第六話 オカマのドワーフ
「えーっと、彼等がくれた手紙によるとここのアパートのこの辺のはず…、っと、あ、ここだここだ」
イマドキ手紙か、風流やな。
オイホ王国、王都シナシナシティーへ来て、
宿を借りて昨晩ぐっすり寝た俺らは、
案の定昼前にダっラー起きて、
そんでこれからセガラ達がこの王都に来た理由の一つでもある彼等の友人二人を訪ねることんなってる。
その友達二人は炭鉱族らしく、そら俺もテンションが上がる。
初の炭鉱族…、真面目で堅物のヒゲモジャ、けれど鍛冶仕事になると一流!!
汗と埃にまみれ仕事するそんな漢の中の漢と噂のあのドワーフ…、ついに!!
こんこん
「おーい!セガラだー!」
「あっ、は〜い、今開けま〜す」
ん?
ガチャ
「あっらー、セガラちゃんじゃないのーー!!
お久〜!!もう何年ぶり〜?
全然お店にも顔見せないんだからぁ〜!!
あら、ヤックんにヂェムちゃんも来てくれたのぉ〜」
「お久しぶりエディー!!」
「お久っ!!」
「お久しぶりぶり〜!!
と、あら〜そっちは新しい助手さん?
はじめまして〜♪」
は、ハジメマシテ…
「あらヤダ、なんか緊張しちゃってる〜?」
「きっと照れてるんだよ、エディーちゃん綺麗だから」
チガイマス
「もぅー、セガラちゃんお上手!!
あの人ならまだ寝てるけど…、ま、入って入って!!」
ナンテコッタ…
ドワーフガオカマダッタ…
小さくて、しかし筋肉はモリモリ、挙げ句オカマで絶賛キャラ渋滞中のエディーはもうひとりのドワーフと共同生活をしてるらしい。
小さな木造とレンガのアパートは部屋内もあちこちからツタが伸びて、玄関抜けて最初に案内されたLiving Roomには大きめのソファと、辺りに散らばる酒瓶。
初っ端からぶち壊された俺の生真面目で仕事一筋な炭鉱族のイメージ。
しゃーない、その同居してるもう一人が回復してくれることを祈るとしよう。
「ちょっと、アンソニー、セガラちゃん達来てるわよ!」
ソファで酒瓶片手にぶっ倒れてるドワーフをオカマ炭鉱族が揺すって起こす。
「おぁん?なんだぁ?今何時…、ってまだ10時半か…、もう少し寝るわ」
生真面目で仕事一筋…
まぁ、職人気質なのかもしれん
「ちょおっとぉ、寝るじゃないわよぉ、セガラちゃん達来てるって言ってんでしょ!?」
「なぁんだよ、俺は昼まで寝てたほうが午後の仕事の効率が上がんだよ…ムニャ」
若手プログラマーかお前は
「ったくこの人ったら酒ばっかし飲んで…、今お茶淹れるから適当に座ってて頂戴!」
エディーとやらオカマがキッチンへ向かう。
で、薄暗い、陽の光がやや少しだけ差し込んでるオープン前のスナックみたいな部屋のソファに4人で座る。
俺はなにしに来たんやここへ
「炭鉱族って武器作る専門は結構いるんだけど、最新の魔導具を専門にしてる人はあまりいなくてね…
でもアンソニーはそんな古臭い武器ばっか作ってる炭鉱族に嫌気が差して自分でこうやって仕事をしてるんだ!!
その仕事ぶりも一流でさ!
わりかし僕らみたいなメカヲタ界隈じゃ ‘’慣習をぶっ叩く頭脳派の天才!‘’ なんて呼ばれてたりするんだよ!」
その頭脳派の天才今酒飲んでソファで昼過ぎまで寝てんで
「ムニャ…ンゴッ!!ひ、閃いた!!」
と思いきやさすがセガラが一目だけある、夢の中でも何か新しい魔導具について考えつくのか…!?
「魔TENGAと魔ディルドをくっつけ…イデデデデ!!」
おいこら、ヂェムとヤックの前でなんて寝言を言い出してくれるんだこのジジイは。
俺はろくな事言わないこのヒゲモジャドワーフのヒゲと頬を引っ張りつねる。
「イデデデデ…、おぉ、セガラ!来とったのか!」
「お久しぶりだね、アンソニー!元気してたかい!?」
「もちろんじゃわ!お主が送ってくれた萌え絵のお陰で毎夜オナ…、オリジナリティ溢れる創作意欲が湧きまくりじゃて!」
絶対今こいつ放送禁止用語言いかけたろ
「さて、お主が来たちゅうことは、あの件か?」
「そう、あの件」
「そうかそうか、まぁ待て、実はな…、昨日遅くまでその件の最終チェックをファッ…Zzz、しとってな…Zzzクカー」
「…。」
叩き起こそか?
