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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第四部 異世界×駆け出し漫画家 前編
80/124

第二話 「信じる者は救われる」



「で、これが魔法!!!

やってみて!」


いや、できるか


セガラさんが指パッチンで火を指に灯し、

ヤックが口笛で旋風を起こし、

ヂェムが可愛らしく踊ってその風を操って辺りの落ち葉をかき集める。

で、3人は、はい次!俺の番!みたいにこっちを見ている。

おっけ!ここは主人公らしく秘めたる力を解放しちゃおうかな!!


できるかーゆうねん。




これまでの流れ☆



くっそ甘いハーブティーをいただき、

トロットロのシチューを食べ、

その隣に並んだ食卓上の穴あきチーズとパンを頂き、

これまた色鮮やかなフルーツ盛りを食べ終った頃には俺の筋肉痛は収まって、

まんぷくな俺達四人は食後の運動も兼ねて教会の外のくそだだっ広い広場で魔法をすることになった。


いや魔法をするってなんやねん、だから。


逆に問おう、ラノベ読者。

実際目の前にロリエルフだ狼男だーがおるから言うていきなり本気でダイアゴニョ横丁叫べるか?

大学出てコッチはまぁまぁな年やで?

無理やろ?


まぁ、もうここまで来て恥ずかしがるんは場が白けるし、それはなんとしても避けなあかん。

腐っても関西人や。

よしっ、いくで!!


「エぇクスペクトーーーーー、パトローーー南ーーー無ぅぅぅぅう!!!」


しーん。


あかん、今めっちゃ死にたい。

せめて笑えよお前ら。


「だめだね?」


「「うん…。」」


やめろ、冷静になるんちゃう。そこは笑うでええねん、それが正解や。


「ちゃんと信じてる?」


やめろロリエルフ、そんな真っ直ぐな目で滅多な事を言うんちゃう。

まるで俺が夢も希望も失った汚い大人みたいやないか。


「信じてる信じてる、めっちゃ信じてんで!(大嘘)」


「信じないと始まんないよ?」


ショタエルフ、なんやその某少年誌の主人公みたいなイケメンなセリフは、ちょっと腹立つで。


「ってゆったって、こんなん、どうやって信じるん?」


「どうやってって言われても…、さっき見たまんまだからなぁ…」


「その、俺の前の転移者は初めから出来たんですか?」


「「「うん!!!」」」


嘘やん。

え、俺才能無いパターン?


「アマツは凄かったよね!!」


「うん!!俺等よりも魔力多くてさ!!すげぇんだよ!あいつ!!

なんかブォーーーって、んでブァァァァァーーーーーーしゃァァーーーーん!!!って!」


いやだからその関西人の説明やめい。


「まぁ、多分彼は特別だったからね…」


やめてその俺がまるですげぇ普通すぎるみたいなん、普通に傷つく。


「元々この世界の事も知ってたみたいだし、日本よりもここで生まれたんじゃないかってくらいこっちの事詳しい事もあったし…

あれ…、待てよ、もしかしてアマツが言ってたのって…」


なんかセガラがいきなり深刻な顔して考え込み始めた。


「ね!しょーやはさ!なんで魔法信じないの!?」


でたなショタエルフ、なんでって言われてももう俺は汚い大人になってしまったからやで。


「そうやなー、なんかそんなんできたら無茶苦茶やん

いや、そりゃかっこええし便利なんはわかるけど、口笛吹いたら風が吹くって、ドラマでも中々ないでそんなんイマドキ」


「ドラマ?」


あ、ごめん、ロリエルフ。異世界にはないのかトレンディードラマ


「てか、この炎が現れるとかってどっから?みたいに考えちゃうねんけど」


「あー、それはね…、なんて言ったらいいかな…

ほら、空間中にアナザーリトルクォーツってあるだろ?

原子以下のその物質に一定の波動を用いることで―」


待て待て待て、用語を使うな用語を。読者も俺もわからんなるやろ


「でも、そもそも魔法とかそういう類のものを信じてないとこの世界には来れないはずだから、しょーや君も練習してるうちに出来るようになるよ!きっと!多分!!たぶん…」


なんで2回言った


「じゃあとにかく信じたらできるってことなん?」


「まぁ、簡単に言っちゃえばそうかな。

そもそも君の現実世界がどこにあってどんなものかはわからないんだけれど、例えばさ目の前に火を出すのってそこまで難しく無いはずだろ?

…なんだっけ、あの便利アイテム…ライトーじゃなくて、ファイトーいっぱーつしゃなくて…」


随分と転移者は余計な日本語教えてるなおい


「ライターか?」


「そう!それだ!よくよく聞いたら仕組みがよく出来てるから詳しく教えてもらったんだ!

