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プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第二部 異世界勇者パーティーが全滅した件 後編
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第四十五話 カナの婚礼

  




    【残念な落ち葉の魔術師 尾千羽カナ】




ここは…、ウチは…


確か…、カウンセリングの人が来て…


なんか家族のエグい話をし始めて…




「グスッ…、グズっ…、アルベルトぉ…デューロぉー…」




私の頭のうしろで綺麗な声の女の人が泣いていました。


ぼやぼやした頭で横を向くと頬のすぐ隣には深緑の瞳と、その瞳と同じ色の魔宝石が付いた杖がありました…


綺麗な金髪だなー…




「しっかりしろエメラルド!

まだ奴等が追ってくるかもしれない…、早く行くぞ!」




斜め後ろからカッコいいお姉さんの声も聞こえます。


そっちの方を向くと、げきを飛ばしていたその人は馬に乗りながら砂崎くんを前に乗せて抱えて走っています。


ウチはそこで始めて自分が抱っこされながら馬で走っているのだと気づきました。


何が一体どうなって…


しばらく馬で走り、見慣れた第三地区の端にある門に辿り着くと馬の手綱を引いて二人が後ろを振り返りました。


まるで悪夢のように、城が、異世界に来て始めて訪れた場所が、赤々と燃えています。


何があった…?




「気づいた?」




ウチの耳元で綺麗な声がウチの意識を確認している。


やっぱり天国かな?




「ごめん、意識があるならそこのお友達連れて逃げてくれる?」




長い耳にいくつもピアスを付けたその人は私の口に何かを押し込みました。


そうか、この人エル…辛っ!!!!


ナニコレっ!?気付け薬!?




「美女が欠けたら盛り上がらないだろう♡」




そこで、まるで顔面を殴られたかの様な衝撃が走り、一気に目が覚めたような思いがします。


声の主、二人がそれぞれ武器を構えて対峙していたのはあのピエロ…


今回は女装して、本当に気持ち悪い…、怖い…、なんで…なんでまた…




「騎士団も自警団も全員殺したのか手前てめぇ…」


「いや、大半は残ってるよ。

皆仲良くお友達さ♢」


「勘弁しろよ…、私らは一体なんの為に戦ってんだか…、まさか天界までお前の言いなりじゃねぇだろうな?」


「あぁ、なんで天界が城が燃えてるのに気づいてないかの理由はアレだよ♡」




【魔人パクリカ・レプリカ】が上を指差しました。


燃えて焼け落ちる寸前の王城から立ち上る白と黒の煙は魔法の残滓をキラキラと放ちながら天に登っています。


なんか、ずこい嫌な既視感デジャヴと共に凄い頭痛が襲いました…




「君のお友達には感謝するよ。凄い火だね、アレ。

おかげで魔片を燃やす手間が省けた♧」


「何のことだ?」


「時期わかるよ♤」




私は促されるまま手綱を握り、砂崎君を抱えて走り出しました。


後ろで綺麗なエルフさんとカッコいいお姉さんが戦闘を始めました。


まるで私たちが逃げる時間を稼ぐように。


でも…


立ち向かう勇気はどうしても出てこない。


ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい







   【砂の勇者 砂崎泰晴】




「あなた!やめてもう!!お願い!!!」



懐かしい声が聞こえてくる。


波の音に紛れて。


この人誰だっけ…




「うるせぇ!!!手前誰の子だよ?あぁ!?おい!!」




この声も聞き覚えがある。


この声を聞いてるとなんでか、物凄ぇイライラしてくる。


それで俺は何かを伝えなくちゃって思って…








『聴こえるか!?

おい!起きろ!!!

約束を忘れたのか!!!

頼む!勇者!!!思い出せ!

なんでこの異世界に来たのかを!!!!!!!!』








すると全然別の遠くから響く誠実そうな青年の声…


この声は聞いたこと無い気が…


なんでそんな焦って―








 意識を取り戻した時、俺はカナに抱っこされながら馬の上にいた。

そういえばこんな事前にもあったなーとか思いながら、記憶を辿る。



確か、キャメル副団長がやっぱり裏切り者で、で倒したら血を流しすぎて…

それから何があった…?