「はーい、お茶入ったわよ〜
ヂェムちゃんとヤックんはリンガジュースで良かったかしら?」
「うん!」
「おかわり!」
飲むのはえぇな
「ちょっと、あんたいつまで寝てんのよ、あんた今日店の開店準備手伝う約束してたでしょうが!!バシャア!!」
野太い声でそう言いながらオカマ炭鉱族のエディーがおっさん炭鉱族のアンソニーにお冷やをぶっかける。
「ガボガボッ!!ゴボっ!な、何じゃ!!寝耳に水魔法か!!?!!」
ただのお冷や
後ちょっと上手いこと言うな
てか待って、やっぱここそういうお店やったんか
どうりでミラーボールが回ってるはずや
「ったく…、さて、この麗しのエディーお姉さんとおやつ買いに出かけたい可愛い妖精さんはどこかしら〜♪」
「「はーーい!!!!」」
「よーし、そこの飲んだくれの大してない日銭でクレープ食べに行くわよぉー!!」
「「おーーーーーー!!!!!」」
こうして恐らく気を利かされて俺とセガラとアンソニーさんだけが部屋に残った。
俺もクレープ食べたかった。
「さて、女子供は行ったことじゃし、本題に入るとするか…」
あ、やっぱなんかちゃんとあるんやな
ドワーフのおっさんはパイプたばこに火をつけてプカプカと蒸しだす。
「それで、魔工智能の萌え絵制作の進捗状況はどうじゃ?」
違うかった
「実はその話をする為に彼、しょーや君を連れてきたんだ…」
そのために連れてこられたんや、初耳やで
真面目な顔してこの大の大人二人は何を言ってるんや
ま、ええけど←乗り気
「彼は転生前の世界で漫画家という絵描きの仕事を志していたらしくてね…
ポージングや細部の書き込みなんかも非常に上手くて、これは萌え絵生成に革命を起こせるかも知れないんだっ!!!」
「ほぅ…、して、当然その作品はすでに持ってきてあるんじゃろうな?」
「昨夜散々語らい合いながら下絵を描いてもらってね、これがそのブツだよ」
うん、深刻なトーンでやめてくれるか
後、徹夜作業やったから結構粗いで
「お主今トーン貼りは神国産を謳うレベルといったか!!??!!??」
いうてへんがな
「な!なんとこれは!!!??!!」
やめて、その俺の絵からパァァァみたいな光が出てくる演出やめて
「やはり転移者の技術はエグいのぅ…」
技術にスキルってルビを振るんちゃう
普通そういうのはチート系の魔力膨大とか、無限収納ボックスとかそういうんや
単なる絵の技術のことちゃうねん
「これからさらに彼に手伝ってもらえれば、これまで懸念されてきた異世界人っぽく無さを格段に早く修正できるかもしれない!
それに!
このアングル、図法はまだ魔工智能じゃ真似できない発想だよ!」
「た、確かにのぅ…
して、しょーやといったか、お主この先儂らがこの先二百年の人生を賭して成そうとしている萌え絵制作に協力してくれるか!?」
別にええけど
長寿の人生を棒に振ろうとするんじゃない
トンカチを振れ、トンカチを
「そ!そうか!、こりゃ頼もしい!!よーし、これから祝いの酒じゃ!」
さっきも飲んでへんかったか?
「あっ!と言うと思って…ガサゴソガサゴソ、はい!持ってきたよ!手土産の水猿酒!」
セガラがショルダーバッグから一升瓶を取り出す。
瓶は透明で、中身も透明やから清酒みたいなんやろか?
昼前から度数高いのはなー…
「おう!!気が利くのぅ!!クビグビ」
いや、ラッパ飲みすんなや
「グビグビ…、グビグビ…、」
え、嘘やん
一気は…
「プハー!!!やっぱ寝起きの一升瓶は格別じゃな!」
ちょっとひいた
アルコール度数12・8ってラベルに普通に書いてんで
「おっと、すまん!あまりの旨さにお主らの分まで…、待ってろ、今部屋から…」
「あぁ!いいよいいよ!!僕は平気だ!しょーやは…?」
あ、もう今の見ただけで酔いそうなんで
「そ、そうか?なんか悪いのぅ…プシュ!!」
って言いながら缶ビール開けんなや
「そういえば自己紹介がまだじゃったな…」
いやもう、十分キャラ渋滞してるんで大丈夫
「わしは鍛治部のアンソニー、見ての通り炭鉱族じゃな!」
鍛治部って…、かつて天皇がお抱えにしてた刀匠の…?
もしかしてこのおっさん炭鉱族、実はちゃんとした人なんか?
「あー、昔むかしじゃな、わしのご先祖様が天河原っちゅう東の国へ赴いてな…」
おぉ!!おぉ!!!?!?
まさかの激アツ展開、用語もそれっぽいやん!!!
てかなに、この異世界日本みたいなとこもあんのか?
「最初は鍛冶の伝承やらなんやらデカいこと言って向かったらしい
で、その東の国の吉原っちゅうところでアジアンビューティーってやつに骨抜きにされてしもうたらしくてな!!!
ほら、三歩後ろを黙って歩くとか言う、もうそんなん最高じゃね!?ってなったらしくてな…」
もうお前喋んな
「清酒も美味いし、それになんじゃ、職人気質の人間は割とイケメンやーいうてチヤホヤされるからそのまま住み着いたらしいな
だからわしも生まれはそこじゃ」
まぁ、この異世界に日本っぽい土地があるとわかっただけでよしとしよう
「今では吉原の他にもピンサロっちゅうもんがあるらしくてな…、わしはついぞ行けなかったが…、
なんでもすんごい場所らしくてな!!!これが!!!なんでも―」
やめろやめろ、今せっかく趣のある感じに異世界の母国がなっとんねん、それ以上国の恥を晒すなアホタレ
「興味深いね…、どんなところなんだい?そのピンサロ?ってのは」
やめんかい
このむっつり狼男
「さて、それじゃそろそろ行くとするか」
ん?どこに?
「あ、まだ言ってなかった…。これから世界樹の森へ向かわないといけなくて、翔也くんも来るかい?」
世界樹って酒買い足すのにコンビニに行くノリで行くもんなん?