表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロジェクト:異世界isekÆi  作者: 魔法烏新聞 幽玄会社
第二部 異世界勇者パーティーが全滅した件 後編
33/124

第二十九話 現実的《リアリスティック》反乱軍《アナーキスト》




   【陰の狙撃手スナイパー ケント・オルカ】




 スラムの街を抜けてたどり着いた原生林…

さっきから相手してるモンスターのレベルも段々と高くなってきて、一匹一匹は大したことないけれどなにせ数が多い…

一人できてたら確実に弾切れとアイテム切れを起こしてた…

領内でこの危なさ…

おまけにRPGなら盗賊としてバトルが発生しそうな奴らがさっきまではうようよいた…

怖いんだが…ガクブル



ウーメルは安定でガンガン進んでるけれど、ワッキーはさっきから俺と同じ気持ちらしく挙動不審(?)にしている。

てか多分ワッキー一人だとステータス的、職業的にここはかなりきついはず…

それにしても遠いな…

もう半日くらい歩き続けてるけど…




「止まれ」




先頭を歩くワッキーがそう言ったのはその時だった。




「ここから先に魔法のトラップが仕掛けられてる…、しかも結構な数だ…どうする?」




緊張か、テンションが上がっているのか、ワッキーはいつもと少し違ってカッコつけて凄みのある低い声を出している…。




「解除は無理そう?なるべく騒ぎを起こして敵意を持たれたくないからなんなら遠回りでも…」


「の方がいいだろう。スゴッ

解除するにしてもこの数、いくら俺と言えども時間がかかる。スゴッ」




特にワッキーのカッコつけには突っ込まず、俺とウーメルは顔を見合わせて迂回することにした。

罠が張り巡らされてるということは、【 現実的リアリスティック反乱軍アナーキスト 】達のアジトはすぐそこだろうし。

そうして迂回を決めて少し歩いたところだった。




「見ない顔だな。誰だてめぇ等?」




幼い少女の声が後ろから突然した。

手練れなことはすぐに分かった。




「敵じゃない!話が合ってきたんだ!」




ウーメルが真摯な声で言った。




「どうやって証明すんだそれ」




少女は警戒を緩める気配を一切見せない。

鳶色とびいろのマントにフードですっぽり頭までかぶって、すでに左手は腰に差したおそらく剣に手をかけている。

あれ、このマント姿どっかで見たことあるような…




「おれ一回ラビュリントス遺跡でビンセントって人とマーカスって人と会ってるんだけどっ!!!!二人ともめっちゃ強かったから助っ人を頼みたいことがあってさ!!!」




ウーメルの援護。

キャメル副団長に聞いて名前を覚えておいてよかった…




「…、お前ら【魔人パクリカ・レプリカ】の手先じゃねぇだろうな…?」




と思ったらあれ?

余計怒らせてる?

しかも【魔人パクリカ・レプリカ】の名前…




「「ちちちち違うちがうちがう違う!!」」




ウーメルと俺の必死の否定の声が被る。




「そうか。じゃ、金目のモン置いて帰りな。命だけは勘弁してやらあ。」




うわー、そう来たかよ。

ワッキーも俺もRPGのテンプレの流れに辟易した。

しかも絶対コイツ強いじゃん…

三人がかりで逃げ切れる…か?

少女が隙を見せる気配はないし…

とどうするか思案していた瞬間少女がダガーナイフを腰の後ろに下げた鞘から抜き出した。

ダガーナイフの魔力は先程から寸分の乱れもなく、綺麗にその刃全体に通っている。

しかしその荒ぶる少女を何者かが静止した。




「マリアンナ、そこまで。彼らはこの前の街でパクリカに遭遇した奴らだよ。実力も申し分ないし、多分敵じゃない。」




先程からこちらを伺っている魔力と、マリアンナと呼ばれた少女の魔力とはもう一つ。

几帳面で繊細、それでいて研ぎ澄まされた魔力の持ち主はどこからともなく現れそう言った。

見覚えがある、確かこっちが【多幸薬の被験者 マーカス】

白魔導服に全身を包んで、手にはルービックキューブを持っている…

あれ?あれってこの国にもあんの?


 


「多分ってなんだよ、多分って。」




少女がそう文句を垂れる。

その後ろで「たった今スーパーの特売品の買い出しから帰ってきました」みたいに両手の花籠に野菜やらを詰め込んでいる白魔導装束の男。

年齢は泰晴と同じくらい?

ショートの七色の髪は彼をより一層幼く見せている。




「あっ、どうぞ入って。」




えっ?

