかいミノタウロスの干し肉と乾パン、水を彼女の手に持たせる。
「どう?」
「ガツガツ!!美味ひぃれす!!!バクバク!!」
一安心。それにしてもこんなところを女子小学生が一人で歩いてるなんて…
格好は随分と拗らせまくった厨二病全開だ。
濃い茶微塵の魔法使いのとんがり帽子に、紅い隻眼、十字の眼帯、帽子と同じ色のマントは使い込まれ至る所が破けている。
手には指が出るタイプの黒革の手袋と、腕には包帯、紅玉が閃火煌煌と輝く背丈にあってない杖…
いや厨二病過ぎね?
全世界の黒歴史を自ら塗り替えているこの少女はそれでも頭に白銀の天使の輪っかが付いて、ちょっとひん曲ってるけど…
背中にはニケの様な力強い大きな翼が、今はまるで元気のバロメーターの様にぐったりと生えている。
厨二病だけれど、見た目から察するに天使なんだろうな…
「パパとママは?迷子なの?」
「ガツガツ…あっ、お構ひなふ!!バクバク」
まぁ、天使だし大丈夫か…
街も近いし、この辺りはモンスターも居ないから平気だろう。なんかさっき凄いでかいカエルがいたきもするけど…
「じゃ、気をつけてね!」
「あっ、ひょっと待ってふあふぁい!モグモグ」
食べてからでええんやで
「ゴクンッ!!…ゴクゴク、プハーッ!!。あのー、街までおぶってって貰えませんか?」
え?
「見ての通り魔力を使い果たして一歩も動けないのです!なので!おぶってってください!」
すんごい厚かましいじゃん…
いや、おぶってくのは良いけどさすがに小学生抱えて歩いてたらピーポーピーポーしちゃうから出来れば…
とリスクのでかさを考えていたのが表情に出てたんだろう、少女は矢継早にまくし立て始める。
「こんな所に美少女を見捨ててくなんてあんまりじゃないですか!それでも冒険者ですかっ!?あれですか!うちのパーティーのリーダー並みにクズなんですかっ!?」
そんな言う!?
しかも自分でサラッと美少女って言っちゃってるし…、いやまぁ否定はしないけどさ…
でもなー、絵面やばいしなー…
「じゃあ、これあげるよ。魔力が回復するポーション、はい。」
そのまま立ち去ろうとするワイ。ロリコン歓喜のこのシチュでもワイはシルベスターを見習い渋く!かっこよく背中を見せ…
「街はそっちじゃないですよ」
「…。」
「…。」
くそっ!!!恥ずかしい!!!
「それにこの辺りには魔物もいるんです!このポーションで魔力が回復しても万が一ということもありますっ!!」
なんでこんな所に来たんやおまい…
「仕方ないな…、じゃあ…」
ワイはテントで彼女を簀巻きにしてロープで引っ張っていく。幸いこの辺りは和歌山の白浜みたいに綺麗でサラサラの砂地、魔法で強化されたこのテントが破ける心配は万が一にもない。
「いやもう普通におぶれよっ!?!?」
それはできん
万が一お母さんがこの状況を見たら「うちのケントがついに越えてはいけない一線を越えてしまうた…」と泣きかねない
結局ポーションで魔力は回復したみたいなので、彼女に道案内を頼む。
ポーションでは全回復はしなかったのか、彼女は杖を使ってよろよろと歩く。蹌踉とした歩みに、ズルズルと音がしそうなほど大きな翼がぐたりと引っ張られている。少し歩いてはその翼が重いのか、躓いては倒れ、また立ち上がる。
「飛ばないの?」
言ってから何か地雷を踏んだらしいことにすぐ気づいてしまったと思った。
「人間は歩くんですよっ!なんですか!疲れたんですか!?街まで後少しですからっ!頑張ってください!!!言っとくけど私はおぶれませんからね、この背中の翼が邪魔なもので、ええ!!!」
なんかものすごい逆ギレを食らってしまった…
怒らせちゃったかな…
てかなんで俺が発破を掛けられてんだ?