ここは…?

喋りかけようと唇を動か…

、あれ?

くそっ、身体がまだ動かない…



ここは…、王国を出てすぐのところか…

あれは…、城が燃えて…


一体何が…



カナは涙を流しながら馬を走らせ続けていた。

でもカナも俺みたいに身体が言うことを聞かないのか、近くの馬小屋を見つけると馬を繋いでそのまま俺の肩に手を回し、倒れ込む様に小屋の中でへたり込む。

疲労困憊、発熱、憔悴も激しい。



カナは腰にぶら下げていたエリクサーを俺の口元に流し込んだ。

なんでコイツが先に使わねぇんだよ…

お前も限界なんじゃ…


カナはまだ泣いていた。


なんで…


こんな…





せっかく大好きって言ってた異世界に来れたのになんて悲しそうな顔してんだよ…


なんで俺はそんな風にカナをさせてんだよ…


気がついた時には俺はエリクサーを口移しで彼女に返していた。


両手に触れている彼女の頬が柔らかい。


伝う涙も、頬も温かい。


カナの口元に垂れているエリクサーが深紅に月明かりを跳ね返している。










「砂崎君…、皆…、皆どこ行ったの…?ヒグッウェッグ」









今なら感じる事ができる彼女の魂と魔力。


弱りきって、まるで怪我をして巣から落ちた雛鳥みたいに…









「大丈夫、俺が全員連れ帰ってくっから!

カナはもう少しだけここで待っててな!

すぐ帰ってくる、そしたらまた皆で冒険に出よう!」









そうだ、異世界を皆で冒険しなきゃじゃん…


ケントやワッキーの馬鹿に付き合って、


ウーメルに勉強教えたりして、


天王寺やガネリオがその隣で猛勉強してて、


ジェシーは相変わらずなんか食ってて、


女子四人組もその隣でなんかファッションとか男の話ばっかやってる、


そして、皆でクエストに出かけて、帰って夕餉ゆうげ






「待って砂崎君、行かな…」






焦るカナにもっかいキスしとく。


役得!


もう気配は馬小屋のすぐそこにある。


元凶、【魔人パクリカ・レプリカ】。







「お邪魔だったかな?」


「全くもって。」


「そうかー、妬けちゃうなぁ♡」








馬小屋の扉を出ると奴は悠々と立っていた。

記憶が段々と戻ってくる。

さっき地下施設で誰かに助けられたことも、ぼんやりと。

空が、地面の底から湧き出る何かに押しのけられて不吉な赤紫に染まろうとしていた。




「安心しなよ。直に氷雨ひさめが降るからさ。」




氷雨ひさめ…、一体なんの…

まさか…!?




「王国事滅ぼすつもりかよ」


「ご名答!!!!!

いや、全くもって君の洞察には驚かされる!!!!」




【魔人パクリカ・レプリカ】は珍しく本当に驚いているように見えた。








「『魔片』の研究に本腰を入れ始めてすでに一世紀近くが経つ。

最初は【魔片王】との付き合いだったんだけどさ、あ、前魔王か。

これ、使用者の死後、魔力の全てを魔界へ還元し始めるんだよね♤

【魔片王】はなんかちまちま売り捌いてたけど、俺待つの嫌いでさ。

王城の地下にあった馬鹿みたいな量の『魔片』を燃やして雲に混ぜ、雨として降らせ王国民全員を中どk―」








「俺も待つのは嫌いだ。」

【砂属性魔法:惨砂鉄剣ざんさてっけん】幸い、剣や防具はそのまま身に着けたままだった。首を狙ったのに、コイツすでに空宙まで飛んで…



「しかも蒸発したものは細胞による吸引も早い!!!

直にあちこちに結晶化した中毒者だらけになる!!!!

