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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第二部 異世界勇者パーティーが全滅した件 後編
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第四十八話 S字の星座とホンモノのプロローグ




   【陰の狙撃手スナイパー ケント・オルカ】




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃぃぁぅぁぅい!!!!!!!!!」




全身を突き抜ける早送りのビデオの光を浴びながらジェットコースターを3時間乗りっぱなしみたいなエグさだった…

その最中に走馬灯のように見たのは泰晴達が【魔人パクリカ・レプリカ】にやられるまでの九ヶ月間。

ウーメルや天王寺みたいに知ってる人達もいたし、知らないメンツもいた。




「あれが平行世界…?

って、あれ、俺普通に喋れてるじゃん」


「なんかかわいそうなどもりまくりのクソヲタみてぇなセリフだな。」


「うるせぇよ!」


「そうそ。アレが直近、およそ三十回目位の試行された異世界だな、うん。」


「それで、俺が居た世界ってあの後…」


「あっ、ソウソウ、それが…」


「あっ!まっ…」




「心の準備が」と言おうとした時には遅かった。

三者視点、ドローンの映像みたいに今回俺が居た異世界の一部始終が映し出される。

終わる頃には計6時間のくっそ荒いハワイのツアーバスのドライブを最後尾で終えたぐらい俺はグロッキーになっていた。




「おう、おかえり。」




そんな俺の気持ち悪さ露知らず、おかわりの紅茶をすするケプカプカさん。

なんかちっちゃくなって、浮かぶ絨毯の上の金の椅子にちょこんと座っている。




「ちょ、俺もお茶ください…」


「はいよ。」




マントのおばあちゃんがラスク付きで紅茶をくれた。


うっま。





「で、もっかい聞くけどなんで俺はここに来たの!?

てか俺どうなるのこれから?」


「シランガナってイッタガナ」




カッチーン!!!




「少なくとも元の世界では流行り病で確実に死んだようだがな」


「何さらっと最悪な事改めて確認させてくれとんじゃい!

なんか改めて言語化すると凄い絶望感…」



「ソダナ。まいどんまいどん。」




軽っー…




「まぁ、安心しろよ。生き死にの境なんて下らねぇもんもそうはねぇ。」




…、なんかさすが魔族って感じだ。





「さて、どうするんだ?スリッパーよ。」




ケプカプカが真面目な声音で聞いてくる。

でも聞かれる前に心は決まっていた。

確かに泰晴は元の現実で生きてる。

他の召喚される運命を辿った皆も今のところは無事らしい。

けど…




「俺、泰晴に頼まれたんだ。

皆を救ってくれって。

泰晴はこの世界線の未来も予測してたんじゃないかな…、自分が異世界に来なかった時の未来をなんとなく知っていて、それで俺に託したんだ。

なによりパクリカはまだ生きてる。

あいつが生きてるとひどい目にあう人が一杯でてくるよ、だから俺アイツを倒したい!」




ズズーッ。


「おい、茶はウメェがラスクより俺は月餅げっぺい派だといつも言ってるだろう【占術家ババァ】」


「聞けよっ!!!!!!!!!!!良いこと言ってただろ!!!って言わせんな!!良いこととか!!」


「どうしたスリッパー、大きな声出して。

茶が冷めるぞ。」


「そうじゃぞ」


「じゃなくて!!!!」


「わーかった、わかった。

さ、行って来い。」


「え?」


「倒してこいよ。」


「あ、いやその…」


「まさか俺達魔族に頼る気か?

俺を誰だと思ってやがる、

名乗ったよな最初に、俺こそが魔界大公爵ケプカプカ様そのお人だと。

本来ならお前のような人間が輪廻転生の恩寵を承ったところでお目にさえかかれない魔に棲まう貴族だぞ俺様は。」


「没落じゃがな。」


「やっかましい!【占術家ババァ】!!!

茶々を淹れてろ!」


「淹れさすのかよ。」


「…。」


「…。」


「…。」


「今のは悪くねぇツッコミだ、うん。」


「あ、あざす。」







「だが、誰かに頼って倒せんのか?