シリンダーとか、脱脂綿とか、君達の文明利器はすごいよね!!」


ってことは転移者はZIPPO持ち歩く系の喫煙者か…

って、そんなんはどうでもええねん


「で、それがどう魔法と?」


「アマツはねー、信じるも信じないも自由だって言ってたよ!」


「そうそう!けど信じた者は救われる!!ってさ!」


…。


「俺達の世界で魔法を本気で謳えばキチガイだと思われる。

けれど、信じて実現させなきゃ、どの道未来なんて現状維持のただの空虚な現実だ。

って、言ってたかな。」


なるほど。わりかし地に足ついた事言うやん。


「あっ!見て!!」


ロリエルフが指差す先、そこには黒いインクで描いたような鹿が木陰の隅からこっちを見ていた。


「しょーやが出したんだよ!すげぇ!精霊だ!!」


あの黒いのが?どちらかと言うと悪魔みたいやで



プリプリ


「あっ!うんこした!」


ショタエルフはまだうんこをみて喜ぶ歳らしい。

俺はその憎たらしい鹿を眺める。

なんか感慨深い、あれがホンマに俺が召喚したんやとしたら自分がイメージした通りとはいかんまでも、現実的にありえん出来事が起きたんやし。

なんだか鹿が可愛く見えてくる。

なんかさっきからコロコロうんちいっぱい出してるけど。

その記念すべき俺の初の守護獣(?)はうんこの後にこっちを見て唇剥き出しで威嚇している。

大丈夫、俺は大人や。

向こうはいかに魔法で現れたとはいえ野生の動物、人間が怖いんやろ、わかってるで。

優しく、ゆーーっくり近づいて話しかけたら、もしかしたら動物と会話ができるかもしれへん。

俺はゆーーっくり近づいて声をかける。


「おいでーー、怖くないでーー」


「自分あほちゃん?何マジで鹿に話しかけてん?」


よし、今夜はジビエにしよう。


「こちとらもう初っ端冒頭でエクスペクトパトロー南ァ無う叫んで恥かき倒してんねん、今更へこたれると思うなよ」


「聞いとったで。さっぶぅ思て、冷えすぎてジビエなるか思たわ」


なにちょっと上手いこと言っとんねんこいつ、腹立つ


「ねー!鹿君は何食べるのー??」


「ん?あー、俺は普通に樹の幹の外側食べる事が多いでー?ちなみに気軽にアシカビって呼んでやー!!」


「アシカビ君こんちはー!俺ヤックー!!」


「はい、こんちはー」


「ねーアシカビん!木の幹味しないよーー!!???」


「これが案外いけんねんって!‘’しか‘’もたまにメープルとかついてたりすんねんでー?しかだけになー?|¢゜)チラッ」


その鹿ジョークの後にドヤ顔でこっち見んなや腹立つ。


「あっ!メープル俺も好き!!はちみつも好きだけど、メープルのが好きっ!!」


「そっかそっかー、やっく君は甘いものが好きなんやなー!

でも、甘いもの食べたあとはちゃんと歯磨かなあかんでー?

虫歯できると俺みたいに歯科行く羽目になんでー!鹿だけになっ!!!|¢゜)チラッ」


だからこっち見んなや

あと絵文字で上手いこと表現すんな、余計腹立つわ


「ショタエルフ君とロリエルフちゃんとまだまだ話したいけど、鹿兄さんそろそろいかなあかんわー」


「「えー!!!もっとお話したーーい!!」」


「俺もやー!!けどなー、そこの馬面のお兄ちゃんがひ弱でチンケな魔力しか持ってへんから長い事ここにはおれんのやー、ほんま残念やでー!

今回は特別出てきてんでー?!!ほんまはそのヘタレには俺を呼ぶ‘’資格‘’も、ほんまはないねんでー?鹿だけにー!|¢゜)チラッ」


何回おんなじネタやんねんこいつ。はよ行け。

後誰が馬面や

そもそも呼んだ覚えは…、ま、ちょっとあるけど。


「ほなまたなー!!」


「「ばいばーい!!!!」」


よし、行った行った。

ようやく俺が召喚した鹿はそのままパシャっ!と黒い水たまりになって、その黒い水たまりもなんか知らん間に消えた。


「中々高魔力で高位な精霊獣を呼び出せたみたいだねしょーや君!!」


なんかちょっと鼻息荒いセガラさん。 

あれが高魔力で高位とか嘘やん。

低級低俗の間違いちゃう?


「っと…」


頭が少しふらつく、長時間作業の後に急に立ち上がったみたいに。


「あれだけの高位な精霊獣を呼んでしまったからね。魔力消費も大分きつかったんじゃないか?」


あんなんをそんな真っ直ぐな目で高位な精霊獣とか呼ぶな。


「少し休もうか?おい!ヂェム!お茶を淹れてくれるかい?

日本人はお茶汲みかかりのお茶を飲まないとゴクッ!!キュピーン!!って回復できないってアマツに教わったろ!」


もう頼むからその転移者に教わった日本人に対する間違った認識改めて。

くそっ、あれを呼び出して俺がふらつかなあかんくなるというのは若干腹立たしいが、まぁ仕方ない。

非常食は確保できたことだし、少し休むとし…―



景色が 溶暗フェードアウト した。

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