俺たちは知らない間にさっきまでいたところとは別のところにいた。

具体的にはモンゴルの遊牧民族が使いそうな白の大きなテントの前。

俺達三人と、自分達二人の五人を一瞬でテレポートさせたってこと?

この異世界では転移魔法テレポートは結構な大技なのに…

両手を荷物で塞いで、器用に足で扉を開けながら中に案内するその白魔導服のマーカス。




「マリアンナちゃんはこちらの二人にお茶でも淹れてあげて、あっ、コーヒー派かな二人共?」


「お、お邪魔しまーす。俺はお茶で…」




困惑しながらもウーメルがテントの中に入る。

感じからしてさっきのフードの少女がマリアンナか。




「ビンセントもそろそろ出てきたら?どうせ三人と直接話したいんでしょ?」




マーカスが何処ともなく宙に喋りかける。




「そうだよテメェ!さっきから人の一挙手一投足見やがって!変態かよっ!」




マーカスを手伝って、小さなレトロ感満載の冷蔵庫に買ってきた果物、野菜をしまいながら彼と同じ様に何処へともなく怒るマリアンナ。

フードを下ろしてみるとその顔は目元がきついがめちゃめちゃ可愛い。

モデルとかやってそうな感じの印象で、テレビとかに毒舌キャラで出てそうな感じだ。




「いや、マリアンナも随分気配を隠すのと茶を淹れるのが上手くなったなーと思ってたんだよ。マーカスとの特訓のおかげか?」


「褒めてもなんもでねぇぞ、後自分の分の茶は自分で入れろよ」


「……、冷てぇな…。」



確かにテント内には香ばしい茶葉の匂いと、芳香剤の匂いが漂っていた。

と先程からこちらを監視していた魔力の持ち主、ビンセントと呼ばれた男が二階ロフトから鉄製の階段をカンカンと小気味よく鳴らしながら降りてきて姿を現した。

見覚えがある。卒業試験でラビュリントス遺跡にいたもう一人だ。

せっかくだし【ステータス表示】!!!!!!!



【薬杖の魔法使い ビンセント】

【職業】 黒魔導師

【Level】 42

【攻撃力】 498

【守備力】 557

【魔力】 1001

【体力】 243

【スキル】 副作用Level3・毒付与Level3・回復速度上昇Level3・



強…。



白いテントの中は結構広い。

時空間魔法でも使っているのか、

はたまた地面を掘っているのか、一軒家分くらいのサイズがある。

色んな魔導具がところ狭しと並べられている。



【自転車の盾と剣】(自転車の前輪を支える部分パーツで作られた剣、車輪の盾。それぞれ速度上昇が付いており、特定属性との相性もいい。)

【パソコン型ロボット】(マーカスがチオルデット特別区の技術を用いて作った。普段はハードの形でスリープモードになっていることが多い。)

【ゴミ箱型ロボット】(【 現実的リアリスティック反乱軍アナーキスト 】のメンバーがあまりにもゴミを片さないのでこれも綺麗好きなマーカスが作った。ゴミ箱に四つ足が付いており、自動でゴミを片付けるが時々メンバーが使う予定だった部品も回収しちゃう。)

【石の本】(読書好きの筋トレ不足を解消するため、筋肉バカのメンバーが素手で石を紙の薄さまで削る事で出来上がった。が誰も使ってない。)

光電コウデン斬波ザンパ工刀クトウ】(光と雷属性、片方どちらかの魔力を流し込むだけで両属性が攻撃に付与されるアイテム。斬れ味が良すぎるのと、燃費が悪いのが欠点。)

【蛍雪光弾】(この異世界に生息する寒い地域にしか生息しない樽蛍タルホタルというモンスターから作られたアイテム。辺り一面に粉を撒き散らし、触れるだけで発光し混乱状態を引き起こす目眩まし用アイテム。ただし使用者はゴーグル装備がマスト。)

【 魔物モンスターダスト 】(この区域で進化した特定の魔植物から抽出したエキスを粉末状にしたもの。水に溶かして飲む。強壮、滋養効果があり一時的にスタミナが減らず、攻撃力と魔力がアップする。)



