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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第三部 陰キャが転生したらどうせこうなるのは知ってた
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第十話 魔剣プログラム




 元巨大地下施設のカジノホテルを後にした白鳩スーツの綛谷蓮大と赤橙の人斬り覚ノナキ、二人はエイダムが登った山の八合目付近、反対側までとある人物に呼び出されていた。

その人物こそケントが抹殺を命じられた【レクソン】である。

背丈四、五メートルにして、分厚き筋肉を黒黒とした肌で覆い、首に巻いた金の鎖は波止場で船を停泊させるのに使うやつほど大きい。

顔に入った入れ墨は古代の紋章、鋭い犬歯を豪快な笑みより覗かせる。


「おう、来たか…。おいお前らこれに魔力を込めろ。」

ティラレクソンは白鳩スーツと赤橙の人斬りがやってくるなり、自身の背丈よりも大きい魔導掘削機を見上げながら言った。


「なんだこれは…」

白鳩スーツは少し不機嫌そうな顔をしていた。自分の愛車が傷ついただけならまだしも、自分達を追ってきていた人間の事が少し気がかりで、車中では全く眠れなかったからである。


「…。」

一方の赤橙の人斬りは会話に参加する気は全くなく、狂言摺物きょうげんすりものなるものを熱心に読んでいる。

新聞の様なその藁半紙には今人斬りの故郷だけでなく、アシレマ大陸全土が熱狂している人気歌い手【オモア】ちゃんの情報が載っているのだ。


「これはな、【魔人パクリカ・レプリカ】様がこの山に封印されているという古代魔導兵器を掘り出すのに用意した代物だ。

最大圧力六魔トン、回転数実に1秒に六々六という規格外の出来だ。値段なんて、城が買えるレベルだゾ」

レクソンの自慢気な語りに白鳩スーツも息を呑む。その様子を見て満足げなレクソンはさらに続けた。


「だが、コイツよりももっと金になる物がこの山の下に眠ってんのさ。さっき言った古代魔導兵器…、【魔人パクリカ・レプリカ】様が言うには次の聖戦にはこれがあれば勝利は確実らしい…、さ、わかったらとっとと魔力を篭めろ!」

他にも【魔人パクリカ・レプリカ】様とやらは今掘り起こしているこの古代魔導兵器について何か細かい話をしていたように思ったが、ティラレクソンはそういう話は苦手だった。取り敢えず言われたとおりに掘削機につながれたケーブルの先の魔導水晶タッチパネルに手を置く二人。


「「…!?」」

手を置いた二人は仰け反るように驚く。

手を置いた瞬間、体に落雷のような衝撃が走ったかと思えば体中の魔力が持っていかれる…、小一時間も魔力を奪われていれば向こう3日はベッドの上になるだろう…

しかし驚くべきはそのマラソン後のさらに三日三晩の空腹の気分にさせる異様な魔力の吸引力にものともせず、彼ら二人が来るまでこの魔導掘削機を一人で動かし続けていたティラレクソンであった。


「なんだ、憂かない顔して?」

白鳩スーツの様子に小首を傾げ、尋ねるティラレクソン。彼はその重機のような巨体に似合わず、繊細で人の機微を分析する事には長けていた。


「実は此処に来るまでに追っ手とドンパチがあって…、それでそいつらがもしかしたらここまで追ってきてるかもしれなくて…」

それまで勝ち気イケイケだった蓮大の言葉の尾が下がる。ティラレクソンの反応を赤橙の人斬りも気にしていた。


「ふーむ、成る程な…、魔力を温存させろと…。しかし流石の俺でも一人でこれを動かし続けるのは無理だ。だがチンタラやってたら【魔人パクリカ・レプリカ】様がきちまう…。何か、何か良い手は…。」

そう言いながらティラレクソンは山の麓、エイダム達が暮らす村のほうをじっと見る。

能力スキル【予見眼】Level4を持つ彼の眼は、獰猛な咬筋類、肉食動物特有の縦一本の瞳孔がライターの火の様に灯されている。

それが揺らめき、楽しそうに未来を眺めるティラレクソンは笑みを顔に貼り付け言った。


「おい、その追っ手とやらはもう少しでこの山の麓のしけた村に来る。お前らそいつらを皆殺しにして、村を火で焼いてこい。ちったあこの山を覆う雪も溶けるだろう。」


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