仕方が無く、謝る意味も込めて彼女の翼をそっと後ろから持ち上げ二人で歩くことしばし。
白浜の荒野を歩く天使と、その天使の翼を持ち上げ後ろに続く軍服を着た陰キャ。
どんな世界観だよ
「さ、着きましたよ。あれがお探しの街です。」
少女はぶっきらぼうに街の入り口でそう言った。
ちらほらと並び始めた家はどれも幻想的で、家の壁には蔦が生い茂る。木霊なのか、妖精の灯火なのか、白いふわふわ光る粉雪みたいなのが辺りに舞い、陽の光が近く、人生で初めてサングラスの必要性さえ感じた。
小さな山々と森に囲まれた街の中心部、十㌔乃至先に、東京タワーみたいなバカでかい大木が聳え立つ。その上部はさらに雲に覆われ、大木の枝分かれさえ見えない。
ここであの白鳩スーツを見つけるのは骨が折れそうだ。
「よ、よかったら道案内のお礼に晩御飯でもご馳走しよう…か…?なーんて…アーゴホンッ」
その言葉は単にお礼以上の意味は無かった。どうせ白鳩スーツを探すのに時間もかかるし、情報収集の意味もあった。彼女はこの街の事を知ってそうだったし、ただ、余りにも呆気らかんと〝はいさよなら〟の空気を醸し出す彼女になんだか放っておけない気持ちが芽生えたことは否定しないけれど。
でも途中まで言いかけてなんか変な意味合いに聞こえて来て語尾が宙にか細く消えていく。
「なんですか?行きずりで出会った女子にナンパですか?」
「あ、いや、別にそういうわけじゃ…」
「別に構いませんが、ただお店は限られますよ。多分…」
俯き言葉を濁す彼女の本意がわからなかったけれど、とにかくこの不思議な冒険パーティーのロールプレイングがもう少し続くことがなぜだか少し嬉しかった。
けれどいざ街の中心部に向かい始めると何かきな臭いこの街の洗礼がワイ達を襲った。
まるで田舎の森の中、大きな家が立ち並ぶ森のちょっとした獣小道を進んでいく。羊腸小径って確か言うんだよな。こういうグネグネ道。
そして街が見下ろせる小山の頂上から下り、もう目の前に街が始まるという所に小さなロッジの様な関所が構えていた。リニアのように地面から浮いて走る流線型の乗用車の出入りのチェックを、白い軍服を着た男が行っている。
よくよく見ると歩道はさっきの白浜の砂に対し、車道は大理石の様な何かで舗装され、レモン・ライム色の魔法陣が絶えず光を走らせている。
「奴等は歩きませんからね。歩くのは下等な生物にすることだと決めてやがるんです。」
ワイの不思議がる様子を見て少女が教えてくれた。いや、歩くのが下等生物って…
やり過ぎだろと思いながら、なんだかこの街の住む人間に対して不安が募る。
「引き返すなら今のうちですよ。奴等は排他主義的で、特にこの街は顕著にそのきらいがありますから。」
…。そう来たか…、人探しなんて一番難航しそうじゃん…、こんな時にシルベスターが居てくれたらなぁ…
「お前等、街に行くのか?」
車道の横道、明らかに整備されてない道を抜け関所を抜けようとすると軍服男に声をかけられる。なんかやな感じだ。
「ええ、中心街に。」
「余所者は長居すんなよ。悪いがお前等みたいなのには1秒だっていて欲しくないんだ。」
え、なんでいきなり?そんな?
軍服男の手首には少女の頭の上に浮かんでいる天使の輪っかのような銅のブレスレットが鈍色に光る。男はすぐに他の乗用車が来てその対応に追われ、ワイらはその後は何事もなく街に着いたものの、なんて対応だ…
「何もあんな言い方しなくても…」
「ここはキャラメルシティと言って、自分達をハイランダーと呼ぶ人達の自治区なのです。第三次異世界聖戦以後に特に余所者を嫌うようになり、自分達で中心街への一本道道を勝手に私道にして、通行客から金をせびっているのです。」
なんか昔メキシコにそんなギャングが居たような…
「まぁ、いいや。何かうまいもんでも食べて気分上げよう!!」
正直、異世界飯に心を踊らせ、関所のことなどどうでもよくなっていたワイは少女がまだ険しい顔をしていたのに気づかなかった。
ハンバーグみたいな粗挽き肉の焼ける腹を空かせる匂いと、誰かの食後の一服のタバコの匂いが風に運ばれ裏路地を駆け抜ける。
前を見ずに走る少年に道端でぶつかるように、その匂いの風は真正面からワイの全身を包み駆け抜けていった。
紅灯緑酒、クリスマスみたいなネオンの粒が詰まったおしゃれな中心街の外れにようやくたどり着いた。
どこに行こうか、いや、こういうときは男のワイがリードして店選びすべきだろうか?
「なんか嫌いなものとかある?」
「いえ、特には。」
「アレルギーは?」
「それもありません。」
「リクエスト的なのは…」
「なんでも良いですが、強いて言うならとある国の郷土料理、寿司というのが食べたいです」
おっと、財布が今ヒッと悲鳴を…
【魔片王】さんに成功報酬と今回の資金はもらって余裕は少しあるから多分いける…はず…
じゃあ、取り敢えずそれっぽい日本食や(あんまり高すぎず、かと言って回ってないやつ)を探し店に入る。
「しっしっ、うちにはその娘にやる飯はないよ」
あからさまに嫌な顔をしてみせるレストランのウェイター。店の入り口にある受付で門前払いを喰らってしまう。
あれー…、なんかもしかしてこの娘、昔ヤンチャして村八分になってるパターン…?
「悪いけどうちは不適合者に飯はやれないね」
次の店でもやはり怪訝な顔をされる、その次もその次も…。多分、皆俺の後ろで俯く少女を見て、態度を変え吐き捨てるように…
「大体堕天したくせになんであんたみたいなのがこんなとこにいるんだい?」
最後の店で唾を吐くように汚らしい表情でおばさんがそう言った。堕天?
とにかく埒が明かないので一人で買いに行ってテイクアウトにしようかと考えていた時、目の前から白衣を着た狼男、背の高い日本人、妖精族二人、ヒゲモジャの炭鉱属という珍しいパーティが歩いてくるのが見えた。
異世界で、それもこんな所で日本人に会うなんて…。
気がつけば辺りは暗く、メインストリートから外れた少し怪しげなところまで来ていたことに気づく。
声を掛けようか迷っていると狼男に話しかけられた。
「君、もしかして翔也君と同じ日本人かい!?」
耳と尻尾がワフワフしていてなんかカワイイ。