ゴミばっかやん。

それでもテントの中は丁寧に飾り付けがされている。

レコードの音楽が流れ始める。

Lo-Fiジャズっぽい音楽だな。



マーカスの白とは対照的に全身を黒の魔導装束で固めたビンセントと呼ばれる男は自分で茶を入れた後、俺達の前にあるもう一つのL字型のカウチにどかっと腰を下ろした。




「で、要件は【魔人パクリカ・レプリカ】を倒すのを手伝って欲しい、でいいのか?」




行きなし本題だな。

今日はいいお天気ですねーとかなしか。




「いや、こっちとしてはそれは優先順位的に二番目に来る。奴に連れ去られた由貴と他に誘拐された仲間を救い出したい、が一番だ。

その救出に必要であれば例え死んでも倒すが、救出が何よりも優先だ。」




力強く言ったウーメル。




「そっちも同じ意見だな。」




ビンセントに問われ返事こそ無かったが、ワッキーも俺も同じ気持ちだった。




「マーカス、他の奴らに明日の潜入作戦に陽動二人追加って連絡してきてくれ。」


「心強いね。」




と、さっきまでティーカップで呑気に茶をすすっていた白魔導服マーカスがまた突如消えた。




「マリアンナ、本番前に予行演習だ。お前ら、ついてこい。」


「うっせえな、命令すんなよ!」




小柄な体で威勢の強いマリアンナか先頭を歩き、黒魔導装束のビンセントに連れられてアジトの裏手にある1㌶程の金網フェンスで囲まれた【演習場】に向かった。




「てか、やっぱりウチの案で正解じゃねえかよ!」


「わかったよ!悪かった!!わるかった!」




マリアンナとビンセントの会話に置いてかれてる俺達三人を見てビンセントが事情を説明してくれた。




「俺達は皆【魔人パクリカ・レプリカ】って奴を倒す為にこの数年間ずっと行動を共にしてきた。

だが、奴は強い。

実際に会ったお前らなら分かってるだろうが、仮に俺等【 現実的リアリスティック反乱軍アナーキスト 】全員と()()()()()()()()()()()()()全員束になったって、

奴単体に敵うかどうかは五分ってところだ。」




ウーメルが痛いところを突かれたような顔をしている。

俺は実際に会ったことはないけれど、あの泰晴がやられたんだ。

やっぱりそれくらい強いんだろうとは思う。




「おまけにあいつは部下も協力者も内通者も国中の至る所にうじゃうじゃさせてやがる。

その中でも厄介なのが【 マートファミリー 】と呼ばれるこの国で最大のギャング組織。

奴らは【魔片】と呼ばれるアイテムをこの異世界で売りまくって独自のコネ、地位を築き上げた。

【魔片王】最大の側近って訳だ。」




なるほど。

王様に倒せと言われた【魔片王】の側近の【魔人パクリカ・レプリカ】の手下が【 マートファミリー 】か。

【魔片】に関してはなんとなく何かわかる。




「その【魔片】を製造しているアジトから【 マートファミリー 】はいつも定期的に【魔片】を受け取っている。

三日後、普段通りなら【 マートファミリー 】の運び屋役の男が一人でアジトへ向かい【魔片】を受け取るだろう。」

しかし!!!

数日前に送られてきた偵察役の仲間の連絡によると、

その【 マートファミリー 】が三日後まぁまぁな規模で【魔人パクリカ・レプリカ】のアジトに向かう手はずを整えているらしい。」




まぁまぁな規模…

言おうとしていることに俺達三人共が気付いていた。




「新米の転生冒険者四人の姿もあったと言う話だ。

元々俺たちはその【運び屋】の方に用があったが、まぁ渡りに船だ。

どのみち奴ら【 マートファミリー 】の奴らはいけすかねぇ。

奇襲をかける。」




つまり…




「かちこみだぁ!!!!!オルァ」




なんともガラの悪いセリフをこの小さなマリアンナという聖母の様な名前の少女が叫んでいると思うと悲しくなる。




「作戦もすでに練って、今監視部隊が最終チェックの下見をやってる。

さて、そこでお前らに勝手に暴れられて作戦成功率が下がるよりは俺達の作戦に参加してもらった方が賢いと俺は考える。

然るべき時に暴れてもらってもいいし、なにより…

仲間のピンチで必死な気持ちはよくわかる。」




早口に説明を終えたビンセントは【演習場】手前で俺達三人とじっと目を合わせる。




「正直なんの手がかりも無かった俺達からすれば千載一遇の仲間を救うチャンスかもしれない。作戦には是非にも参加させてほしい。」




ウーメルの言葉に俺たち二人もまた頷く。




「だろうな。と、そこで、お前らの実力…、は何となく魔力総量から分かるが、具体的に使う魔法等を把握しておきたい。

マリアンナ、準備できてるか?」


「とっくに出来てるよ!ダラダラ喋りやがって!寝ちまうかと思ったわ!」


「よし、じゃあ、ま、そういう訳で俺とマリアンナと2体3の実戦形式の手合わせといこうか。本気で来てくれて全然いいからな。」


「なるほど、じゃあよろし―」




く、とウーメルが言い終える前に、彼の目の前には少女マリアンナのダガーナイフが2本真っ直ぐ、とんでもない速さで飛んできていた。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