君と見れないのが残念だ♧」

【闇の手品マジック:猛獣使い】マンティコアが地面にある影の檻を喰い破って現れる。



「二度目の手品で飽きられてちゃ二流もいいとこだな。」

【砂属性魔法:砂縛さばくの蟻地獄】すでに地面には罠魔法を敷いている。そのまま圧力に潰されろ。







もう、思い出した。

なんで忘れられたのか、自分に嫌気が差す。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()








「おっと。主人公補正、覚醒ってかい♧」

【闇の手品マジック: 黒柩ブラックボックス 】闇でてきた脱出不可能の暗黒の異空間。ハナから手品を成功させる気がないのがコイツらしい。



「この日の為に人生の全てを賭けた。お前を今、ここで討つ!

大地の女神よ、今我の声に響け。新たなる世界への一歩を踏み出す勇気を…」

【時空間・砂属性魔法:天地開闢】前の異世界ではこいつのこれにやられた。対策は抜かり無い。






闇の中を駆け出す。

抜いた剣で闇を切り裂いていく。

光を追う。






「おいおい、抜け出れると思うのかい?

弱音寂静の闇だってのにさ!!!!!!!!!!!!

それに人生の全てって…、尺度が太陽系のお前ら人間に何が出来る!!!」

【第二の闇の手品:串刺し】何本もの剣が四方から暗闇によって視界を奪われた状態で襲いかかる。が、



「命の価値を踏みにじるお前こそ、何をもって生きてるって思えんだよ!!!!!!

日が昇り沈む、月輪に見た天使よ、恩寵の時を回せ…」

【召喚魔法:金烏銀兎きんうぎんとの砂子】烏と兎が辺りを照らし始める。それぞれ硬さは折り紙付き。眷属の彼らがパクリカに向けて突っ込む。





パクリカが珍しく油断していた。

俺の眷属達が上手く奴の右腕を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれたし、それに無駄な魔力消費も多い…。





「四次元に縛られた憐れな生物風情が…

ははっ、ハッハッハッハ!!!!!!

fine,,,fine!!!!!!!I

(結構な事だ…)

only intend to use this body for the just next hundred years... nothing more, none less!!!!

(こんな身体、次の一世紀しか使うつもりはない…)」

【闇の手品最終演目:食指運動しょくしうんどう】そういえば今回この技見てなかったな…、お決まりの白亜肉細胞を増殖させたこいつの十八番…





縦横無尽に空間を埋め尽くすほど伸びるその石灰の肌の指、まぁパターンをわかっていれば避けるのは容易い。

伸びる食指の上を走り、前後左右を気にしてれば後は硬さはそこまで無い。

惨砂鉄剣ざんさてっけん】が十分通る。

けど、やっばコイツ強ぇな…

『魔片』コイツに注入されて【経験値】を犠牲にめちゃめちゃステータス上がってんのにもう殆ど魔力使い切ってんだけど…









「なんだよ、もうネタ切れかよ?」

【時空間・砂属性魔法:流星の砂時計】この技は俺の残り魔力を全部使い切る事が発動条件。





これで、決める!

赤紫の闇の空を切り裂いて、流星群がパクリカ目掛けて降り注ぐ。

近くにいたら自分も巻き添え食らうから本来は超遠距離で使うんだけど、今はそんな余裕がない…!





「相打ち覚悟…、そうか。」

【闇属性魔法:弾指の幻想即興曲】パクリカはゆっくりと何かを諦めたかのように両腕を自らもいだ。






さっきまで暴発気味に増殖していた【食指】が細かく、細かく弾丸の如く全方位に弾ける。

けど【食指】が弾け飛んだのは恐らく流星群に当たったからだけじゃない…

コイツ…

まだ何か隠し持ってるのかよ!?





「 the lil space the god spare for us because they just don't want us to go up there...

(僅かな大地、神が俺達を自分と隔てる為に寄越した六畳一間…)

too dark, too gloomy, the smell of rotting soul shaped by eroding the beauty of nature

(暗く、恐ろしい…、腐敗した夢に模倣かたどられたこの世界になんの意味がある?)




パクリカは天を見上げて言った。

悲しげなその表情は、他の異世界を含め幾度も手合わせた中で見たことのないものだった。




「幕引きとしようか、勇者よ。」






















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