あのデブを?あぁ?」




ケプカプカは首をろくろ首の様に伸ばし、顔を五メートルに大きくして凄んだ。

怖い…。







「お、俺強くなるからさっ!

鍛えてくれよ!

正直あんなの見た後じゃ倒せる気全然しないんだ…、でも、でも俺倒したいからさ…」


「ちっ…」





パクリカは頭をまた元のサイズに戻した。





「まぁ、因果律にはお主と言えど逆らえんじゃろ…」




マントのおばあちゃんの一言にケプカプカは長ーーーいため息をついた。




「悪いが俺様は忙しい。他を当たれ。」




ケプカプカはそう言って近くにあった毛布を引っ掴んでヒョイッと絨毯を飛び降りる。


俺はどうしていいのかわからなかった。


勝てる…かな。


いや、かなじゃなくて勝たなきゃ…。うん。よし、やるぞ!やれる!やれる!!




「おいスリッパー、早くついてこい。」


「へっ?」




訳がわからず俺はケプカプカの後に続く。


結構な距離を歩いて辿り着いたのはさっきの幻影魔法とやらで垣間見た『魔片』のピラミッド。


この砂漠、やっぱここに通じでたのか。


ピラミッドの段を少し登って中に入る。

このピラミッドこんなに風化してたっけ…?


まあいいや。


内部の空間中央で眠っていたのは元転生者、【魔片王】

さん。

チューブがミイラみたいになった体のアチラコチラをこんがらがった風にして、その内の一本は上から彼の首を吊っている。




「パクリカ。俺ゃアイツが大っ嫌いなんだ。

それだけを理由に手前に試練とやらをくれてやる。」




ケプカプカの真面目な表情をじっと見つめる。

ケプカプカはまた長っがーーーいため息をついて、絵筆を取り出した。

何本ものチューブから【魔片王】の身体を取り出し、ふわふわ浮かせたまま今度はピラミッドの天井に何かの魔法陣を描いていく。



中々描き終わらない…


しばらくして絨毯に乗ったさっきのマントのお婆ちゃんと、なんか凄いオシャレな色黒のおじさん。


高そうな宝石を指にも首にも身に着けている。




「おぉ、来たか【宝石商ジュエルディーラー】」


「こんなところに呼び出すなよったく…。」




【ステータス表示】を使う事すら躊躇われるほどのオーラ。

圧倒的な魔力、近くにいるだけでむせそう…。めっちゃ強いコロンのせいもあるけど…。




「このスリッパーがどうやら下剋上をご所望の用だ。

で、あのアバズレ女神のところまでこのミイラと一緒に連れてってくれ。」


「はっ!?いや、人使い荒すぎんだろ!?こんなとこまで呼び出しといて出戻りかよ!?」




なんかすっごい誹謗中傷が聞こえてきた…




「ってことは俺はこれからそこでそのアバズレ女神様とレベルアップとかすれば言いわけ?」


「スリッパーのくせに物わかりが良いじゃないか。」


「そっそっそ、家では履き替えてスタスタスタってこら―!!!!!!!!!」


「案外ノリツッコミもわかってるじゃないか。」


「おいおいおいおい、何二人で話進めて盛り上がってくれてんだよ、俺はそんなのに賛同した覚えはねぇぜ?」




声の低いおじさんが言った。




「ボウズ、おじさんって心のなかで呼んでるの聞こえてるからな?」




えっ?エスパー…?




「てかアバズレ女神に頼まなくてもアンタがここでそのミイラを蘇生させればいいだろ、あの時代の大気汚染肌に悪いから俺嫌いなんだよ…」


「さすがに死後千年も経過してりゃ俺様とて蘇生は無理だ。」




なんで【魔片王】を蘇生させようとしてんだこの人達…

ってあ、心の声バレちゃってるんだっけ…

まぁいっ…

あれ?

今死後千年って、確か【魔片王】って俺がパクリカにやられてすぐに倒されたはずじゃ…




「その死後から千年経ったって言ってんだよ、馬鹿、察しろ。」




せ、千年…?

俺千年も塩漬けにされてたの?




「いや、正確には死んで千年して魂がここに流れ着いたが正解だ。

本来異世界の人間と言えどこんなに魔素の濃い魔界には来れねぇ。」


「えっ、じゃあ元の異世界ってどうなったの!?皆って…」


「お前のお友達がどうなったかなんて知るかよ!!!

ちなみにあの星なら跡形もなく吹き飛んだよ!!!

あのクソデブのせいでなっ!!!」


「ホイ、お茶」


「おお、すまねぇな婆さん。ズズーッ」




やっぱりマントのお婆ちゃんの茶は美味いらしい。

いかついソバージュぐるぐるヘアーのおじさんもホッと一息をついている。




「だからおじさんって呼んでんじゃねぇボウズ。」


「でも星が吹き飛んだって…」




事情を知りたくてケプカプカの方を見るとケプカプカさんはとんでもなく目を丸くして冷や汗をかきながらこっちを見ている。やな予感…




「いやー、芸術は間を空けるものじゃねえな。間違って召喚魔法陣描いちった★」


「おいまさか…」





!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

グ愚大オオオ汚るぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ堊亞嗚呼!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





天井画から飛び出してきたのは真っ黒の毛並みに金の鎖を巻いたスフィンクス。

鼓膜をつんざくような叫び声をあげてこちらにやってくる!!!




「おーし逃げるゾー」


「ホイ来た」




慣れたチームワークで絨毯に飛び乗り颯爽とピラミッドを後にするマントのお婆ちゃんとケプカプカ。って、



「「またんかいコラーー!!!!!!!!!!!!!」」




置いてけぼりをくらった俺とおじさんでその後を追う。




「ちょ、ギャランドゥおじさん!なんとかしてくださいよ!!!!!!」


「誰がギャランドゥおじさんだクソガキ!!!!

なんで仕事帰りにまたこんな走らされなきゃいけねぇんだよクソ!!!!!!!!!!!!



「くっそ!だったら…」

【魔導具:MP消費5k型拳銃】病み上がり、幻覚魔法醉い明けで無茶できそうにないけど、これなら!!







bang bang!!!!


どうだ!!!???








…。




…。


…。



!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

グ愚大オオオ汚るぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ堊亞嗚呼!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!









「全っ然だめじゃん!!!!!!????」




銃弾が砂にのめり込んで、スフィンクスがくすぐったがるように前足で銃弾を当てた額を擦る。




「あれはケプカプカのアホが描いた召喚獣だ!

ただのスフィンクスとはわけが違う!!!!!!」




なんて余計なことしかしないんだあのアホヒゲ!!!!!!!


ギャランドゥおじさんは走りながらスーツケースを開く!


ってかそれミミック!?


なにそれ!?


ほしい!!!!!!




「仕方ねぇ、痛い出費だが命に変えられねぇからな…」

【魔法石:速度上昇、体力一定期間自動回復】

!!!!!!!!!!キュピーン!!!!!!!!!!!



「な、なにそれ!お、俺にも!!!」


「悪いが手持ちの魔法石はこれ一個だ!!じゃあなボウズ!!!!」




おじさんは大人気なく一人ですたこら前を走っていく…!




「助けて!!オジサンが助けてくれないと俺死んじゃうかもしれないっ!」


「なるほど…!!

そりゃあ大変でございますね!!!

四十九日には顔を出しますから好きな花を教えていただけますか!!!!!!?」


「なんで助ける気0!?!?

しかも死ぬ前提っ!!!!!!!!!」








とにかく脇目も振らずに走る!

走る!!


は!し!る!!



走!し!る!!!!!!!!!!!







Fランク冒険者のまま、

くっそ強いチート級の敵に遭遇して、

挙句ぶっ殺されて塩漬けにされて、

千年経って生き返って、

変なオジサンに見捨てられながらスフィンクスに追いかけられている異世界生活…


敵はまだ生きてて、

先行きは全然見通し立たないけど、

ひとまず仲間の皆は無事らしい!





見上げた前方、紺碧の夜空にはS字に並んださそり座があった。

お付き合いいただき誠にありがとうございました。

次回作『陰キャが異世界転生したらどうせこうなる』も読んでみてね!

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